B1レギュラーシーズン再開で実現した1月23日の東地区首位攻防戦。千葉ジェッツはアウェーの地である宇都宮に乗り込み、宇都宮ブレックスと対戦した。試合前まで互いの勝率は同じで、この試合で勝利すれば単独首位に立つ状況であったが、64−84と20点差を付けられて敗北を喫する形となった。
「40分間、宇都宮さんのゲームでした。第3クォーターの入り方でディフェンスがルーズになった部分を突かれてやられました。相手の方がチームとして戦う姿勢が上でしたし、完敗でした」
試合を振り返って大野篤史ヘッドコーチが述べた言葉である。
「完敗」
彼らが強みとしているリバウンドやセカンドチャンスポイント、ファストブレイクポイント含め、フリースロー成功率以外は相手の宇都宮がチームスタッツで上回る結果に終わる。ターニングポイントは第3クォーターの序盤からの展開、ディフェンスで後手に回ってしまい、連続得点を許して一気に流れを掴まれた。
実はこの展開の予兆は第2クォーターの終盤にあったのではないか。残り時間3分38秒、宇都宮がタイムアウトを請求した後、千葉は7連続得点を許している。
流れの悪さから相手に主導権を明け渡す。この傾向は1月13日の天皇杯3次ラウンドの川崎ブレイブサンダース戦でも見られた。千葉は第4クォーターで川崎に一気に流れを持っていかれ、62−72で敗退した。
この部分に関して大野HCは「今、本当にここ数試合で同じような形でチームとして上手くいかなくなってしまい、やるべきことを40分間継続できない状況が続いています。一度流れを失うと、どんどんインテンシティが下がってしまう。修正しないといけないし、これから戦ううえでこの部分が一番重要なポイントになります」と、もどかしさを隠しきれない様子でコメントしている。
そのような厳しい結果で終わった試合の中で存在感を見せたのんが西村文男だ。チーム在籍7シーズン目のベテラン司令塔が孤軍奮闘。13分間の出場ながら前半での3ポイントシュート2本を沈めるなど10得点に加えて、4アシストの結果を残し、チームを攻守で牽引した。
「西村選手はしっかりボールを散らしてくれたお陰で、流れが悪い中でも前半カムバックできました。後半はタイムアウトを2回取っても流れが変わらず、早めに投入しました。少しバテてしまった感じもありましたが、彼のパフォーマンスは良かったし、納得です」と大野HCは、西村に対してポジティブな評価を口にした。
それでも西村本人は「相手がタフなバスケットを展開したと思います。個人的に我慢の時間帯で点差を縮められなかったのが反省点です。個々の戦力は充実しているけど、チームとして良くなろうとしている中で課題が多くて…その課題が今日の試合に出てしまいました」と終始、反省の弁に徹した。
実は彼がオンラインでのインタビューに現れたのは、試合後からかなり時間が経過したタイミングだった。その理由はチームでのミーティングの後に、選手間で長いミーティングをしていたから。「明日も含めて、タフに戦う部分をどう表現していくかということを中心に話していました。話し合った事をしっかりと明日コートで見せられればと思っています」。
選手間で話し合ったタフに戦うことをコート上で証明する。その先には彼らが今まで手に届かなかった、どうしても掴み取りたいBリーグチャンピオンの称号がある。
「個人としてもチームとしても最終的なゴールはBリーグチャンピオンですし、それをイメージしながらプレーしています。そのためにはチャンピオンシップに進出するのが大前提ですけど、まだまだこれからシーズンが続いていきます。全く頭にないわけではないですけど、まずは1試合1試合を大切にプレーする事を考えながら試合に臨んでいる感覚です」と、西村は最後に答えてくれた。
大一番となった後半戦の初戦で体感した課題を、いかに克服できるか。選手たちで話し合い、認識した事を表現できるのは選手たち自身でしかない。ライバルへのリベンジを果たすために、彼らは全てを懸けて戦いに挑む。
文=鳴神富一