男子の正智深谷高校は「令和2年度 全国高等学校バスケットボール選手権大会 埼玉県予選会」を圧倒的な強さで制し、9年連続の優勝、通算10回目となるウインターカップ出場を決めた。
戦った全5試合で100点ゲームを演じ、オフェンス力が際立った今大会。しかし、指揮を執る成田靖コーチが「基本的には攻撃的に守って、そこから走るというチーム」と主張するように、正智深谷は守備から自分たちの流れを持ってくるチームだ。今大会の数字を見ても計5試合で平均55.6失点。ディフェンスにおいても力の差を見せつけ、ボールを奪ってからは速攻から得点を奪うシーンが多く見られた。
さらに今年は、昨年から主力を務めていた太田誠、藤平皓成、木村遥音、大滝唯人らが最上級生となり、その経験値が1つの強みでもある。新チーム発足後は「3年生が主体性に欠けている部分があった」(成田コーチ)ようだが、新型コロナウイルスの影響による休校措置が解除された6月下旬のチーム練習からは「『本当にバスケットがしたい』という気持ちが芽生えて、コロナ明けの練習からはすごく変わりましたね」と明かす。
下級生の台頭により競争意識が高まる
そんな3年生が主体となる今年のチームだが、成田コーチが「コロナ明けからメキメキと頭角を現してきた」と笑顔で話した1、2年生がいる。ポイントガードの関河虎南(2年)と、フォワードのルーニー慧(1年)だ。
今大会ではともにスターティングメンバーに抜擢され、関河は司令塔として攻撃をリード。広い視野から得点に直結するアシストをさばき、3ポイントシュートも難なく沈める。チームの主将を務める太田も「いつも無表情なんですけど、しっかり得点を取ってくれたり、いいパスもくれるのでとても助かっています」と、信頼を寄せている。
一方のルーニーも淡々とプレーしているが、すでに先輩たちのスピードについていく走力と冷静な判断力を兼ね揃えている。太田によれば「ルーニーは中学時代からスター選手で、これから自分を出せるようになればもっと上手くなる」という。「ルーニーはウチにはいない、沈着冷静ですごくスマートにバスケットできる選手」と成田コーチも評価するほどだ。
関河、ルーニーの下級生が力をつけてきたことで、昨年までは一定のプレータイムを与えられていた3年生たちも危機感を感じるようになった。ウインターカップを前に競争意識が高まった正智深谷。これからプレータイム争いが激化し、チーム全体は一層レベルアップするはずだ。
文・写真=小沼克年