6月13日に日本バスケットボール協会(JBA)から発表された男子日本代表の第1次育成キャンプ参加選手。メンバー表には、これまで筆者が聞いたことのない選手が2名いた。
その1人が今回招集された中で最年少となる、16歳の山之内勇登(リベットアカデミー)だ。
「202センチ/87キロ」というメンバー表の記載から、身長はあるが体の線は細いのだろうという予想はできた。ちなみに、同キャンプメンバーに選ばれ、今シーズン横浜ビー・コルセアーズでプレーした中村太地(190センチ/法政大学4年)の体重が、山之内とほぼ同じ86キロである。
14日、同キャンプの公開練習に足を運ぶと山之内の姿があり、予想していた体格に加えて手足が長い。顔つきはまだ幼く、「時差ボケ」もあり表情は決して明るいものではなかった。しかし、練習中は当たり負けしながらも周りのメンバーと激しく体をぶつけ合い、1対1のメニューでは約20歳差の太田敦也(三遠ネオフェニックス)をブロックする場面もありポテンシャルの片鱗をのぞかせた。自身の得意なプレーを聞くと、「3ポイントやペリメーターのシュート」と流暢な英語で答えた。
福島県で生まれ、「小5から中学3年まではハワイに住んでいた」という山之内。バスケットを始めたのは5歳の時だが、「本当に真剣に取り組み始めた」のは中学2年の時。「その時に188センチから一気に2メートルまで身長が伸びたので、『バスケットで何かできるかもしれない』って本気で思い始めた」のがきっかけだ。
現在カリフォルニアで暮らす16歳が日本代表を意識するようになったのは、昨年から。というのも、山之内の祖母が代表関係者に連絡を入れ、その後、改めて父がプレー映像を日本へ送ったことで転機が訪れた。正式なメンバーには選ばれなかったが、3月に行われたU22の「スプリングキャンプ2019」に招待され、スキル練習を行ったという。
今回、指揮を執るエルマン・マンドーレヘッドコーチのもと、大半が「サイズのある選手を集めて、新しい選手を発見したい」という意図で招集された日本代表メンバー。山之内は「自分の国のために日本代表のメンバーとして招待を受けて、とてもワクワクしています。要求されることは、何でもやりたいです」と意気込む。
「コー(フリッピン/千葉ジェッツ)が『お前はもっとできる』と言ってくれますし、ルームメートの田中力(IMGアカデミー)も僕のことをプッシュしてくれています。他の選手たちにもすごく支えられているなと感じています」
周りの優しいサポートを受けながら、より多くのことを吸収しているチーム最年少は成長の余地が十分にある。パワー、スピード、メンタル……と課題を言い出せばキリがないが、本人はハッキリとこう話す。
「東京オリンピックに参加できるかもしれない、チームの一員になれるかもしれないということは毎日考えています。なので、この合宿が終わってカリフォルニアに戻っても、自分がチャンスを貰えるように毎日努力します。日本のためにチームの一員として戦いたいという気持ちは強いです」
23日のキャンプ最終日にはどんな選手になっているのだろうか。「どのポジションか分かりませんが、NBAを目指します」とも口にした新たな逸材、山之内勇登の成長が楽しみでならない。
取材・文=小沼克年