第7戦までもつれる史上有数の激闘となった2016年ファイナル/プレーオフ特別企画34

ウォリアーズのカリー(左)とキャブスのカイリー(右)[写真]=Getty Images

4月15日(現地時間14日)から、計16チームによる今シーズンの王座を懸けた激闘、「NBAプレーオフ2018」が幕を開けた。バスケットボールキングでは、プレーオフ出場チームやシリーズ勝敗予想に加え、これまでのプレーオフにおける名シーンや印象的なシリーズ、ゲームなども順次お届けしていく。

<プレーオフ特別企画34>
LOOK BACK AT FINALS Round.2 ~ファイナル振り返り②~
2016年NBAファイナル
ゴールデンステート・ウォリアーズ×クリーブランド・キャバリアーズ

今年のNBAファイナルへと勝ち進んできたのは、激戦を潜り抜けてきたゴールデンステート・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズ。昨年、NBA史上初となる3年連続同カードという記録を樹立した両チームが、またしても頂上決戦の舞台に立った。ここでは、ウォリアーズとキャブスによる直近3年のファイナルを1つずつ振り返ってみたい。

■ウォリアーズ

開幕24連勝で勢いに乗り、シーズン73勝でNBA史上最多勝記録を更新!

 15年の優勝メンバーとほぼ同等のロースターで15-16シーズンを迎えたウォリアーズは、リーグ新記録となる開幕24連勝と爆走。前シーズンから続く連勝を28へと伸ばし、リーグ2位の記録を樹立。このシーズン、クレイ・トンプソンが平均22.1得点、ドレイモンド・グリーンが平均14.0得点9.5リバウンド7.4アシスト1.5スティール1.4ブロックと、多方面にわたる活躍を見せたが、カリーの存在感は他を圧倒していた。

カリー(右)はここまでのキャリアでベストと呼べるシーズンを送り、グリーン(左)は急激に存在感を増した[写真]=Getty Images

 カリーは平均30.1得点で得点王になったばかりか、5.4リバウンド6.7アシスト2.1スティールとオールラウンドな成績を記録。特に3ポイントシュートでは前代未聞となる402本を成功。成功率も45.4パーセントと文句なしのパフォーマンスでリーグを席巻。終わってみれば、NBA歴代最多勝記録を塗り替える73勝9敗。1995-96シーズンにシカゴ・ブルズが残した72勝10敗を見事上回り、史上最強チームという話題にも登場するセンセーションを巻き起こす。プレーオフではウエスト決勝でオクラホマシティ・サンダーに1勝3敗と追い込まれるも、ウォリアーズはそこから意地の3連勝で勝ち上がり、頂上決戦という大舞台へ返り咲く。

■キャバリアーズ

指揮官交代も何のその、圧倒的な実力差を見せつけてイースト制覇

 開幕前にモー・ウィリアムズ(元キャブスほか)を加えてシーズンに臨んだキャブスは、カイリー不在の期間を17勝7敗でしのぎ、12月末から8連勝を記録するなど上り調子にあった。しかし年明け以降、なかなか波に乗り切れず、ウォリアーズ戦で34点差の大敗を喫すると、デイビッド・ブラットHCと選手たちの不仲が取りざたされ、1月中旬にHC交代。アソシエイトHCだったタロン・ルーがHCに昇格して仕切り直しを図る。

12月中旬に復帰したカイリー(左)と、大黒柱レブロン(右)による強力タッグで白星を量産[写真]=Getty Images

 選手とのコミュニケーション能力に定評のあったルーHCは、キャブスを5連勝に2度も導くなどスムーズにフィット。イーストトップの57勝25敗でレギュラーシーズンを終えると、キャブスはプレーオフでも快調に飛ばした。イースト決勝でトロント・ラプターズに2敗を喫しただけの12勝2敗でファイナルに進出。レブロン、カイリー、ラブの“ビッグ3”そろい踏みで、キャブスはディフェンディング・チャンピオンであるウォリアーズへの挑戦権を手にしたのだった。

■GAME1~4

ウォリアーズが選手層の厚みを見せつけ、3勝1敗で王手をかける

 初戦はウォリアーズのベンチ陣が45得点を挙げるなど大爆発。ショーン・リビングストンの20得点を筆頭に3人が2ケタ得点をマークし、計10得点に終わったキャブスのベンチ陣を圧倒。レブロン、カイリー、ラブで計66得点を挙げたキャブスだったが、その他の選手で23得点しか奪えず、15点差の大敗で初戦を終える。

リビングストンは抜群の判断力と高い打点から放たれるジャンパーを武器に大活躍[写真]=Getty Images

 第2戦は、第1クォーターこそ21-19でキャブスが2点をリードしたものの、第2クォーター以降は56-91と大差をつけられ、33点差の大敗。ウォリアーズはグリーンが5本の長距離砲を含む28得点に7リバウンド5アシストと大暴れ。さらにカリーが18得点、トンプソンが17得点と続いた。また、ウォリアーズはこの日もベンチ陣が活躍。リアンドロ・バルボサ(元フェニックス・サンズほか)が10得点を挙げるなど、計40得点をマークし、自慢の選手層の厚さを見せつけた。

