「SoftBank ウインターカップ2018 平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子準決勝第1試合。桜丘高校(愛知県)vs福岡第一高校(福岡県)にて、桜丘のエース・富永啓生のマークマンに指名されたのは古橋正義(ともに3年)だった。
作戦はこうだ。
「相手は左利きなので、左ドリブルをさせずに右でドリブルさせる。スクリーンをかけられても(自分が)戻ってくるまでセンターがしっかり出るという感じです」(古橋)
しかし、この日は富永が絶好調。第1クォーター残り3分49秒に1本目の3ポイントを沈めると、前半だけで7本の3ポイントを含む31得点。しかもノーマークで打ったシュートは1本もなく、全て古橋らがマークについた状態で放ったシュートだ。
古橋は富永に食らいつくも、審判の笛にアジャストできず第2クォーター開始1分19秒で2つ目の反則を犯してしまう。すると、「ファウル2つで小川(麻斗/2年)に交代する」というゲームプランどおり、マークマンを変更された。同クォーター残り2分53秒、相手を突き放した第3クォーターにもファウルを取られた古橋は、4つ目の反則を犯した時点でベンチへ下がった。
「自分の中ではゲームをとおして全部つくという考えでやっていたので、あまりプレッシャーを後輩にかけたくなかったです。でもファウルをしてしまってこういう結果になりました。今振り返ってもダメだなと思います」と、守備では反省しきりの古橋。だが、この試合はオフェンスで存在感を示した。
前半、富永のパフォーマンスに苦しめられた福岡第一は、相手の得点が入ることで持ち味の速攻が出せず46-48で試合を折り返す。この前半をつないだのが古橋だ。「こっち(東京)に来てから会場の雰囲気とかにのまれてしまいシュートが全然ダメだった」と話すシューティングガードは、相手にもその点を突かれ、この試合でマークを甘くされていた。事実、桜丘の江崎悟コーチも「作戦だった」と明かしてる。
3ポイントラインでボールを受けてもノーマークの状態だった古橋は、前半で5本中3本の長距離砲を成功。10点リードの第3クォーター開始4分49秒にも、後半に放った唯一の3ポイントを沈めて、計14得点をマークした。
「相手も空けてきたので、今日は思いきり打とうと思いました。今日が1番良かったです」
チームでの役割は、主に相手エースをマークするディフェンス面での活躍。古橋自身も「ディフェンスの方が好きで、僕がもうちょっと点を決めると、チームも楽になるだろうという感じです」と控えめだったが、富永の3ポイントに隠れた“もう1つの3ポイント”は、確かにチームを救った。
文=小沼克年