トリアーのダンクでニューヨークによみがえったスタークスの記憶
昨季アリゾナ大で平均18.1得点を残したものの、今年のNBAドラフトで指名されなかった男が、ニューヨーク・ニックスでNBAデビューを果たした。
男の名はアロンゾ・トリアー。196センチ92キロのシューティングガードは、今年7月にニックスと2way契約を締結。ニックスの一員としてサマーリーグに4試合出場し、平均17.0得点5.5リバウンド3.3アシスト1.3スティールをマーク。
その後プレシーズンでは5試合に出場して平均23.0分14.2得点2.2リバウンド1.6アシストをマークすると、アトランタ・ホークスとの開幕戦から出場。約26分のプレータイムで15得点4リバウンド2ブロックを残し、勝利に貢献した。
何よりも強烈だったのは、第3クォータ-終了間際のプレーだ。トップ・オブ・ザ・キー付近でボールを受け取ったトリアーは、リムへアタックして豪快なワンハンドダンクをたたき込んだ。ホームのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)に集まった大勢の観客が盛り上がったのは言うまでもない。
そしてそのダンクに、ニックスのファンやニューヨークの地元メディアはある男の姿を思い浮かべた。ドラフト外でNBA入りを果たし、1990年10月上旬にニックスと契約後、エネルギッシュなプレーで大人気を博したレジェンド、ジョン・スタークス(元ニックスほか)である。
スタークスは190センチ81キロと筋骨隆々な肉体を誇ったシューティングガード。持ち前のタフなプレーで徐々に出番を増やしていき、ニックスに不可欠な選手へと成長。93年にオールディフェンシブセカンドチーム、94年にはオールスターにも選出されるなどスター選手の仲間入りを果たした。
プレーオフでも数々の名シーンを残したスタークスだが、最も印象的なのはブルズ相手に見せたダンクだろう。
93年のイースタン・カンファレンス・ファイナル第2戦。ニックス3点リードで迎えたこの試合終盤に、スタークスが右ウイングでパトリック・ユーイング(元ニックスほか)とのピック&ロールをするフェイクを見せてベースラインへドライブ。そこからホーレス・グラントとマイケル・ジョーダン(共に元ブルズほか)を交わして左手1本で強烈なワンハンドダンクをたたき込んだ。このプレーはスタークスにとってもキャリアの中でベストと言っても過言ではないプレーだった。
ニックス史上屈指の人気者スタークスと肩を並べるための最初のステップとは?
残念ながら、この時スタークスが見せたダンクを96年生まれのトリアーはリアルタイムで見てはいない。だが、11月7日(現地時間6日)に『NEW YORK POST』へ掲載された記事の中で、トリアーはこのように語っている。
「僕は彼の映像を何度か見てきた。肝の据わった選手で、タフな男だった。ほかの選手たちと共に僕が夢中になった選手。熱く、競争心旺盛だったよね」。
もちろん、デビューシーズンを送るトリアーとレジェンドのスタークスを現時点で比較するのはさすがに酷だろう。トリアーもその点は理解しており、このように続けた。
「(スタークスとの類似点について)僕にはわからないね。僕には彼と比較され、似ている部分があるのかどうかわからないんだ。その判断はほかの人たちに任せるよ。僕は自分のプレーをしていくだけさ。でもニックス史上最高の1人である選手と比較されるなんて、本当にすごいことだよね。彼はここニューヨークですばらしいことをやってきた。だからすごく光栄なこと」。
トリアーはここまで平均23.4分11.5得点2.6リバウンド1.1アシストを残している。2way契約のため、ニックスの選手たちと共にプレーする期間は限られているのだが、このままローテーションをキープすることができれば、通常の契約を結ぶことができるかもしれない。
今季中にその日が来るのであれば、スタークスとトリアーを比較する声はますます増えてくるに違いない。