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12月23日、東京体育館にて「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」が開幕。男子1回戦で、東海大学付属諏訪高校(長野県)が土浦日本大学高校(茨城県)と対戦した。
アルバルク東京のザック・バランスキーらを卒業生に持つ長野の名門は、4年連続18回目の出場を誇るウインターカップの常連校だが、重要な初戦に対戦する土浦日大はU-16、U-18日本代表にも選出された高原晟也を擁する強豪だ。高原は昨年のウインターカップでは杉本天昇(現日本大学1年/U-19日本代表)の陰に隠れていたが、高確率のシュート、そしてリバウンドやルーズボールなどの献身的なプレーでチームを支えていた。今年はキャプテンとなり、シューターとしても、ディフェンダーとしてもチームの要へと成長を遂げた。この絶対的なエースを止めることをできるかが、東海大諏訪にとって勝負のポイントになる。
東海大諏訪は試合開始から、相手エースの高原と、彼の対角で得点力を発揮するオールラウンドなフォワードの新山航希にベッタリとマークを付け、残りの3人でインサイドを守るトライアングル2でディフェンスを構築。「戦略、戦術など面での準備という意味では完璧にできた」と入野貴幸コーチが語ったとおり、完璧な入りを見せ、第1クォーターで30-19と11点のリードを奪うことに成功した。中でも、高原のマークマンという、最重要ミッションを担った北村孝太は、執拗にエースを追いかけ回し、入野コーチから課せられた任務を忠実に遂行してみせた。
第2クォーターに入ると、1年生ながらスターティングポイントガードを務める黒川虎徹とエースキラーの北村をベンチに下げて温存し、チーム全体で難敵の攻略に臨む。しかし、吉田崇紘に連続得点を許すなど、15-22と点差を縮められ、トータルスコア45-41の4点差で前半を終了した。
白熱の一戦は、後半に入っても、一進一退の攻防は続き、東京体育館へ詰めかけた大勢のファンも固唾をのんで見守る中、試合終了残り29秒、この試合で攻守にわたって大活躍の北村が3ポイントシュートを沈めて、83-80と勝利を半ば手中に。残りの時間をうまく使って試合をクローズしたい東海大諏訪だったが、残り18.7秒で高原の3ポイントシュートに対して思わずファウル。3本のフリースローを与えられた高原にすべて決められれば同点という場面だったが、1本目のフリースローを失敗。首の皮が一枚つながった状態での同16.2秒、まさかのバックコートバイオレーション(攻めている側のチームが、一度フロントコートに入ってから、バックコートにパスやドリブルでボールを戻すこと)を犯して攻撃権は相手へと移る。すると、高原に見事にジャンプシュートを沈められ、最後の最後で逆転され、83-85で初戦敗退となった。
試合後の取材に応じた入野コーチは「生徒はよくやったと思うが、勝たせきれないのは自分の責任。それ以上言葉が出ない」と、終始ペースを握りながらの悔しい敗戦を振り返った。
また、最後の最後で勝負を決めた相手エースについて「ノーマークのところで、一瞬を外さない高原くんを褒めたい。彼のような選手が日本のトップレベルの選手。わかっていても止められないというのが、やはりエースなんだなってことですね」と惜しみない称賛の言葉を贈った。
続けて、劇的な幕切れについて「終始こちらのペースだったのに、最後の最後でやられてしまって、何が足らなかったのかな」と寂しそうにつぶやきつつも、「勝敗が切り替わる終盤のああいうシーンは高校生にはなかなか経験できない。初めてだったとしたら、次につなげてほしい」と期待を込めた。
ウインターカップ初日、最も会場を盛りあげたのは東海大諏訪の大健闘だったと言っても過言ではない。この悔しい敗戦を活かし、さらにたくましくなった姿をバスケットボールファンの前で見せてほしい。
文=村上成