チーム内で日に日に存在感が増す河村勇輝…「チームファーストで取り組む意識」が成長を後押し

千葉の富樫(右)と横浜の河村(左)が1年ぶりにマッチアップ[写真]=B.LEAGUE

1年ぶりの『ユウキ対決』は富樫に軍配

1年ぶり『2人のユウキ対決』は富樫に軍配が上がった[写真]=B.LEAGUE

 『2人のユウキ対決』――。1月27日の千葉ジェッツ横浜ビー・コルセアーズの一戦で、河村勇輝富樫勇樹の対戦が再び実現した。振り返れば、昨年1月25日に当時福岡第一高校に在籍していた河村は、特別指定選手として三遠ネオフェニックスに加入し、千葉戦でデビュー。富樫とのマッチアップは大きな話題を呼んだ。

 そして、1年ぶりの試合は75-64で千葉に軍配が上がるも、横浜は最後まで食らいつく粘り強さを見せた。ただ、河村にとっては良いことも悪かったことも出た試合になった。ピック&ロールから外国籍選手を生かすパスもあれば、逆サイドにいる味方を狙ったパスを2度カットされ、守備で千葉のガード陣にプレッシャーをかけ、2クォーターには富樫からボールを奪ったが、速攻は阻まれた。試合について次のように振り返った。

「オフェンスでターンオーバーもありましたし、シュート精度(3ポイントシュートは1/6本)に関しても良くなかったと思いますが、明確に課題が出ているわけです。そこを直していけば良いプレイヤーになっていけると信じて、また練習に取り組むだけだと思います」

 また、この試合では最後に追いつくことはできなかったが、河村は試合を追うごとに4クォーターの残り2分台までコートに立つ姿が増えてきた。最終盤は生原秀将が司令塔を務めるが、大事な場面に河村も絡みつつある。それだけに今の自分に厳しかった。

「実質ここで3連敗しています。試合に出させてもらっている以上、チームを勝たせないといけないというポイントガードとしての役割があります。先輩を差し置いて、4クォーターの大事な場面で自分が出ていることに関しては、もっと責任を持ち、チームを引っ張るだけの実力をつけないといけないと思います」

 ただ、この状況で自身の課題はありながらも、東海大学で培った「バスケットIQ」はBリーグの舞台でも生かすことができているようだ。富樫との対決が注目されることについて「すごく光栄なことです。実力が全然違うにも関わらず取り上げていただくことは、とてもありがたいです」とコメントして、こう続けた。

「昨年と違って、スタッツに残っていないのですが、たくさんチームとコミュニケーションを取りながら、チームとして自分のやるべき役割というものを全うできていると感じています」

 また、富樫も河村について「去年と今年でチームでの役割は見ていて、すごく違うのだろうと感じています。それでもディフェンスやオフェンスでピック&ロールを使ったパスなど、彼の良さが今日はとても見えたと思います」と、その印象を明かした。

「何が強みで、何が課題なのかすごく感じられた試合だった」

チームファーストで取り組む河村の意識が成長を後押しさせる[写真]=B.LEAGUE

 河村の特別指定選手としての活動期間を踏まえると、今シーズンの対決はこれで終了となる。バスケはひとりでするスポーツではないが、どうしても個人に目は向いてしまう。しかし会見の終わりに、河村はビーコルの一員として戦っていることを改めて強調した。チームバスの出発時間が迫って中、会見を仕切る千葉の広報担当者が「時間の都合上、これで終了とさせていただきます」と発した後、「ひとつだけいいですか」とわざわざ自分から申し出たのだ。

「3連敗していて勝てていない状況ではありますが、他のチームと違い、今シーズンから新しいヘッドコーチが就任し、新しい選手ばかりの中でチームをつくっています。この3連敗は自分たちにとってはプラスになっていて収穫が多いと感じていますし、今回の千葉戦も40分間とおして自分たちの何が強みなのか、何が課題なのかをすごく感じられて、次につながる試合になったと思います。自分が(今シーズン)ビーコルにいる期間は限られていますし、将来ビーコルにいるかどうか(今は)分からないですけど、近い将来、ビーコルは必ず強豪チームになると確信していますし、これから上昇していくチームだと確信しています」

 年齢や立場に関係なく、自分が携わるチームのことを考え抜き、その思いを言葉にできる。体つきを含めてコートを駆け巡るプレーにフォーカスが当たるが、こういったチームファーストで取り組み続ける意識が彼の成長を後押ししていると感じさせられた。

 文=大橋裕之

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