4月15日(現地時間14日)から、計16チームによる今シーズンの王座を懸けた激闘、「NBAプレーオフ2018」が幕を開けた。バスケットボールキングでは、プレーオフ出場チームやシリーズ勝敗予想に加え、これまでのプレーオフにおける名シーンや印象的なシリーズ、ゲームなども順次お届けしていく。
<プレーオフ特別企画35>
LOOK BACK AT FINALS Round.3 ~ファイナル振り返り③~
2017年NBAファイナル
ゴールデンステート・ウォリアーズ×クリーブランド・キャバリアーズ
今年のNBAファイナルへと勝ち進んできたのは、激戦を潜り抜けてきたゴールデンステート・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズ。昨年、NBA史上初となる3年連続同カードという記録を樹立した両チームが、またしても頂上決戦の舞台に立った。ここでは、ウォリアーズとキャブスによる直近3年のファイナルを1つずつ振り返ってみたい。
■ウォリアーズ
KD加入で攻防両面に凄みを増し、2年ぶりの優勝へとひた走る
16年のファイナルでキャブスに敗れたウォリアーズは、同年夏に戦力アップを断行した。まずはミルウォーキー・バックスとのトレードで201センチのシューティングガード、パトリック・マコーを獲得すると、フリーエージェント(FA)だったベテランフォワードのデイビッド・ウェスト、センターのザザ・パチューリアと契約を結ぶ。そして極めつけは、リーグ屈指のスコアラー、KDことケビン・デュラント加入だった。16年ファイナルを見ていたデュラントは、「俺ならこのチームを助けることができる」と確信し、オクラホマシティ・サンダーからウォリアーズへの移籍を決断。
これにより、ウォリアーズはステフィン・カリーとクレイ・トンプソン、そしてデュラントという、リーグでも10本の指に入るほどのシューターをそろえることに成功。ドレイモンド・グリーンと合わせて、4人ものオールスター選手を擁することとなった。開幕前はスター選手同士によるエゴの衝突など不安要素を挙げる者もいたが、いざ開幕するとその心配は杞憂に終わった。
開幕18試合で12連勝を含む16勝2敗のスタートダッシュに成功すると、ウォリアーズは白星先行でリーグトップを快走。17年2月末にデュラントが負傷により戦線離脱するも、カリーを中心に3月中旬から怒濤の14連勝と突っ走り、リーグトップの67勝15敗でレギュラーシーズンを終える。
カリー、デュラント、トンプソンの3選手が平均22得点以上を挙げるバランスの良さを見せつけると共に、チームとしてもフィールドゴール成功率で49.5パーセント、平均30.4アシストはリーグトップと、流麗なチームバスケットボールを展開。さらに、いずれもリーグ最多となる平均9.6スティール6.8ブロックを残し、ディフェンス面でも相手チームに脅威を与えた。プレーオフに入ってからも絶好調で、12戦無敗でウエストを勝ち上がり、前年のリベンジを果たすべく、ファイナルへと勝ち進んだ。
■キャバリアーズ
ディフェンス面に不安を抱えるも、わずか1敗でイーストを制す
ベテランシューターのマイク・ダンリービー(元インディアナ・ペイサーズほか)を加えるなど、マイナーチェンジを行ったキャブスも、開幕から好調を維持。例年どおりにイーストトップ争いを演じ、17年1月にはダンリービーとモー・ウィリアムズ(元キャブスほか)とのトレードで、アトランタ・ホークスからシャープシューターのカイル・コーバーを獲得。レブロン・ジェームズとカイリー・アービングの周囲に有能な3ポイントシューターたちを配置したキャブスは、自慢の攻撃力で対戦相手をねじ伏せていく。
ところが、シーズン終盤になってディフェンス面が崩壊。レギュラーシーズン最後の11試合を4勝7敗で終えたため、51勝31敗でフィニッシュ。イーストトップの座をボストン・セルティックス(53勝29敗)に譲ることとなった。
もっとも、連覇が懸かったプレーオフに入ると、キャブスは再び連勝街道をまい進。1回戦ではペイサーズ、イースト準決勝ではトロント・ラプターズをそれぞれスウィープで下し、セルティックスとのイースト決勝は4勝1敗で突破。3ラウンドを戦うも、わずか1敗で頂上決戦までたどり着いた。
■GAME1~2
ウォリアーズが誇る爆発的なオフェンスを前にキャブスが沈黙
初戦はデュラントとカリーで計66得点、第2戦ではデュラントが33得点、カリーが32得点、トンプソンが22得点と続き、いずれも19点差以上をつけてウォリアーズが圧勝。
レブロン、カイリー、ラブがいずれも20得点前後を挙げたものの、キャブスがこの2試合でリードを奪った時間はいずれも3分少々と、ゲームの大部分でウォリアーズに主導権を握られ、大敗を喫してしまう。
■GAME3
キャブス初勝利のチャンスをデュラントがほぼ独力で打ち砕く!
