震災から10年…Bリーグ応援キャプテン 廣瀬俊朗と防災・減災を考える

 2021年2月14日、仙台に廣瀬俊朗の姿はあった。

 東日本大震災発生から10年の節目を目前に控え、Bリーグは改めて震災と向き合う活動を展開。廣瀬もBリーグ応援キャプテンとしての任務を携え、前夜から仙台に滞在していた。

 その夜、福島県沖で発生した地震により宮城県と福島県で震度6強を記録。

 この影響で翌14日の仙台89ERS福島ファイヤーボンズの各ホームゲームは中止を余儀なくされる。


 

 
「昨日はホテルの11階に泊まっていたので、今までの人生でもしかしたら一番揺れたかもしれないぐらいの揺れで、すごく怖くてどうしようかなというぐらいの感じ。しばらく眠れなかった」(廣瀬)

 仙台89ERSファンのサチさん・ハルキくん親子も大きな揺れに驚いた。

「自宅で仙台が群馬の連勝を止めた祝杯をあげて寝るところだった」(サチさん)

「揺れて物がいっぱい落ちてきて、いろいろと大変だった」(ハルキくん)

 また、14日のイベントに参加した地元の小学生選手たちは、記憶にはほとんど残っていないという10年前の東日本大震災を念頭に、こう語った。

「津波が来るのかすごく心配でまず家から出て様子を確認して、津波の心配がないとテレビで言っていたので、すごく安心した」(おきのミニバスケットボールスポーツ少年団 大友雄汰くん)

「寝ていたが、揺れの音がして物が倒れてきてびっくりした。後になって、東日本大震災はこれ以上の揺れだったと思うと、とても怖く感じた。当時(2歳)の記憶はなかったので」(おきのミニバスケットボールスポーツ少年団 小川颯翔くん)

 

「防災において大事なこと」と「バスケの楽しさ」を融合

 
 地震の影響で対戦相手の群馬クレインサンダーズの宿泊施設に被害が出たことを受け試合自体は中止となってしまったが、仙台は入場無料として地元の小学生たちによるエキシビションゲームなどのイベントを実施。

 そのうちのひとつ、『B.Hope HANDS UP! PROJECT supported by 日本郵便』の活動として試合前に用意されていたイベント『防災バスケ -Defense Action-』も行われた。

「防災において大事なこと」と「バスケの楽しさ」を融合させることで、いざというときに「備える人・動ける人・助ける人」になれる仲間を増やすことが目的だ。

 例えば「乳幼児」というキーワードに対し、関連する備蓄品として「粉ミルク」「オムツ」「おしりふき」などのカードを、ボールを扱いながら集めるというもの。

 また、「津波」とコールされた場合、「高台」のポールをまわってからシュートを打つなど、キーワードに応じて考えながらアクションをとる、といった具合だ。

 とっさのときには大人でもすぐに判断するのは容易ではないが、子どもたちはチームメートに声をかける協力プレーで見事に乗り切った。

 廣瀬キャプテンは「分からなかったときに誰かが助けてくれるのは大事。最後はみんなで『がんばれ!』『いけー!』と応援していたことでチームワークが感じられて良かった。バスケットボールで大事にしていることを、震災時や普段の生活で大事にしてほしい」と子どもたちにアドバイス。


 参加した小学生選手たちは大人もうなる感想を残している。

「昨日も地震があったし、いちから防災のことを確認できた。地震はいつ起こるか分からないので備えていきたい」(おきのミニバスケットボールスポーツ少年団 小川颯翔くん)

「こういうのがあるんだなと。ゲーム形式ですごく楽しかった。高齢者や女性に必要なものが分かって良かった」(おきのミニバスケットボールスポーツ少年団 大友雄汰くん) 

「覚えるのが難しかったけど、ちゃんとよくよく考えれば『これは高齢者だな』『これは女性だな』と分かったので、実際に震災が来るときにもつなげていけたかな」(仙台89ERSバスケットボールスクール 菅野郁人くん)
 

 
 さらに、『防災バスケ -Defense Action-』を体験した小学生選手たちは、仙台89ERSの地域・社会貢献活動『NINERS HOOP』の一環としてエキシビションゲーム『NINERS HOOP GAME』にも参加。仙台のユニフォームを模したいでたちで、憧れのプロと同じコートに立った。

 この日は他にも集まったファンのために公開練習が行われたり、Bリーグ各クラブの選手たちの震災復興に向けた声を集めたスペシャルメッセージムービーも上映された。

 

スポーツを通して復興をサポートする

 
 バスケットボールをはじめ、スポーツの存在は震災復興をどのようにサポートできるだろうか。ファンはこう語る。

「親子で3年前の新生NINERSから応援させていただいているが、非常に元気をもらって、生きる力にもなっている」(サチさん)

「(選手たちが)そういうふうにがんばっていてすごいなと思っていて、それぐらいやれるようになりたいと思っている」(ハルキくん)
 

 
 東日本大震災から10年が経つこのタイミング、Bリーグ応援キャプテン・廣瀬俊朗は次のようにメッセージを寄せている。

「10年前、僕は東京で地震を感じ、とても不安になったことを覚えている。その後、東北の皆さんのことがすごく心配になり、ボランティア活動をしたり子どもたちと触れ合う機会を持った」

「子どもたちはすごく不安な気持ちのなかだったと思うが、僕たちとスポーツをしているときはとてもワクワク楽しく、不安な気持ちを忘れていい時間を過ごせたんじゃないかと思う。僕たちもその子どもたちの様子からたくさんの勇気をもらえた」

「僕はこれからもスポーツを通して皆さんと楽しい時間や、未来に対して希望をもてるような時間をつくっていきたい。これからまた一緒になって頑張っていきましょう」

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