2020.09.29

初優勝でウインターカップ出場を決めた正智深谷、実を結んだ「3年生の頑張り」

初優勝でウインターカップ出場を決めた正智深谷[写真]=小沼克年
フリーライター

 試合後、正智深谷高校女子バスケットボール部の飯野英利コーチは弾けるような笑顔で喜びを爆発させた。

「やったな! 最高だよな! お前らよく頑張った! 今日は喜ぼう!!」

 3年生にとっては負ければ引退となる「令和2年度 全国高等学校バスケットボール選手権大会 埼玉県予選会」。決勝戦まで駒を進めたが、ウインターカップ予選におけるこれまでの最高成績は県内2位。しかし、今回の正智深谷は違った。

 決勝でも前回大会優勝の埼玉栄高校相手に82−58で快勝。後半にチームの象徴でもあるアグレッシブなディフェンスから流れを呼び込んで、一気に突き放した。

 飯野コーチは初優勝を手にすることができた要因を「3年生の頑張り」と総括。「3年生が3年間培ってきたプライドを示してくれたことによって、後半すごく良いリズムが生まれました。3年生には本当に感謝したいです」。指揮官が言う3年生とは、キャプテンの網野碧波を筆頭に試合に出場するメンバーだけではなく、ベンチ入りを果たせなかった選手も含む16名全員だ。

「今年は(新型コロナウイルスの影響で)いくつかの大会がなくなったり、インターハイ予選も中止になったりと、くじけそうになることがたくさんあったと思います。ですけど、本当に最後のワンチャンスで『後輩たちに全国大会という経験を残してあげたい』という強い思いを練習中からすごく感じていました。試合に出る子も出ない子も、3年生16人が本当によく頑張ってくれました」

 チームを引っ張る網野も「3年生の強い気持ちに下級生もついてきてくれました。今日はそういった気持ちやプレーが全部コートで出し切れたと思います」と、試合後は優勝を噛み締めた。

キャプテンとしてチームをけん引した網野(写真右)[写真]=小沼克年

3年生が体現する“正智らしさ”

 今年の正智深谷は182センチの増田悦実、176センチの岡登美愛(ともに3年)を擁し、例年に比べると高さがある。だが、「正智深谷は全員が声を出して盛り上げるチーム」と網野は強調する。前述した飯野コーチの言葉からも汲み取れるように、7月から本格的に再開されたチーム練習でも良い雰囲気で取り組むことができ、それが今大会の成果につながったようだ。

「正智らしい姿をなくさないためにも練習から3年生が引っ張っています。自分も率先して声を掛けていますし、練習で妥協していたら今日の試合も勝てていないと思うので、甘い部分はなるべく出さずに空気を締めるよう心掛けています」

 この網野の発言を聞いて、練習中はちょっぴり厳しめなキャプテンの姿を想像したが、いざ試合となれば自ら切り込み、そこからシュートもアシストもできる。仲間にも積極的に声掛けをする頼れる存在だ。ちなみに、目標としている選手は、昨年、高校バスケ界だけでなくBリーグをも盛り上げた河村勇輝(現・東海大学1年)だという。

 待ちに待った埼玉県1位、そしてウインターカップの出場権を獲得した正智深谷。チームとしては2018年のインターハイ以来の全国大会となる。3年生にとって最初で最後となる大舞台でも、気持ちを全面に出す“正智らしさ”を存分に発揮してほしい。

チーム一丸となって最後の大舞台に挑む[写真]=小沼克年

文・写真=小沼克年

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