ホームの千葉ジェッツが名古屋ダイヤモンドドルフィンズを92-76で退けたB1リーグ第5節。この試合で1つの見どころとなったのが、富樫勇樹と齋藤拓実のマッチアップだ。
「齋藤選手がアルバルク(東京)にいた時に少しマッチアップはしました。だけど当時は出場時間が多くなかったですし、昨シーズンは試合する機会がなかったので、こうやって対戦するのは初めてでした」(富樫)
昨シーズン、千葉と齋藤が所属していた滋賀レイクスターズは対戦がなかったため、両者がコートで対峙したのは2シーズンぶり。互いに先発ポイントガードとしてマッチアップしたのは今回が初であった。
A東京から滋賀に期限付き移籍をした昨季の齋藤は、新天地でプレータイムを得ると大いに輝きを放ったのは周知のこと。開幕からレギュラーシーズン全41試合に先発出場すると、多彩なシュートとパスを武器に平均得点は3.6点から13.0点、平均アシストも2.0アシストから5.4アシストまで伸ばした。
滋賀のみならず、齋藤は他チームのファンをも魅了した。だが、この飛躍ぶりも富樫に言わせれば想定内だったようだ。「彼が大学生の頃から、すごくいい選手、その年代ではトップ選手と馬場選手(雄大/メルボルン・ユナイテッド)から聞いていたので、こういう活躍に不思議はなかったです」。
そんな齋藤と日本トップクラスのポイントガード富樫による今季初対決は、齋藤が名古屋Dに移籍したことにより、開幕から間もない10月24日に実現した。
名古屋Dの新司令塔は、この試合の先制点を挙げるなど前半で8得点をマークして先手を取った。しかし、チームはリードを許す苦しい展開。すると今度は千葉の背番号2が魅せる。46−33でハーフタイムを迎えようとしていた第2クォーター終了間際、ここまで無得点だった富樫だったが、残り3秒にジャスティン・バーレルのパスをスティールし、すぐさまトップの3ポイントラインまでドリブル。ブザーが鳴る直前にシュートを放つと、ボールは綺麗にリングに吸い込まれた。
自らのビッグショットで49−33とした富樫は、その勢いで後半開始早々にも3ポイントをマーク。一方の齋藤はアシストでチームを動かし、第4クォーターには負けじとバスケットカウントで先制点を奪取。最後の10分間は富樫、齋藤ともに8得点を記録したが、試合終了残り3分13秒に齋藤との1対1から富樫が決めた3ポイントは、点差を17点に広げるこの試合の決定打となった。
富樫はこの試合、約24分間の出場で3ポイント4本を含む14得点3アシスト。齋藤は約31分のプレータイムで16得点4アシストをマークした。試合後、コートにいる大半の時間でマッチアップした互いの印象を聞くと、「実際にマッチアップしていても、他の選手とはまた違うリズム感を持っていてすごくいい選手だなと思いました」と富樫。
試合に敗れた齋藤は、「前半のところでテンポの速いバスケットをするべきだった」と悔やみ、「スピードやドリブルのスキル、バスケットセンスがものすごくあるなと。シャノン・ショーター選手が入ったことによって(富樫の)攻撃回数が減っているのかなという印象ですけど、あのスピードからプルアップシュートが打てることが一番の強みだと思います。インサイドにも上手くパスを通されてしまいました」と振り返った。
新たなチームメートとの連携にも慣れ、直近3試合では平均20得点と好調を維持する齋藤。それに対し「この数試合、いいパフォーマンスができていない」という中でも、ここ一番で力を発揮した富樫の勝負強さは流石の一言に尽きる。齋藤もそんな富樫を目の当たりにし、「だいぶ余裕を持ってプレーしているなとすごく感じました」と打ち明けた。
今回の2人の司令塔対決は、千葉・富樫に軍配が上がったと言っていいだろう。しかしまだ第1ラウンドが終わったに過ぎず、第2ラウンドはすぐにやってくる。今後、何度も訪れるであろうこの対決を、これからも楽しみにしている。
文=小沼克年