NBA指折りのスーパースターがゲームライクなメニューをこなす選手たちを鼓舞
8月5日、東京医療保健大学世田谷キャンパスで行われた「Why Not? Summer Camp」に、NBAきってのスーパースター、ラッセル・ウェストブルック(ヒューストン・ロケッツ)がサプライズで登場した。
3シーズン連続で平均トリプルダブルという前代未聞の金字塔を記録中のウェストブルックは、2年連続2度目の来日。会場では同大の恩塚亨HC(ヘッドコーチ)指導の下、福岡大学附属大濠高校(福岡県)と市立船橋高校(千葉県)の選手たちがキャンプのメニューをこなす中、ひときわ大きな歓声と共に現れたウェストブルックは「皆が汗だくになってハードにやってくれていて、すごく献身的にやってくれているなぁ、というのが伝わってきました」と口にし、テクニカルクリニックを開始。
コートの3/4のスペースを利用し、ジャンプボールを争うように両校の選手たちがボールを奪い合う。するとボールを手にした高校が3対3のファストブレイクで攻めたてて、もう片方の高校の選手たちがディフェンスするというゲームライクなメニューを行い、ウェストブルックは最初のボール出しを担当。すべてのポゼッションで選手たちを鼓舞しながら、フィニッシュまで持ち込む参加選手たちを見守っていた。
「本当にがむしゃらで相手をなぎ倒すぐらいの勢い」でプレーしていた高校時代
福大大濠高校と市立船橋高校による5対5のミニゲームでは、ウェストブルックが前者、恩塚HCが後者のコーチを務めることに。ハーフタイムで「一番大事なのは楽しむこと」と語ったように、ウェストブルック本人が一番楽しんでいるかのようにベンチから福大大濠の選手、好プレーを見せた市立船橋の選手たちを激励。前半終了間際に福大大濠のショットが決まると、同高のベンチはウェストブルックを筆頭に大はしゃぎ。
リーグ屈指のスーパースター、ウェストブルックの応援もあり、ゲームは36-16で福大大濠に軍配。その後は両校の選手たちがウェストブルックへ質問をするトークセッションへ。
高校時代について聞かれると、「思い出すと本当にがむしゃらすぎて、相手をなぎ倒すぐらいの勢いでプレーしていました」と返答。電光石火のクイックネスでリング下へ強行突破し、NBAでプレーする屈強なディフェンダーたちをはねのけて得点あるいはアシストを量産する現在のウェストブルックを思わせるコメントを残した。
その一方で、「尊敬する選手は誰ですか?」という質問に対しては「敵は全員に対してリスペクトしている」と口にし、ライバルチームのみならず、NBAでプレーする対戦相手への敬意を示していた。
ウェストブルックが尊敬しているのはNBA史上屈指のスーパースター、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)とコービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)。「ジョーダンやコービーというような人たちを本当に尊敬しています。自分がどういった選手になるかにおいて、本当に強い影響を与えてくれた選手たちだと思っています」という言葉を残している。
また、ウェストブルックは「僕のモチベーションは最高の選手になること」と明かしており、試合を迎えるまでの準備として「いい食事といい睡眠が僕に活力を与えてくれる」と語り、自身の無尽蔵なエネルギーの理由を述べた。
「ベストな選手になれるよう、絶対にその歩みを止めないでください」
シーズンMVPを1度、オールスターMVPを2度も獲得した実績を持つウェストブルックは、ほんの数年前までは達成不可能とまで言われていた平均トリプルダブルを成し遂げ、昨季まで3シーズン連続で達成。190センチ90.7キロと、ポイントガードとしては恵まれた体格ながら、3シーズン連続で平均2ケタのリバウンドを奪っており、驚異的な成績を残し続けていると言っていい。
そんなウェストブルックのモットーと言えば、やはり“Why Not?”(なんでできないんだ?)。「その精神はどうやって生まれたんですか?」という質問をされると「ここにいる皆さんと同じような年齢、高校生の頃です。その時に自分と友だちが作り上げたモットーです。自分たちは貧困だとか、すごく困難な環境にありました。その中からでも、どうやったら前進できるか、そしてどうすればチームにいいことができるか、ということを考えるうえで、この“Why Not?”が生まれました」と自身のモットーのルーツを明かした。
トークセッション終了後、ウェストブルックはキャンプの会場に集まったファンへ「ここに来てくれて、本当にありがとうございます」と述べると、キャンプに参加した両校の選手たちへ「自分にとってできる限りベストな選手になれるよう、引き続き取り組んでほしいと思いますし、絶対にその歩みを止めないでください。一番大事なのは楽しむことだと思うので、その気持ちを忘れずに、これからも頑張ってください」という熱のこもったメッセージ。
参加した両校の選手たちによるミニゲーム中、ベンチにいる選手たちと無邪気な笑顔を見せながら楽しんでいたウェストブルックだったが、キャンプで汗を流した選手たちを前に、最後は真剣なまなざしで熱いエールを送り、会場をあとにした。
文=秋山裕之