49勝11敗で東地区優勝を果たした宇都宮ブレックス。リーグナンバーワンの81.7パーセントという圧倒的な勝率を誇ったうえ、連敗は2回のみと盤石な戦いぶりでシーズンを走り抜けたが、チームを率いる安齋竜三ヘッドコーチは2度目のチャンピオンシップ制覇へ向けてどのような準備を進めているのか。バスケットボールコメンテーターを務める井口基史氏が話を聞いた。
インタビュー=井口基史
構成=バスケットボールキング編集部
取材日=2021年5月11日
「応援してくれる方々に喜んでもらうのが、僕たちの仕事で一番重要」
――昨シーズンの順位決定方法で悔しい思いがあった中で、今年はレギュラーシーズンを完遂し、ホームでの勝率は83パーセントを記録しました。ファンの皆さんに喜ばれる結果を残せたと思いますが、いかがでしょうか?
安齋 応援してくれるスポンサーさんやファンの皆さんに喜んでもらうというのが、僕たちの仕事で一番重要なところなので、それができたのは本当に良かったです。もちろんその道のりにはいろいろなことがあって、ずっといい状態で来たわけではなく、悪いながらも勝ち切れたゲームもたくさんありました。反省しながら成長していったという部分では、選手の頑張りもあったと思います。また、佐々(宜央アシスタントコーチ)と町田(洋介アシスタントコーチ)を始めとしたスタッフのサポートというのもすごく大きかったと思います。
――昨シーズンのこともあり、選手たちには『絶対に毎週1位にいよう』という声掛けをしていたのではと勝手に想像しています。
安齋 今シーズンは新型コロナウイルスの影響で、どういう状況になるか分からない中で始まりました。なので、昨シーズンの悔しさを晴らすためにも『まずは地区優勝しなきゃいけない』と言いましたし、どこで終わるか分からない状況ということもあり、『常に1位に近いところにいないといけない』というのはシーズン開始前に話しましたが、開幕後は特に言っていません。常に、次の試合でどう勝つかということにフォーカスしていました。
――宇都宮は順位が決まった後CSの対戦相手を待っている状況でしたが、レギュラーシーズンを終えてからの過ごし方を聞かせてください。
安齋 適度に休みを挟みながら、レギュラーシーズンとルーティンをあまり変えないような感じでしたね。ちょっと休んで、練習して、ちょっと休んでという形にして。ただ昨日まで対戦相手が決まらなかったので、先週の練習は今シーズン足りなかった部分やどこと対戦してもある程度使うであろうことを復習していました。
――なるほど。では、対戦相手というよりも自分たちのことにフォーカスしていたということですね。
安齋 佐々と町田がスカウティングの映像を作ってくれたので、(富山かSR渋谷か)どちらになってもいいように準備はしてくれていました。対戦相手に合わせるというのは今日から始まったのですが、今日の練習はスカウティングを踏まえて自分たちのビルドアップだったり、前日の練習の映像を見ながら振り返ったりしました。
――現在のチーム・選手たちのコンディションを教えてください。
安齋 今日までは特に何の問題もなく来ています。休めているし、長いシーズンだったので蓄積はあるにしろタイムシェアはできていたので、体力面は心配ないと思っています。
「CSをホームでできるのは応援してくれた人への恩返しになる」
――対戦相手はサンロッカーズ渋谷に決まりました。得点はリーグで4位、スティールは1位ということで攻撃的なディフェンスを敷いてくるチームですが、印象を教えてください。
安齋 ディフェンスの激しさが年々増してきているし、ビッグマンもハードにディフェンスをしてきます。SR渋谷と対戦した時はウチのターンオーバーが目立つので、しっかり気をつけないといけません。また、今年はアウトサイドの選手の3ポイントシュートが多いですし、ディフェンスの強度を生かして高いところから点数を取ってくるので、気を引き締めていきたいですね。
――コロナ禍でのCSにおいて、宇都宮が勝つのは他のチームとちょっと意味が違うのかなと思っています。ブレックスネーションの方々もそうですし、CSへ出場できなかったクラブやB2の地方クラブは宇都宮に注目しているはずです。『日本を代表する県民球団』として戦うことにどのような思いを持っていますか?
安齋 チームが出来てからいろいろな人がサポートしてくれたり、チームだけでなくフロントがいろいろやったことが、今のチームの大きさになっていると思います。コロナ禍でどのチームも大変だと思いますが、ホームゲームを多くやれたほうが会社の収益につながりますし、そのためにも東地区で優勝してなるべく多くホームでCSをやりたい。それが会社のためになるし、自分たちのためにもなるということをウチのチームは分かっています。
そういう意味でも、クォーターファイナルで負けるわけにはいきません。セミファイナルまでホームでできるのは応援してくれた人への恩返しになりますし、大企業がついていないチームにとって一つの道しるべになるのではないでしょうか。もちろん、これまでもそういう考えでフロントとチームは頑張ってきましたが、結果が伴うとよりそうなっていけるチャンスでもあるので、『周りの人に支えられてバスケットボールができている』というのは常に持っていなければいけません。優勝しないと伝えられないというわけではありませんが、もちろん優勝することが目標です。前回優勝した時は、ブレックスに関わっていない県民の方が喜んでくれたりしたので、今回もそうなればいいと思っています。
――では、僕も2回目となる優勝パレードの心の準備をして待っておけばいいということですかね。
安齋 ハハハ(笑)。僕も心の準備はしておきたいなと思います。
――今回、CSへ出場するチームはすべて日本人HCが率いており、安齋HCに近い年代の方も顔をそろえています。若い年代の方が増えていることについて感じることはありますか?
安齋 Bリーグができてから海外の素晴らしいHCがたくさん増えて、そこからすごく学んでいますし、僕を含め若いHCが増えて「あそこには負けたくないな」という競争心が沸いています。Bリーグ制覇を成し遂げているのはトム(トーマス・ウィスマン)とルカ(パヴィチェヴィッチ/アルバルク東京)だけなので、今年は誰かが初めて優勝を経験する年になる。そういう意味でも日本人どうしが切磋琢磨できていますし、日本人コーチの質も上がってきているのではないでしょうか。