2017.12.24

就実相手に奮戦した県立小林、練習を積み重ねて磨いた小柄なチームならではの“割り切った戦術”とは?

果敢に就実側のリングへと向かっていった県立小林の永友[写真]=圓岡紀夫
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 「わぁ、小さい…」

 記者席にいた関係者が思わず声を漏らしてしまうほど、県立小林(宮崎)のスタメンは小さかった。海江田早紀、永友ひなた(ともに3年)は150センチ台で、スタメン最長身は169センチ。対する就実(岡山)は170センチオーバーを4枚揃え、U17世界選手権を経験した那須愛加(3年)を筆頭に、全中出場などキャリアも豊富だ。

就実の那須はこの試合最高となる27得点を挙げた[写真]=圓岡紀夫

 そんな相手に県立小林は序盤からリードを奪われるが、一時は同点にまでこぎつけ、最後まで点差を離されることなく食らいついた。そんな姿に、冒頭の声を上げた人も「すごい…」「頑張れ」と小さく言葉を発していた。

 繰り返すが、県立小林はとにかく小さい。自身も同校の卒業生である前村かおりコーチは、そんなチームが全国の強豪と対等に戦うためには局地戦しかないと考え、割り切った戦術を選手たちに講じた。

 1つはディフェンス。10人ほどの選手を起用し、ファウル覚悟の激しいディフェンスで攻める。「うちは小さいので、退いたらただのチーム以下。この大会が決まってから、『ファウルしてもやめない。自分たちのバスケットをやり続けよう』と話してきました」と前村コーチ。

 それだけの選手をコートに送り出せる選手層の厚さも県立小林の大きな武器。「今日出たくらいのメンバーは、スタートと大差のない力を持っています」と前村コーチが胸を張る強みがあったからこそ、ケガ人が続出する中、県予選決勝を5点差でしのいで今年初の全国大会に進めた。

 オフェンスでは、定石のインサイドではなくアウトサイドを起点とした。

 「中に入ったらブロックされてしまうので、外のシュートが当たれば勝つし、外れれば負ける。それを承知の上で打ち続けようとずっと言ってきました。それを永友と海江田が体現してくれたので、子どもたちはできることを最大限やってくれたなと思っています」

 海江田は7本の3ポイントシュートを含む26得点、永友は13得点(3ポイント2本)でチームを盛り立てた。

海江田は17投中7本の3ポイントシュートを決めてオフェンスをけん引[写真]=圓岡紀夫

 アウトサイドのシュートを生かすために、ボールがないところではフレアスクリーン(ボールから離れることでフリーを作るスクリーン)、ボールがあるところではピック&ロールという戦い方を徹底した。

 「それが一番シュートの打てる可能性が増えるやり方だと思い、たくさん練習をしてきました。これも、当たったときはすごく強いけれど、落ちてくれたら全然点数が伸びないし逆速攻をしかけられてしまいます。そういうリスクはあるけれど、身長も能力も高くないうちのチームはそれをやるしかないのかなと考えています」

 狙うゴールが頭上にある以上、バスケットボールにおいて、高さは絶対的なアドバンテージとなる。それでもサイズに恵まれないチームが勝利を目指すのなら、諸刃の剣も覚悟の上。県立小林を始め、全国のスモールチームが用意する”剣”に引き続き注目していきたい。

スタメンガードのケガにより、県予選2週間前にスタメンに抜擢されたフェスタ―ガード。「みんなのためにやってやろうと思った」と、戸惑いやプレッシャーはなかったという[写真]=圓岡紀夫

文=青木美帆

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