「積極的に攻めることがチームに貢献できる私の仕事だと思ったので、勢いを付けるためにも、どんどん攻めて行こうと思っていました。迷いはなかったです」
「FIBA女子アジアカップ」決勝戦、中国との頂上決戦は予想通り競った展開となる。だが、苦しい展開が続く中、得点でチームを救ったのが本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)だ。
前半で7得点を挙げていた攻撃型ガードは、後半に入ると「本橋タイム」と指揮を執るトム・ホーバスヘッドコーチが言うように、ドライブやジャンプシュート、3Pシュートにと次々と得点を決めていく。「ゾーンに入っているというか、積極的に攻めた方が勢いにも乗るし、手応えを感じたので行きました」(本橋)と、躊躇なくシュートを放ち、終わってみれば24得点。後半だけで17得点を稼ぎ出した。
大会ではオールスターファイブのみならず、MVPを獲得。「信じられなかったですが、本当に感無量ってこういうことなのかなという感じです」と表彰式直後の取材ではこうコメントした。
昨年、日本代表入りを果たすと、女子ワールドカップではスターターに。それでも今年度の代表活動では「本橋の調子が上がっていない」とトム・ホーバスヘッドコーチが言うこともあり、自身も「うまくいかない時期が今年は結構多かった」と振り返る。
だが、「どこまでできるのか、正直あまり自信はなかったですが、ただ信じるしかなかった。自信というと難しいのですが、チームメイトと今までやってきたことを本当に信じるしかないと思っていました」と臨んだ今大会では予選ラウンド3戦目となる韓国戦から本来のシュート力を発揮。韓国戦は21得点、準決勝のオーストラリア戦では22得点、そして決勝の中国戦で24得点を叩き出した。
本橋は、明星学園高校(東京都)の3年次にはインターハイでベスト4、早稲田大学でもインカレ優勝と輝かしい成績を残している選手。だが、同級生である長岡萌映子(トヨタ自動車アンテロープス)や宮澤夕貴(JX-ENEOSサンフラワーズ)らが高校時代からアンダーカテゴリーの国際大会で経験や実績を積む中、アンダーカテゴリーやユニバーシアードでの出場歴はなし。日の丸を付けて公式戦に出場したのは昨年の女子ワールドカップが初となる。そして代表2年目となる今年は、アジア女王に輝き、MVPの称号も得た。
まるでシンデレラストーリーのように駆け上がった本橋。しかし本人は、「最後にこういった賞を取れたのは本当にうれしいです。ただ、これに満足せずに、これから先はよりマークされると思うので、もっともっと成長していかなければいけないなと思います」と現状に満足せずに上を目指す。
次なる活躍の舞台は第21回Wリーグ。10月4日には東京羽田ヴィッキーズのホームである大田区総合体育館にて試合が行われる。昨シーズン、クラブ史上初となる6位となったチームのエースは、アジアMVPを土産に、今度はWリーグで大暴れする。
文=田島早苗