2019.08.04

2年連続2度目の来日を控えるラッセル・ウェストブルックの昨季をプレーバック!

キャリア11シーズン目を終えたウェストブルック[写真]=Getty Images
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 8月5日から6日にかけて、今夏オクラホマシティ・サンダーからヒューストン・ロケッツへ電撃移籍したラッセル・ウェストブルックが来日し、「Why Not? Summer Camp」を含む複数のイベントに登場する。

 ここでは、2年連続2度目の来日を果たすウェストブルックの昨季(2018-19シーズン)を振り返っていきたい。

■プロフィール
本名:ラッセル・ウェストブルックJr.
生年月日:1988年11月12日(カリフォルニア州ロングビーチ)
年齢:30歳
身長/体重:190センチ/90.7キロ
所属:ヒューストン・ロケッツ
背番号:0
ポジション:ポイントガード
NBAキャリア:今季で12年目
高校:レウジンゲル高(カリフォルニア州)
大学:UCLA(在籍は2年)
ドラフト:2008年1巡目全体4位指名(シアトル・スーパーソニックス)
Twitter:@russwest44(フォロワー数は約615万人)
Instagram:@russwest44(フォロワー数は約1,373万人)

■ウェストブルックが残してきたNBAにおける功績
レギュラーシーズンMVP:1回(2017年)
オールスターMVP:2回(2015,16年)
オールNBAチーム選出:8回(うちファーストチームは2回)
オールスター選出:8回(2011~13,15~19年)
得点王:2回(2015,17年)
アシスト王:2回(2018,19年)

■ウェストブルックが持つ唯一無二の偉業
1シーズンにおけるトリプルダブル達成数:42回(2016-17シーズン)
シーズン平均トリプルダブル達成数:3回(2016-17~18-19シーズン)
連続トリプルダブル達成数:11試合(2018-19シーズン)
ダブルトリプルダブル達成数:1回(史上2人目/2018-19シーズン)

■アメリカ代表における功績
オリンピック金メダル:1回(2012年ロンドンオリンピック)
FIBAバスケットボール世界選手権*金メダル:1回(2010年トルコ大会)
*現FIBAバスケットボール ワールドカップ

■レギュラーシーズン
73試合出場、平均36.0分22.9得点11.1リバウンド10.7アシスト1.9スティール

後半戦でチームは失速も、前代未聞の11試合連続トリプルダブルを達成

 昨年9月に右膝を手術したことで、トレーニングキャンプからチームに合流できなかったウェストブルック。ゴールデンステイト・ウォリアーズとの開幕戦を前に、『The Athletic』へ「チームメートたちとゲームでプレーできることにワクワクしている。自分にとって初のレギュラーシーズンの試合が待ちきれないよ」と口にしていたものの、開幕2試合を欠場することとなった。

 昨年10月22日(同21日)のサクラメント・キングス戦で初出場したウェストブルックは、早速32得点12リバウンド8アシストをたたき出すも、チームは黒星を喫してしまい、開幕4連敗。それでも、チームはポール・ジョージ(現ロサンゼルス・クリッパーズ)を中心にその後の11試合で10勝を挙げて軌道修正に成功。

相手チームのリングへ情け容赦のないダンクをたたき込むウェストブルック[写真]=Getty Images

 だがウェストブルックは11月上旬に足首を痛めたこともあり、6試合を欠場。チームはその期間に5勝1敗を記録し、復帰した試合でウェストブルックが29得点13リバウンド7アシストを挙げるもチームは連勝が3でストップと、空回りしていた。

 ところが、翌戦で昨季初のトリプルダブル(11得点11リバウンド13アシスト)で汚名返上。この試合も含めた4試合のうち3試合で、ウェストブルックは真骨頂であるトリプルダブルを記録して勝利に貢献すると、チームも白星先行で勝ち進んでいく。

 12月6日(同5日)のブルックリン・ネッツ戦では、ジョージが第4クォーターだけで記録した25得点を含むゲームハイの47得点、ウェストブルックは21得点15リバウンド17アシストの大暴れで大逆転劇を演出。

 この試合で通算108回目のトリプルダブルに到達したことで、ウェストブルックはジェイソン・キッド(元ダラス・マーベリックスほか/現ロサンゼルス・レイカーズAC)の107回を突破し、歴代単独3位へと浮上。「キッドのような偉大な選手の記録を上回ることができるなんて、夢にも思わなかった。ただただ光栄なことさ」とウェストブルックは『AP』へ振り返っていた。

殿堂入りしたポイントガード、キッド(右)を抜いて歴代3位に浮上したウェストブルック(左)[写真]=Getty Images

 ちなみに、昨季終了時点でウェストブルックはトリプルダブル達成数を138回まで伸ばしており、アービン“マジック”ジョンソン(元レイカーズ)と並んで歴代2位タイ。今季絶望になるほどの長期欠場がない限り、今季中に歴代単独2位へと躍り出ることだろう。

