持ち味の守備が崩れず2年ぶりの栄冠
大学日本一を決める「第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)」男子決勝戦は、大会連覇がかかる筑波大と2年ぶり6度目の優勝を狙う東海大学が激突。結果は第2クォーターから徐々にリードを広げた東海大が、75-57で筑波大を退けた。
わずか3点リードで第1クォーターを終えた東海大だが、第2クォーターは開始から松崎裕樹(2年)が連続3ポイントを沈めて一歩リードする。同クォーター終盤には八村阿蓮(3年)がバスケットカウントを奪って2ケタ点差とし、それで得たフリースローの場面では佐土原遼(3年)がオフェンスリバウンドから加点。この10分間を23-14とし、12点リードで前半を終えた。
後半の立ち上がりも西田優大(4年)の連続得点で前に出た東海大。これでリズムに乗り、一時点差を19点まで拡大した。しかし、中盤以降は相手が仕掛けてきたゾーンディフェンスに対し、思うような組み立てができず得点が止まりだす。それでも、59-44で第4クォーターへ入ると、最後まで持ち味の守備が大崩れすることなく筑波大の反撃を凌ぎきった。
MVPの大倉颯太「4年生を勝たせたかった」
東海大は佐土原が両軍最多の18得点、八村がそれに次ぐ16得点と攻撃ではインサイド陣が奮闘。ディフェンスでは時折、山口颯斗(4年)と二上耀(3年)の1対1に手を焼いた場面もあったが、津屋一球(4年)、大倉颯太(3年)を中心に何度もハドルを組んで修正を図った。陸川章ヘッドコーチも「第2クォーターから少しずつディフェンスで流れを作れたことが良かったです」と、主に守備面を評価した。
今大会MVPに輝いたのは東海大の大倉。試合後の会見では、「今シーズンは4年生の気持ちが強く、学生スタッフも熱い思いでサポートをしてくれました。なので、僕自身4年生を勝たせたいという思いが強かったですし、こうして勝つことができてホッとしています」と安堵の表情を浮かべた。だが、優勝後の大倉はどこかおぼつかない様子で歓喜の輪に加わっていた。その理由は、筑波大のゾーンディフェンスを司令塔として崩せなかったことにあるという。「4年生とビッグマンがタフに戦い続けてくれたおかげでこの点差になりましたけど、ゾーンの時にアジャストできなかったのは本当に悔しいです」
それでも、昨年のインカレでは専修大学に敗れて屈辱を味わっただけに、自身2度目となるインカレ優勝の喜びはひとしおだっただろう。大倉はこの1年をこう振り返った。
「一番成長できたのは責任感です。コート上とコート外での責任感を千葉ジェッツで学んだり、チームにいる中でも学んだりしました。同じ方向を向いていないとチームは強くならないですし、特に今年のチームはみんなが違う方向を向くと本当に分かりやすいくらい、いい流れにならなかったです。そこをキャプテンはじめ4年生と一緒に同じ方向を向くように言ってきましたし、常に目標をブラさずにタフな毎日を過ごすことができました」
まだ3年生。来年も東海大のリーダーとして大学バスケ界をリードしてほしい。
筑波大エースの座は山口から二上へ
「負けてしまいましたけど、決勝まで連れてくることができましたし、オーバータイムを2つ制して準優勝することができたのは良かったと思います」
今大会、山口颯斗は筑波大のエースであり続けた。6点差で競り勝った2回戦の中京大学戦では終盤に7得点を挙げ、次の専修大戦では足を負傷しながらも必死にプレーを続けて22得点。この試合のクラッチタイムでも自らの得点で勝利を呼び込んだ。準決勝と決勝でも、一見強引とも思えるような迫力あるアタックでチームを引っ張り、大会得点王と敢闘賞を受賞。東海大との決勝では「公式戦で初めて足をつった」ほど満身創痍であったが、準々決勝で負傷離脱した菅原暉(4年)の分まで声を張り、懸命なプレーで後輩たちに背中を見せた。
来年、そのエースの座を引き継ぐのは二上耀だ。今大会は控えからの出場だったにもかかわらず、山口とともに準々決勝と準決勝ではここ一番でのシュート力を発揮して準優勝の立役者となった。「プライベートでも仲がいい後輩」という菅原も、「今大会でもクラッチタイムでシュートを決めてくれましたし、今回悔しい思いをした分、来年やってくれると思います」と期待を寄せる。
二上自身、昨年のインカレはケガで出場することができず、優勝したチームとは裏腹に1人悔しさが残った。「『自分がいなくても優勝できるんだ』というのが悔しくて、ちょっとメンタルがやられた時もありました」。だが、その間に取り組んだシュートフォームの改善が、今のシュート力向上につながっていると二上。
「大会前の練習試合は積極的にプレーできず迷っている部分がありました。でも、インカレを通して積極性が出せたので、そこは吹っ切れたと思います」
筑波大は引き続き“打倒東海大”の最有力候補と言えるだろう。まだシーズンが終わったばかりではあるが、来年もこの2チームの対戦を楽しみにしている。
文・写真=小沼克年