8月1日の「令和元年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」準決勝。福岡第一高校(福岡県)と戦った開志国際高校(新潟県)は、試合開始直後のディフェンスで変則的な1-1-3のゾーンディフェンスを敷いた。
開志国際を指揮する富樫英樹コーチは、こう話す。
「完全に福岡第一対策です。何をされても1人が河村(勇輝/3年)君に(マークを)ついて、河村君を抑えにいきました」
「意外と効いていた」と福岡第一の絶対的司令塔に、ある程度自由を与えなかった開志国際は、28-34の僅差で前半を終了。ビハインドではあるものの、全国トップクラスの攻撃力を誇る福岡第一を34点に抑えこんだ。
しかし後半、相手がゾーンディフェンスに「慣れてきた」(富樫コーチ)こともあり、第3クォーターからは終始福岡第一に主導権を握られた。最終スコアは55-81。富樫コーチは「カードの差」と総括した。
河村に加え、小川麻斗(3年)という最強のツーガードを擁する福岡第一。試合をとおして河村は、11得点12リバウンド12アシストの“トリプルダブル”をマークし、小川は両チームトップとなる23得点の活躍を見せた。
一方、開志国際は福岡第一のツーガードに対し、ポイントガードの髙木拓海(3年)がほぼ1人でボール運びやゲームメークを担う。富樫コーチが言う「カードの差」というのは、実力だけでなく試合を作れる“ガードの人数”の差でもある。
その髙木はこの試合、1人で8つものターオーバーを犯し、「自分がゲームを崩してしまった。自分のせいで負けました」と猛省。6-19とされた第3クォーターについては「人が動かないで止まってしまい、プレーが単発になってしまいました。オフェンスが崩れて、そのままディフェンスにも影響してしまったので、もうちょっと自分がゲームを作ればよかったです」と振り返った。
「(今日は)自分の気持ちが引いてしまった」と、マッチアップした河村との一番の差は「気持ち」の部分だという。「河村はスピードもあるんけど、いつでも強気で来る。自分もそういう所を見習ってどんな状況でも試合を作れるガードになりたいです」。
昨年は、今回の福岡第一のようにツーガードを採用してインターハイ初制覇を成し遂げた開志国際。指揮官は「1、2番の差が歴然としてしまった。改めてガードのありがたみがわかった」とも口にする。
富樫コーチは、日本を代表するポイントガード・富樫勇樹(千葉ジェッツ)の父でもある。今後は、シューティングガードを務めるジョーンズ大翔(2年)を本格的にポイントガードにさせる考えもあるようだ。
果たして、今冬のウインターカップまでにはどんなチームに仕上げてくるのか。今から楽しみだ。
文=小沼克年