 会場をキャブスのホームに移した第3戦。前の試合で脳震とうとなったラブを欠くも、レブロンが32得点、カイリーが30得点と爆発。さらにJR・スミスが5本の3ポインターを含む20得点、トリスタン・トンプソンが14得点13リバウンドをマーク。ラブに代わって先発出場したベテランのリチャード・ジェファーソン(現デンバー・ナゲッツ)も9得点8リバウンド2スティールとハッスルし、ウォリアーズに30点差をつけてようやくキャブスがシリーズ初勝利。

 第4戦。2勝2敗のイーブンに持ち込みたいキャブスは、カイリーが34得点、レブロンが25得点、戦列復帰したラブが11得点をマークするも、カリーが後半だけで24得点、試合全体で7本の3ポインターを決めるなどゲームハイの38得点を稼ぎ出し、ウォリアーズがシリーズ突破に王手となる3勝目。キャブスはホームながら11点差で敗れてしまい、1勝3敗と、早くも窮地に追い込まれた。

カリーは第4Qだけで13得点をたたき出し、アウェーで貴重な1勝をもたらした[写真]=Getty Images

■GAME5~6

レブロンとカイリーが大暴れ! キャブスが意地の2連勝で逆王手!

 ウォリアーズが王手をかけて臨んだホームの第5戦。この日、グリーンの姿はなかった。ファイナル進出時に累積ファウル数で出場停止にリーチがかかっていたグリーンは、第4戦でフレグラントファウルの判定を下されていたからだった。さらに第3クォーター序盤、アンドリュー・ボーガットが左膝を負傷してしまい、シリーズ絶望。この日のウォリアーズは、リーグきってのリム・プロテクター2選手を欠いてしまう。

ウォリアーズの守備網をかいくぐり、高確率でショットを沈めたカイリー[写真]=Getty Images

 後がないキャブスは、ディフェンスにおける中心選手を失ったウォリアーズを積極果敢に攻め立てる。この試合、レブロンとカイリーがそれぞれ41得点と圧巻のパフォーマンスを披露。特にカイリーは、フィールドゴール24投中17本、成功率70パーセント以上という驚異的な成功率で得点を量産し、15点差をつけてキャブスが快勝した。

 第6戦でグリーンが復帰したウォリアーズは、カリーが30得点、トンプソンが25得点、バルボサが14得点と奮闘するも、キャブスの勢いを止めることができずに2連敗。ホームのキャブスはレブロンが2試合連続の41得点、カイリーが23得点、トンプソンが15得点16リバウンド、スミスが14得点と続き、14点差で勝利。これで両チームは3勝3敗となり、ウォリアーズのホーム、オラクル・アリーナで最終戦を迎えることとなった。

豪快なダンク、相手を戦意喪失させるほどの強烈なブロックを浴びせるなど大活躍を見せたレブロン[写真]=Getty Images

■GAME7

息詰まる激戦に終止符を打ったのはキャブスの“ビッグ3”

 軽々と100得点以上を挙げる得点力を誇る両チームだが、第7戦という重圧の中、ショット成功率は著しくダウン。この試合、フィールドゴール成功率はいずれも41.0パーセント未満と、ウォリアーズとキャブスによる最終決戦は、息詰まる肉弾戦に。

 そんな中、前半はホームのウォリアーズが49-42とし、キャブスから7点をリード。特に光ったのはグリーンだった。3ポインターを高確率で決めるなど要所で得点し、前半だけで22得点を挙げるパフォーマンスでチームを鼓舞。

この日のグリーンは絶好調。ゲームハイの32得点15リバウンドに加え、9アシストと大車輪の活躍を見せた[写真]=Getty Images

 それでも、第1クォーターは4点差以内、第2クォーターも7点差以内と、両チームは激しいクロスゲームを展開していた。

 第3クォーターに入ると、キャブスがカイリーを中心に追い上げる。このクォーター途中に10連続得点を奪うなど、カイリーは12得点を集中させ、キャブスに最大7点リードをもたらす。

 しかしウォリアーズも黙ってはいなかった。グリーンの3ポインターやリビングストンのショット、ハリソン・バーンズ(現ダラス・マーベリックス)の3ポインターが決まると、このクォーター残り4.0秒にはアンドレ・イグダーラのショットで76-75と逆転に成功する粘りを見せた。

カリーの3ポイントは14投中10本が空を切るも、最後まで打ち続けた[写真]=Getty Images

 そして迎えた運命の12分間。第4クォーターはとても重苦しいゲームとなった。勝利したチームがチャンピオンシップを手にすることができるという独特の緊張感が漂い、会場全体を重く包み込んでいった。

