東北のバスケと聞いて”泥臭さ”をイメージする人は少なくないだろう。ルーズボールにダイブし、リバウンドに跳び、マークマンをオールコートでしつこく守る。男子の明成(宮城)や県立能代工業高校(秋田)、県立山形南(山形)といったチームに代表される”東北っぽさ”は案外、女子東北勢には当てはまらない印象があるが、県立郡山商業高校(福島)は毎年、土の匂いがするチームだ。
今大会は八雲学園高校(東京)に敗れて2回戦敗退に終わったが、松本理コーチはそのチーム作りに手ごたえを感じている。
「大きい選手がいないならいないなりに、小さいなら小さいなりのバスケットを作ってきたので、それが集大成の場で発揮できたと思います」
県立郡山商業はこの夏、地元開催のインターハイを経験した。ジュニアオールスターの県代表だった選手たちを中心に、ミニバス時代から対戦して来た選手たちが誘い合って郡山商業に進学。満を持して挑んだ本番は、キャプテンの佐藤由佳(3年)が1回戦で腰の骨を折る大けがを負ってしまい2回戦敗退に終わったが、「絶対に見返そう」とリハビリに励んだ佐藤を筆頭に、身体づくりや脚力を高めてウインターカップに照準を合わせてきた。
しかし、インターハイ4強の明星学園に都予選で大勝した八雲学園は強かった。松本コーチは、特にアウトサイドシュートの決定力が予想外だったと振り返り、「(ディフェンスの定石とされる)ワンアームの距離からさらに間合いを詰めた戦い方の準備も必要だったかもしれません」と悔いた。
選手たちは足を動かし続け、ルーズボールを追いかけ続けたが、点差はじわじわと広がっていく。残り時間が3分を切ったころ、佐藤の目には涙が浮いてきた。
「このチームでできる最後の舞台。コートに立っている2年生たちのためにも、次につながるプレーをしよう。最後はキャプテンらしいプレーや声掛けを残そう」という思いで懸命にプレーする佐藤の姿に、松本コーチも思わず感極まる。「指導者をやっていて、試合中に涙が出るのは初めてでした」。ベテラン指揮官の心までを動かす献身ぶりで、メンバーの中で唯一40分間コートに立ち続け、夏の分まで戦い抜いた。
須藤郁帆(3年)いわく、今年の3年生は意外にも問題児だったという。「教室ではすごくうるさいのに、練習中に声が出せなくて、先生には『やる気があるのか!?』と怒られてばっかり。先生が練習の途中で教官室に帰ってしまった時はいつも、佐藤さんが謝りに行ってくれました」と笑った。そんな3年生たちも最後は大きく成長した。
地元インターハイで躍進すること。ウインターカップベスト8に入ること。思うような結果は出なかったが、過ごした3年間がかけがえのないことであることに変わりはない。佐藤は「24人の部員で、この郡商というチームでやってこられたのは一生の宝物」と振り返り、仲間たちと涙ながらに堅く抱き合った。
文=青木美帆