香川県の高校男子は、10年にわたって尽誠学園の独壇場だった。渡邊雄太(アメリカ・ジョージワシントン大4年)というスーパースターを輩出し、突出した選手がいない年でも抜群の組織力で全国の強豪を食ってきたチーム。県立高松商業は今年、その相手を夏冬連続で撃破し、全国大会に勝ち上がってきた。
昨年、選手たちはウインターカップを現地で観戦している。観戦したのは男子準決勝の土浦日本大学×北陸学院。下馬評の高かった土浦日本大を北陸学院が見事なゲームプランで粉砕した試合を見て、選手たちの気持ちは否が応にも高まる。「来年は絶対に全国大会に行く」という目標を全員で立てた。
どうしても尽誠を倒して全国に行きたい。そんな選手たちの思いを受けて、丸吉大介コーチは様々なアイディアでそれを助けた。
「尽誠さんと同じことを追求していても勝てません。いろんな発想を試して、型にはまらないようにしながら、僕たちの強みが何かということを考えながらバスケットをやってきました」
12月15日から17日に開催された『3×3 U-18日本選手権』への参加もその1つ。下級生や引退した3年生がエントリーする中で、高松商業は唯一主力選手を出している。
1週間後に控えるウインターカップを考えれば、エントリー変更をしてもよさそうなものだが、丸吉コーチはあえてそれをしなかった。「うちの選手たちはバスケットが大好きなので、1つでも全国大会に多く出してあげたかったんです」。
チームは準決勝で優勝したSTAMPEDEユース(大分)に14-18で敗れたが、選手たちはこの舞台を存分に楽しみ、3対3で得た経験を5対5にも生かしたという。
「3×3ではスペースを利用して、ミートで1対1することを学びました。ウインターカップでも、ボールのもらい出しから1対1を仕掛けていくことと、ボールを早く回してスペースを見つけながらドライブしていくことを意識してプレーしました」(山中馨斗)
「3×3はカバーがいないので、1対1が強ければ強いほど有利。濱田(秀斗)は簡単にドライブして点を取ることをウインターカップでも実践していました」(河津郁巳)
初戦の実践学園高校戦は、濱田や山中のアグレッシブなオフェンスが功を奏し、序盤からリードを奪った。しかし、河津が「本当ならもっと点差を離せた展開でした」と悔やむとおり、本来の戦いぶりには至らなかった。1点リードで迎えた第4ピリオドは一進一退の攻防になったが、最後の最後で弱点のリバウンドで上回られ、59-63で力尽きた。
高松商業は「雲のようなオフェンス」をスタイルに掲げている。ボールマンに自由にプレーを選択させるためのスペーシングを土台としつつも、その他は選手たちの創造性に任せ、形がない。河津は「自分たちのプレーを出そうとか堅いことは考えずに、考えを軽くしてシンプルにプレーしています」と話すが、「自分たちのバスケをやろう」と意気込むチームが多数を攻める中、非常にユニークな考え方だ。
そのオフェンスの片鱗は実践学園戦でもうかがえたが、まだまだ見足りない。「(後輩たちには)絶対に勝ってほしい」と涙をこぼした山中ら上級生の気持ちを受け継ぎ、ぜひまた全国の舞台に帰ってきてもらいたい。
文=青木美帆