 2019年に入ると、ウェストブルックはトリプルダブルのペースを一気に引き上げていく。1月23日(同22日)のポートランド・トレイルブレイザーズ戦を皮切りに、怒濤の11試合連続トリプルダブルを達成。伝説の巨人ウィルト・チェンバレン(元フィラデルフィア・ウォリアーズほか)の記録を抜き去り、NBA史上トップの快記録を打ち立てている。サンダーもその間、9勝2敗という好戦績を残し、ウエスタン・カンファレンス3位、リーグ全体でも6位の36勝19敗(勝率65.5パーセント)でオールスターブレイクへ。

 5年連続通算8度目となったオールスターでは、ロースターを決めるドラフトでベン・シモンズ(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)とトレードされるという珍事がある中、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)がキャプテンを務める「TEAMヤニス」の一員として出場。約19分コートに立ち、17得点4リバウンド3アシストを残した。

 ウェストブルックはオールスター後もトリプルダブルを頻発し、サンダーをけん引。特に圧巻だったのは4月3日(同2日)のレイカーズ戦。2連敗で迎えたこの試合、ウェストブルックは20得点20リバウンド21アシストに3スティールをマーク。1968年にチェンバレンが残して以来、約51年ぶりに3項目で20以上を記録する“ダブル・トリプルダブル”を達成。

 歴史的な快挙の裏には、ウェストブルックのモチベーションを飛躍的に高めた事件があった。4月1日(同3月31日)に友人のニプシー・ハッスル(ラッパー/享年33)が銃殺されるという悲劇である。

「ニプシーに捧げる!」と『ESPN』へ開口一番に語ったウェストブルックは、「この試合をプレーできて最高だ。でもこれは自分のためじゃない。ニプシーのためだったんだ」と明かすと、こう続けた。

「安らかに眠ってくれ、ニプシー。俺はただ、コートに出てハイレベルに競い合うことができて感謝している。ここにいるチームメートたちとプレーできてうれしいし、大好きなゲームをプレーすることができて感謝しているし、こんな記録を達成できて恐れ多いね」。

 ところが、オールスター後の27試合でサンダーは13勝14敗(勝率48.1パーセント)と失速。オフェンス、ディフェンスの両面で数字がダウンするなどウエスト8位、リーグ全体でも16位と不振に陥り、ウエスト6位の49勝33敗でレギュラーシーズンをフィニッシュ。

 戦力充実で挑んだサンダーだったが、チーム成績は期待を裏切る結果に。それでも、ウェストブルックは2シーズン連続でアシスト王、トリプルダブルでリーグトップの34回に立ったほか、3シーズン連続で平均トリプルダブル到達という金字塔を打ち立てた。

ウェストブルック(右)とジョージ(左)は個人成績では上々の数字を残すも、チーム成績と比例せず[写真]=Getty Images

■プレーオフ ファーストラウンド(対ブレイザーズ)
全5試合出場、平均39.5分22.8得点8.8リバウンド10.6アシスト1.0スティール

リラードとマッカラムに翻弄されて5戦で決着、3年連続で1回戦敗退に

 戦前の下馬評では、ジョージという強烈なスコアラーと爆発力のあるウェストブルックがいることで、下位シードのサンダーがアップセット可能、という声が多かった。両チームとも一昨季のプレーオフで1回戦負けしているだけに、同じノースウェストディビジョン同士のカードは激戦の連続と予想する声もあった。

リラード(中央)やマッカラムをスローダウンできず、わずか5戦でシリーズは幕を閉じた[写真]=Getty Images

 ところが、終わってみればブレイザーズが4勝1敗で早々に決着。絶好調デイミアン・リラードが平均33.0得点に6.0アシスト2.4スティールの大暴れ。第5戦では50得点に加えてサンダーに引導を渡す劇的なブザービーターをヒット。さらにCJ・マッカラムが平均24.4得点5.4リバウンド4.0アシスト、エネス・カンター(現ボストン・セルティックス)が平均13.2得点10.2リバウンドと奮闘。

 サンダーではジョージが平均28.6得点8.6リバウンド3.6アシスト1.4スティール、ウェストブルックが平均22.8得点8.8リバウンド10.6アシスト1.0スティールを奪うも、ショットの精度が低かったことは否めず。第3戦で一矢報いたものの、これで3年連続の1回戦敗退という屈辱的な終わりとなった。