ホームに戻ったキャブスは、レブロンがゲームハイとなる39得点、カイリーが38得点を挙げるなど、自慢のオフェンス力を武器にウォリアーズへ真っ向勝負。第3クォーター終了時点で94-89と5点をリードする。
最終クォーターに入り、ウォリアーズが何度も僅差まで追い上げるも、そのたびに突き放し、シリーズ初勝利を飾るべく、追加点を挙げていった。残り3分9秒、JR・スミスの3ポインターが決まり、113-107と、キャブスが6点差をつけてゲームを締めにかかった。
ところが、スミスやラブ、カイリー、そしてレブロンのショットミスが続くキャブスへ、ウォリアーズの2大巨頭が襲い掛かる。
残り2分19秒でカリーがショットを決めると、残り1分15秒でデュラントも得点し、2点差まで追い上げると、コーバーがミスしたショットのリバウンドを奪ったデュラントがそのままフロントコートまでドリブルで持ち込み、躊躇することなくレブロンの頭上から長距離砲を放った——。
これが見事に決まり、残り45.0秒でウォリアーズが114-113と逆転。その直後にカイリーが放った3ポイントシュートはリングに嫌われ、ファウルで得たフリースローをデュラントが2投とも着実に決めて7連続得点。
レブロンが放った3ポインターも空を切ってしまい、最後はカリーが2本のフリースローを沈めて決着。最終スコア118-113とし、ウォリアーズが3連勝で一気に王手をかけた。
■GAME4~5
キャブスが一矢報いるも、ウォリアーズの勢いは止まらず5戦で決着
追い込まれたキャブスは第4戦。第1クォーターだけで49得点を挙げる大爆発を見せ、前半だけで86-68と、ウォリアーズを圧倒。この試合、16秒間のタイスコアこそあったものの、それ以外の時間帯すべてでキャブスがリード。137-116で完勝し、キャブスがようやくシリーズ初白星。
デュラントに35得点を許したものの、カイリーが7本の3ポインターを含む40得点、レブロンが31得点10リバウンド11アシストのトリプルダブル、ラブが6本の3ポイントシュート成功を含む23得点、スミスが15得点と活躍。チーム全体で45投中24本もの長距離砲を成功させ、ウォリアーズに一矢報いた。
ウォリアーズのホームに会場を移して行われた第5戦。キャブスは第1クォーターで37-33とリードを奪うも、ウォリアーズが第2クォーターに38-23とキャブスからリードを奪って圧倒。第3クォーターで33-27とキャブスが追い上げるも、ウォリアーズ5点リードの98-93で迎えた最終クォーターでデュラントやカリー、トンプソンにアンドレ・イグダーラと、多方面から得点を許してしまい、最終スコア129-120でウォリアーズに軍配。
キャブスはレブロンが41得点、カイリーが26得点、スミスが8投中7本の長距離砲を決めて25得点、トリスタン・トンプソンが15得点を挙げたものの、5試合でファイナルを終えることとなった。
2年ぶりに優勝を決めたウォリアーズは、デュラントが20投中14本ものショットを決めて39得点、カリーが34得点、イグダーラがベンチから20得点を挙げるなど、計5選手が2ケタ得点を奪取。
これにより、ウォリアーズは前年のファイナルで3勝1敗から屈辱的な3連敗を喫して敗れた雪辱を果たした。
キャリア10年目でようやくつかんだ優勝
NBA史上初となる3年連続同カードとして注目を集めた17年ファイナル。長く続く激闘というシナリオを描いていたであろうメディアやファンの思いを断ち切ったのは、ファイナルMVPを獲得したデュラントだったことは間違いない。
5試合すべてで30得点以上を挙げたデュラントは、シリーズ平均35.2得点に加え、8.2リバウンド5.4アシスト1.0スティール1.6ブロックと好成績を記録。さらに、フィールドゴール成功率55.6パーセント、3ポイントシュート成功率47.4パーセント、フリースロー成功率でも92.7パーセントと、アンストッパブルなスコアリングマシンと化し、キャブスから大量得点を奪っていった。
キャリア10年目にして初の優勝となったデュラントは、カリーやトンプソン、グリーンらを押しのけ、シリーズでベストなパフォーマンスを披露。誰もが納得できるインパクトを残し、チャンピオンの座に就いたのである。
12年にサンダーのエースとしてファイナルに出場したデュラントは、レブロン率いるマイアミ・ヒートに1勝4敗で敗北し、苦々しい経験をしていた。その後ファイナルへ舞い戻ることができなかっただけに、デュラントは優勝を長年追い求めていたに違いない。ウォリアーズ加入1季目にしてチャンピオントロフィーをつかんだデュラントは、第5戦終了後にこんな言葉を残している。
「ここ2日間、眠ることができなかった。俺は(優勝を)切望していた。とても神経質になっていたんだ。だから、ゲームのすべてに自分の持っている力を注ぎ込み、(優勝できると)信じてやってきた」。
一方、キャブスではレブロンがシリーズ平均33.6得点12.0リバウンド10.0アシストと、NBAファイナル史上初となる“平均トリプルダブル”を達成。カイリーも平均29.4得点と、すばらしいプレーを幾度も見せていた。
それでも、デュラントを加えたウォリアーズには惨敗。「彼(デュラント)が入ったことで、ウォリアーズはまったく別のチームになっていた」というレブロンの言葉が、シリーズ全体の様相を最も的確に言い表していたと言っていいだろう。
シリーズ終了後、デュラントはレブロンに対して「これで俺たちはファイナルで1勝1敗のタイになった。だからもっと対戦していかなきゃね」という言葉を送っていた。
現在、ウォリアーズとキャブスは、4年連続の顔合わせとなった頂上決戦を戦っている。第2戦を終えてウォリアーズが2戦無敗としており、6月7日(同6日)に第3戦が行われる。
キャブスとしては、第3戦に敗れてしまえばシリーズ制覇まで1敗も許されない危機に陥ってしまうため、何としてでも勝利したい。一方のウォリアーズとしても、直近2年のファイナルで第3戦を制したチームがチャンピオンとなっていることから、2連覇に向けて一気に突き進みたいところだ。