2月15~17日の3日間にわたって、丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で開催されるのが「2019国際親善女子車いすバスケットボール大阪大会」(通称・大阪カップ)だ。昨年の世界選手権で優勝したオランダ、そのオランダに決勝では一時は4点差にまで詰め寄ったイギリス、そしてアジア・オセアニアゾーンの強敵オーストラリアに日本が挑む。世界トッププレーヤーたちの熱戦を国内で観戦することのできる貴重なチャンスとして、注目の大会だ。
文・写真=斎藤寿子
2020年を前に日本の立ち位置を知る貴重な舞台に
現在、女子の車いすバスケ界において圧倒的な強さを誇っているのが、高さはもちろん、スピードもあり、ディフェンスの技術も高いオランダだ。17年欧州選手権では、予選リーグでドイツ戦を除いて快勝し、そのドイツにも決勝では勝利を収めて優勝。そして昨年の世界選手権では、グループリーグ、決勝トーナメントを合わせて8戦全勝で世界女王の座をつかんだ。
その世界選手権では、いずれも高さがあり、持ち点4点台と障がいの程度が軽い2人のハイポインターが躍動。リオにも出場したマリスカ・ベイエルが平均得点トップの27.38を叩き出し、リオ以降すっかりチームの柱となったボー・クラメルが平均リバウンドトップの12.88とゴール下を制した。加えて、障がいの程度が最も重い持ち点1.0のイェッケ・フェサーも高確率でミドルシュートを決め、存在感を示した。今大会も注目したい選手たちだ。
リオで史上最高位の4位となり、昨年の世界選手権では準優勝するなど、成長著しいチームがイギリスだ。男女を通じてジュニア世代の育成にも定評があり、女子は15年U25世界選手権、16年U24欧州選手権でいずれも優勝している。現在の強さは一過性のものではなく、さらに強みを増しそうだ。
一方、オーストラリアは長身のセンタープレーヤーであるアンバー・メリットと、スピードとクイックネスを武器としカットインプレーを得意とするコビ・クリスピンが2大エース。逆に言えば、この2人を抑えられると、戦力が落ちてしまう面も抱えている。
その課題を突き付けたのが、日本だ。昨夏、国内で行われた日豪による国際強化試合「日本生命 WOMEN’S CHALLENGE MATCH」で日本は2戦いずれにも勝利。トレーニングの一環として行われた練習試合も含めれば、日本はオーストラリアに5戦全勝してみせた。実はこの強化試合には、オーストラリアの2大エースが不在だった。だが、それ以外は全員が代表メンバーが揃っていただけに、選手層の薄さが露呈されたことは否めない。
それだけに日本にとっては大きな自信につながったに違いない。オーストラリアに対して「勝つイメージ」も沸いたはずだ。それ以来の対戦となる今大会は、日本にとって今後を占う意味でも非常に重要だ。2大エースのいるオーストラリア相手に、どう戦うのか。日本の真価が問われる。
若手の成長がチーム力をアップさせる
その日本で注目の一人としてあげたいのは、現役大学生の柳本あまねだ。昨夏のオーストラリアとの強化試合では非常にいい動きを見せており、成長著しい選手の一人。持ち点は2.5のローポインターだが、アウトサイドからのシュートを得意としている。実は女子日本選手権(18年より「皇后杯」を下賜と同時に「全日本女子」より名称を変更)では、16、17年と2年連続で並みいるハイポインターのシューターたちをおさえて「3P賞」に輝いている。昨年の日本選手権では個人賞こそ獲得しなかったが、大接戦となった決勝ではチームのエースがベンチに下がっている時間帯、10得点中6得点を挙げる活躍を見せた。
このシュート力を海外勢を相手とする代表戦でも発揮することができれば、日本の大きな武器となるはずだ。柳本自身も「これからは自分もシューターになっていかなければいけない」と自覚十分。藤井郁美、網本麻里、北田千尋、土田真由美のハイポインター陣へのマークが厳しくなることが予想されるだけに、柳本をはじめローポインターの攻撃参加が期待される。
いずれにしても、ロンドン、リオと2大会連続でパラリンピックの出場を逃し、昨年の世界選手権にも出場がかなわなかった日本よりも、格上の相手ばかりであることは間違いない。さらに今年はパラリンピック予選が控えているだけに、ハイレベルな戦いが繰り広げられ、日本にとっては厳しい試合が続くことが予想される。だからこそ、2020年東京パラリンピックを1年半前に控え、日本が世界のどの位置にいるのかを知る貴重な場となるはずだ。