シリーズ全体でフィールドゴール成功率36.0%、3ポイント成功率32.4%と不発に終わったウェストブルック[写真]=Getty Images

■シーズン終了後

ロケッツへ電撃移籍し、会見で「チャンピオンシップ獲得がゴール」と言及

 3シーズン連続で平均トリプルダブルを達成したウェストブルック、そして昨季自己最高の個人成績をマークしたジョージによる超強力デュオは、結成2シーズン目となった昨季もプレーオフ1回戦の壁を突破することができなかった。

 7月1日(同6月30日)のフリーエージェント(FA)交渉解禁後、サンダーはアレック・バークス(合意するもジョージ移籍を機にウォリアーズ入り)、マイク・マスカーラを加え、ナーレンズ・ノエルとも再契約。今季も両輪を中心に戦うかと思われたやさき、サンダーは約1週間という短期間にジョージ、そしてウェストブルックをトレードで手放し、複数のドラフト1巡目指名権を手にして再建へ乗り出すことに。

 ジョージは代理人を通じてトレードのオファーをしていたと現地メディアが報道。昨季のファイナルMVPカワイ・レナードと共にクリッパーズで優勝を目指すことへと方向転換。

 一方のウェストブルックも、10歳の頃から友人で、サンダーで3シーズンを共にプレーした戦友ジェームズ・ハーデンが君臨するロケッツへ電撃移籍。ウェストブルックとジョージは今季、他チームのユニフォームを身にまとい、ライバルチームとして戦うこととなったのである。

リーグを代表するベテラン司令塔クリス・ポール(左)と複数のドラフト指名権とのトレードで、ウェストブルック(右)はロケッツへ移籍[写真]=Getty Images

 7月26日(同25日)にロケッツの一員として初となる会見に臨んだウェストブルックは、複数の現地メディアが集まる中、こう語っている。

「勝利していくためには、自分のゲームにおけるいくつかの部分でどんな犠牲もじさない覚悟が必要になるだろう。ジェームズと僕はそれを理解しているのさ。それに僕らには、チャンピオンシップを勝ち取るという共通のゴールがある。何をすべきか、僕らは分かってるよ」。

 ハーデンとウェストブルックは、シーズンMVPを獲得したことがあるほどの実力者。両選手ともボール独占タイプの選手ではあるものの、昨季平均36.1得点をたたき出し、2シーズン連続の得点王となったハーデンがロケッツのフランチャイズプレーヤーであることに変わりはない。

 そのため、今季のウェストブルックは、ボールを保持する時間帯が減少することが確実。ハーデン不在の時間帯にはボールハンドラーとしてプレーするだろうが、ハーデンと共にプレーする多くの時間帯において、ウェストブルックはハーデンのサポート役に回ることが予想される。

 昨季のウェストブルックは3ポイントを平均1.6本沈めているものの、成功率はわずか29.0パーセント。フリースロー成功率は65.6パーセントと、自己ワーストに終わっており、3ポイントを多用するロケッツのシステムにフィットするかどうか疑わしい。

 それでも、ウェストブルックは「僕は正しくフィットするだろうね。フロアのスペースを広げることで、アタックやペネトレイト、(シューター陣へ)キックアウトする機会を僕にもたらしてくれる。ディフェンス面で言えば、スウィッチしてマッチアップをガードし、リバウンドを高いレベルで奪うことができると思ってる。そうすることによって、ファストブレイクをリードできると思う。だからすごく楽しみにしている」と自信をのぞかせている。

NBA入りから11シーズンをプレーしたサンダーへ別れを告げ、新天地ロケッツで今季を迎えるウェストブルック[写真]=Getty Images

 驚異的な身体能力に加えて、底知れぬ闘争心とエナジーを持つウェストブルックが、ロケッツでハーデンと共にプレーすることを選択した最大の理由、それはチャンピオンシップを勝ち取ることにほかならない。

「僕は一緒にプレーすることについて気にしちゃいないし、ジェームズもそうだと思う。それに僕はボールを持っていない状態でもプレーできる。ボールにたくさん触れなくても、ゲームの中でインパクトを与えることができるからね。ボールをたくさん持たなくても、フロアでいろんなことができるし、(昨季までよりも)勝利するチャンスがあると思ってる」とウェストブルックはコメントしており、ロケッツが勝利を収めるべく、毎試合120パーセントのプレーを見せてくれることだろう。

 ウェストブルックが所属するロケッツは、昨季の覇者トロント・ラプターズと共に10月8日と10日に「NBA Japan Games 2019 Presented by Rakuten」(ジャパンゲームズ)で激突する。ウェストブルックとしては、10月に今年2度目の来日を控えているのだが、8月の来日はあくまで日本の高校生たちへのクリニックが中心となる。

 クリニック中は真剣なまなざしで高校生を指導するだろうが、トークセッションやクリニックの合間には、屈託のない笑顔を交えながらファンを楽しませてくれるに違いない。

文=秋山裕之

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