「平成30年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」は8月2日から1回戦がスタート、全国の頂点を目指す激戦の幕が切って落とされた。
今大会のトピックスとして、「FIBA U18 アジア選手権」と大会日程が重複するため、本大会に出場できない男子選手がいることが挙げられるだろう。一方、女子では、7月29日までベラルーシのミンスクで行われていた「FIBA U17女子バスケットボールワールドカップ2018」の主力選手を送り込んでいたチームがあり、厳しいスケジュールの中、どのように本番にコンディションを調整するのかにも注目が集まっている。
シード校であれば2回戦からの出場となり、それだけコンディション調整に時間が費やせる。しかし、1回戦からの出場となれば、ほとんどぶっつけ本番。しかも約1か月もの間、チームから離れていたこともあり、コンビネーションの面でも不安材料が多い。
パークアリーナ小牧第1試合、足羽高校(福井)と松江商業高校(島根)の一戦、足羽のエース、林未紗は3年生ながら早生まれということでU17女子ワールドカップの出場資格を持ち、帰国してすぐチームに合流したが、まだ時差ボケもあるという。そのためこの試合では後半からの出場となった。
前半までは松江商の低く当たるディフェンスに手を焼いた足羽だったが、林がコートに入ったことで、次第にリードを広げていった。終わってみれば、111-70と完勝。しかも全員得点のおまけ付きだ。林は14分33秒の出場で20得点をあげたが、決してコンディションが戻っているとは言えない中で、自分の得点だけでなく、マークが寄ればパスをさばき、チームに勢いをもたらせた。
試合後、足羽の林慎一郎コーチは、「大会前には練習試合でいい結果が出せていたが、ちょっと疲れが出たのか、前半はもたついた。林以外にももっともっとやれる選手はいる」と試合を振り返った。自身もアンダーカテゴリーのスタッフとして世界大会に何度も出場した経験がある林コーチだけに、「林がいなくても点が取れたり守れるようなチーム作りをしてきたつもり」と、今回のスケジュールに対してネガティブにはとらえていない。反対に世界の舞台で戦ってきた林のプレーぶりを見て、「バスケがだいぶわかってきた」と評価。具体的には「元々ドライブが得意な選手だけど、そこで止められればポストアップしたり、引いて守られたら3Pシュートを打てばいい。今日はそれを指示しなくても自分で判断して行っていた」と林の成長に言及した。
その話を本人に伝えると、「下級生の時から先生に言われてきたことなので」と表情を崩した林。「思ったよりも体が動きました。ワールドカップからシュートタッチがいいので、今日も積極的に3Pを打ちました」と、手ごたえを口にしている。「みんなには『自分がいなくても足羽らしくやればいい』と話してチームを離れました。不安がなかったわけではないのですが、今日やってみて悪くなかったので、大丈夫です」と胸を張る。そして目標はあくまで「日本一」。「今年は地元で国体もあるので、それに向けて大事なインターハイです」と、最後は引き締まった表情で前を向いた。
2回戦では同じ北信越でしのぎを削り合う津幡高校(石川)と対戦。その後も難敵との対戦が続くが、福井国体に向けて足羽は成長したエースとともにトップを目指していく。
文=入江美紀雄