アジア枠で信州に入団したヤン ジェミンに直撃…「マイケルコーチの信頼を勝ち取ることが当面の目標です」

韓国の年代別の代表であり将来を嘱望されるヤン ジェミン [写真]=B.LEAGUE

勝久マイケルHCはポテンシャルだけでなく人間性も高評価

 Bリーグが今シーズンより創設した「アジア特別枠」で契約し、日本でプロ選手としてのキャリアをスタートさせた信州ブレイブウォリアーズヤンジェミン。韓国の世代別代表にも選ばれ、将来を嘱望されている逸材は長野の地で日々奮闘している。

「契約前からビデオミーティングなどで話をしていても『本当にいい子で、好青年』という印象しかありませんでした。実はチームに合流した時、彼は英語と準備してきた日本語で挨拶をしました。そうしたらチーム全員が笑顔になって……何というか彼は周囲にいる全ての人を笑顔にできるし、ハッピーな気持ちにさせてくれますし、特別かつ素晴らしい人間性を持っています。コミュニケーション能力は高いし、凄くチームにも溶け込んでいますね」
 
 信州を指揮する勝久マイケルヘッドコーチはヤンの印象をこのように話してくれた。一方、第8節を終えた時点で6試合に出場して1試合の平均出場時間は6分24秒、まだ2得点にとどまっている。これも踏まえて勝久HCは合流が遅れて「非常に可哀想」という前提の上で、プレー面に関して期待にあふれた言葉を続けた。

「彼は21歳の若いルーキーだったのにもかかわらず、十分にトレーニングキャンプを行えず、シーズン途中での合流でコンタクト練習もなかなかできない環境にいました。ですから攻守両面のチームルールやシステムを覚えて、自然とプレーできるようになるには時間がどうしてもかかります。それでも彼は今、毎日熱心に全てを覚えようと頑張っていて、評価は非常に高いです。オールラウンダーで闘争心がありエナジー持ってプレーしてくれるタイプ。まずはディフェンス面で成長をしてチーム内の競争の中でプレータイムを勝ち取ってほしい」

勝久マイケルHCは「チーム内の競争の中でプレータイムを勝ち取ってほしい」とエールを送った [写真]=鳴神富一

ヤンジェミンは「チームのために尽くして良いプレーを見せていきたい」

 ヘッドコーチが話した内容をヤンジェミン本人も認識しており、現状に関して自身を冷静に分析する。

「Bリーグでプレーできて非常にうれしいです。ここに来た理由は新たな挑戦や競争しながら、色々な選手やコーチから様々なことを学んで、より経験をより積みたかったから。リーグはもちろん、日本人選手のレベルが高いですね。まだ出場機会が少ないですが、プレーしてみて展開の早さやスクリーンプレーを多用してオフェンスを組み立てる部分に少してこずっています。まずはチームにアジャストすることやプレーできることを証明する部分にフォーカスしていきたいですね」

 練習だけでなく、その後も自宅でチームルールやシステムを完璧に早く覚えようとしているが、長野での生活も非常に楽しんでいる様子だ。

「多くの人は長野を田舎だと言うけど、自分はそう思っていなくて……大好きな街だし、生活は充実しています。やはり長野と言えば蕎麦ですけど、大好きです。先日、一人で蕎麦屋さんに行きました。英語のメニューや写真も無くて…思わず店員さんに日本語で『美味しいの、下さい!』と言って(笑)。その時に出てきたのが、天ぷらとざるそばのセットでした。もちろん、美味しかったですよ」

 また合流時に日本語で挨拶した理由に関しては、自分自身の性格を交えて答えてくれた。

「その時は日本語で『頑張ります』という内容で自己紹介しました。自分は何事にも準備をすべきだと考えていて、チームメートにも良い印象を持ってもらいたいのもあって、しっかり準備してきました」

 ヤンは準備を怠らず、熱心に何事にも取り組み、ハードにプレーする姿勢に加え、素晴らしい人間性を兼ね備えている。選手として素晴らしいベースを持っている彼が目指す先には何があるのか。

「マイケルコーチの信頼を勝ち取ることが当面の目標です。『ルーキーだから学んで成長すれば良い』と言われたりすることも多いけど、一人の選手として評価されたい。そして自分が精一杯、チームのために尽くして良いプレーを見せていきたいですね」

 将来性豊かな21歳がBリーグの舞台で主役になる日はそう遠くはないだろう。ちょうどチーム創設10年目を迎えた信州の主力としてリーグを席巻することも不可能ではない。ストーリーは既に整っている。

「まずはチームにアジャストすることやプレーできることを証明する部分にフォーカスしたい」とヤン [写真]=B.LEAGUE


文=鳴神富一
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