 序盤にレブロンのショットでキャブスが逆転するも、ウォリアーズは残り6分57秒でカリーの3ポインターが決まって同点にすると、その後トンプソンのショットなどでウォリアーズが4点リードを奪う。しかしレブロンがフリースロー3本を決めると、カリーのターンオーバーから得たポゼッションでレブロンが今度は3ポインターをねじ込み、残り4分53秒でキャブスを2点リードに導く。

 直後のポゼッションでトンプソンのショットが決まり、残り4分39秒にスコアが89-89で並ぶと、両チームはショットミスを繰り返し、得点を挙げられない展開に。

 だが残り2分を切った直後、ディフェンシブ・リバウンドを奪ったイグダーラが、カリーと共にファストブレイクを仕掛ける。リング下でボールを受け取ったイグダーラは、シリーズの決定打となるべくレイアップを放り込む——。

 しかし、イグダーラ、そしてウォリアーズは得点することができなかった。左斜め後方から超人的なスピードで追いついたレブロンが、見事なチェイスダウン・ブロックでイグダーラのショットを阻止。驚異の万能戦士レブロンがシリーズ敗退の窮地を救う。

試合終盤に超人的なスーパーブロックを見せたレブロン[写真]=Getty Images

 そして残り1分9秒から始まったキャブスのポゼッション。カイリーがカリーと1対1の状況を作ると、右45度付近からサイドステップでスペースを生み出し、鮮やかな3ポインターを放った——。

 カイリーの右腕から放たれたショットは綺麗な放物線を描き、鮮やかにリングへと吸い込まれた。残り53.0秒、キャブスが3点をリードし、ようやくスコアが動き出した。

カリーとの間に作ったスペースから、決勝弾となる3ポインターを沈めたカイリー[写真]=Getty Images

 3点ビハインドのウォリアーズが、チームの命運を託したのはもちろんカリー。するとキャブスのラブが、懸命なディフェンスでカリーを追い回し、シュートチャンスを与えない動きを見せる。グリーンに戻してからカリーが何とかショットを放つも、タフショットを強いて決めさせず、キャブスがリバウンドを奪ってボールキープ。

 キャブスはその後、カイリーのドライブに合わせたレブロンがファウルを奪い、フリースロー2本を獲得。1投目をミスするも、2投目を決めて4点差に。

 最後はカリーがショットを放つもミス、リバウンドを拾ったマリース・スペイツ(現オーランド・マジック)が拾ってショットを放つもリムに嫌われ、キャブスがチャンピオンシップを勝ち取った。

 1勝3敗という絶体絶命のピンチから、奇跡的な3連勝でフランチャイズ史上初となる優勝を成し遂げたキャブス。第7戦で勝利を引き寄せたのは、レブロンが決めた“The Block”、カイリーの“The Shot”、そしてラブによる“The Stop”という、ビッグ3によるスーパープレーの数々だった。クリーブランドを本拠地に置くアメリカ4大プロスポーツチームとしては、1964年のブラウンズ(NFL)以来、実に52年ぶりという歴史的快挙となった。

アウェーで行われた最終戦を制し、チャンピオンに輝いたレブロン(左)とカイリー(右)[写真]=Getty Images

優勝というかけがえのない経験を得たキャブス

 ファイナルMVPに輝いたのは、シリーズをとおしてリーグ最強の万能戦士であることを見せつけたレブロン。平均41.7分29.7得点11.3リバウンド8.9アシスト2.6スティール2.3ブロックと、主要5項目に加えてプレータイムでも両チームトップの成績を残し、自身3度目の優勝を、3度目のファイナルMVPと共に祝福。

 スーパースターとしての宿命なのか、レブロンには常に批判がつきまとっていた。それでも、レブロンはバスケットボールで勝者となるべく毎試合コートに立ち続け、ベストを尽くしてきた。だからこそ、自身3度目となる優勝は、会心の勝利となったに違いない。「俺は血と汗と涙をゲームに注ぎ込んできた」と語ったレブロンの言葉はまさにそのことを表している。もっとも、「(自身を批判する)人々は、俺がどれだけ多くのことをコート上でこなすことができるのか、まだ疑いたいようだ」とレブロンは続けた。

 とはいえ、このシリーズで見せたプレーの数々は、レブロンこそが史上最強のトータル・パッケージだということを体現していたと言っていいはずだ。

優勝決定後、コートにひれ伏したレブロン。14年夏にキャブスへ帰還し、2年で故郷に優勝をもたらした瞬間だった[写真]=Getty Images

 また、第7戦で決勝弾を沈めたカイリーは「あのショットで僕の人生は大きく変わった。皆が僕のことを認めてくれたと思う」と語っており、選手としての評価を格段に上げたのは言うまでもない。

 レブロン、カイリー、ラブを中心に、キャブスは苦難の末に優勝を勝ち取ることができたことで、特に選手たちはかけがえのない経験を得たのだった。

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