リーグを代表するエースからロールプレーヤーに転身
今夏制限なしフリーエージェント(FA)となったビンス・カーターは、キャリア20年を誇る現役最年長の41歳。来年の1月下旬には42歳を迎えるが、カーターは昨季所属したサクラメント・キングスを去り、新天地としてアトランタ・ホークスを選んだ。
カーターは1998年ドラフト1巡目全体5位でゴールデンステート・ウォリアーズに指名されると、金銭と共にトロント・ラプターズへトレード。交換相手はノースカロライナ大のチームメート、アントワン・ジェイミソン(元ウォリアーズほか)だった。
ロックアウトにより50試合の短縮となった98-99シーズン。カーターは豪快なダンクでリーグを席巻し、強烈なインパクトを残すと共に、ラプターズを23勝27敗のイースタン・カンファレンス10位へと導く殊勲者となった。そして平均18.3得点5.7リバウンド3.0アシスト1.1スティール1.5ブロックとマルチな成績を残し、ポール・ピアース(元ボストン・セルティックスほか)やジェイソン・ウィリアムズ(元キングスほか)らを上回る得票数で新人王を獲得。
その後はジャンパーや3ポイントシュートにも磨きをかけ、平均20得点級のスコアラーとして活躍。これまでのキャリアではラプターズをはじめ、ニュージャージー・ネッツ、オーランド・マジック、フェニックス・サンズ、ダラス・マーベリックス、メンフィス・グリズリーズ、キングスでプレー。
キャリア途中からはエースや主力の座を若手選手に譲り、カーター自らはチームを裏方から支えるロールプレーヤーとして貢献。若手のメンター(助言者)としても貴重な役割を果たしてきた。
今季終了後に引退が濃厚とカーターが告白
そのカーターが8月3日(現地時間2日)、『Jr. NBA World Championships』のカンファレンス・コールに登場し、メディアからの質問に応じた。
カーターはマジック在籍時の2010年にカンファレンス・ファイナル出場を果たしたが、これまでのキャリアで優勝はもちろん、NBAファイナルの舞台にさえ立てていない。だが、チャンピオンリングを追い求めることはカーターがプレーするモチベーションではないという。
「僕はそれ(優勝すること)がそこまで重視されていない時代の人間なんだ。だからそのスタイルが僕に沁み付いてる。もし今引退したとしても、まったく問題はない。僕にとってはね」。
41歳のカーターが現役続行を決断した理由。それはシンプルなものだった。
「僕はまだゲームでプレーしたいんだ。(プレーできる)時間があるのなら、僕はそれが欲しいと思ってる。それは(バスケットボールに対する)愛なんだ。逃れることなんてタフなこと。それに僕は(ゲームに対して)今でも情熱を持ってる」。
一方で、カーターは今季終了後に「90パーセント以上の確率で引退するだろう」と語っていた。そして引退後はテレビやラジオの放送に携わりたいと口にしていた。
その第一歩として、カーターは来週オーランドで行われる『Jr. NBA World Championships』でゲームアナリストを務めることになるという。
今季のホークスはルーキーのトレイ・ヤング、トーリアン・プリンスやジョン・コリンズといった若手選手たちを軸に再建していくこととなる。カーターはその若手選手たちを正しい方向へと導くべく、メンターとしてチームに尽くすことだろう。
そして、もし今季限りでカーターのプレーを見ることができないとなれば、この男の勇姿を目に焼き付けるべく、世界中から大勢のファンが詰めかけるに違いない。