今年度で最後となる“ジュニアオールスター”、「第32回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2019」は大阪府が女子の頂点に立って、その幕を下した。
「(決勝戦の相手が)東京Aと聞いて、高さのあるチームなので上(高さ)では勝てないから粘り強くついていこうと。そうしたねちっこいディフェンスと、ルーズボールは絶対に負けないという点、オフェンスでは何度もリバウンドに飛びこんで、シュートを打ったことが優勝につながったと思います」
勝因をそう語った大阪府のエース、横山智那美は最後のジュニアオールスターの女子最優秀選手に選ばれた。昔から得意だったという細かいドリブルテクニックに加え、視野の広さを活かしてチャンスメイクをする。緩急をつけた動きで相手ディフェンスを惑わすのは「ディフェンスのずらし方を見ている」と言うステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)の動きを参考にしたものだ。「将来は日本を背負って、世界で戦える選手になりたい」と横山選手は語る。
ジュニアオールスターをきっかけとして日本代表へと駆け上っていった女子選手は過去にも数多くいる。個人表彰が始まった第6回大会の最優秀選手は元シャンソン化粧品 シャンソンVマジックの三木(現・中村)聖美氏。「最優秀」という冠が取れた時期もあったが、その後も大神雄子氏(現トヨタ自動車アンテロープスディベロップメントコーチ)、吉田亜沙美氏(元JX-ENEOSサンフラワーズ)、現役選手では間宮(現・大崎)佑圭、渡嘉敷来夢、藤岡麻菜美(いずれもJX-ENEOS)、馬瓜エブリン(トヨタ自動車)、そして赤穂ひまわり(デンソーアイリス)と、とにかくそうそうたるメンバーが名を連ねている。横山もまた未来の日本代表になる可能性を十分に秘めている。
可能性を秘めているのは横山だけではない。
決勝戦で敗れた東京Aの森美麗は180センチのオールラウンダー。昨夏の全国中学校バスケットボール大会(全中)でも八王子第一中学校を頂点に導いているが、約半年が過ぎた今大会ではさらに進化の過程を見せてくれた。ダブルクラッチあり、チームが困ったときのバスケットカウントありと、その身体能力をより巧みに使えるようになってきていたのだ。彼女もまた「日本を背負って、世界と戦いたい」と目標を語る。
「イメージとしては立川真紗美さん(SEKAIE.EXE)。スピードもあって自分でも攻められるけど、みんなのことも考えている選手。笑顔でプレーしているところも好きです」
そしてもう1人、優秀選手にこそ選ばれなかったが日本を背負って立ちそうな逸材が愛知県にいた。福王伶奈だ。189センチの1年生センターは昨夏の全中よりも少し体を大きくさせ、フルコートを走る力もつけていた。準決勝では東京Aの森選手とマッチアップし、もちろんうまく攻められないシーンも多々あったが、「センターとして負けないように工夫した」という成果が得点面で現れていた。
「これまではチームプレー中心だったけど、ジュニアオールスターでは個人プレーが中心になったので1対1ができるように練習してきました。特にローポストからの攻めでは、ディフェンスが寄ってきたらパス、寄ってこなければ攻めるようにしました。まだまだ課題はあるけど、思っていたよりも得点が取れたことはうれしかったです」
そして将来の夢は――彼女もまた日本代表に入って、「走れて、外もできるセンターになりたい」と語る。福王が憧れているのは192センチのオールラウンダー、渡嘉敷だ。
カリー、立川、渡嘉敷……。目指すべきスタイルこそ違うが、彼女たちはいずれも日本を背負う覚悟を持とうとしている。いや、スタイルが違うからこそ、ひとつになったときの化学反応を見てみたい。
むろん日本の未来を背負いたいと夢見ているのは彼女たち3人だけでもない。ジュニアオールスターにはダイヤの原石がそこかしこにいて、高いレベルのゲームを行う中で少しずつ磨かれ、わずかな光を発していた。ジュニアオールスターがなくなるのは残念だが、彼女たちこれからも高みを目指し続けてくれるはずだ。
■女子最終結果
優勝:大阪府(2年ぶり2回目)
準優勝:東京都A
第3位:京都府、愛知県
■個人賞
・最優秀選手賞
横山智那美(大阪府)
・優秀選手賞
樋上さくら(大阪府)
森美麗(東京都A)
仲江穂果(京都府)
鈴木杜和(愛知県)
写真・文=三上太