「ファンが試合に没頭してくれていて、びっくりしました」と初戦を振り返る
キャリア4シーズン目となる今季、トロント・ラプターズのパスカル・シアカムは、ディフェンディング・チャピオンのエースとしてプレーすることが期待されている。
10月8日にさいたまスーパーアリーナで行われたヒューストン・ロケッツとの「NBA Japan Games 2019 Presented by Rakuten」(以降、ジャパンゲームズ)初戦で、シアカムは24得点11リバウンドでチームをけん引。ラプターズのファーストオプションとして、十分合格点を与えることができるパフォーマンスを見せた。
9日に都内某所で行われた囲み取材で、シアカムはメディアからの質問に応対。「日本に来てから一番良かった経験を教えてください」と聞かれると、意外な答えが返ってきた。
「日本で好きなこと? うーん。レストランに行って、なんて言うのか分からないけど、メイクアップしていた人が踊ったりしていて、それが面白かった。でも僕は今回の旅でほとんど寝ています。午後8時に疲れて寝て、朝の3時に起きて、ちょっとしたらまた寝て、7時にはここにいるんです。だから分からないです。寝る以外、まだ何もするチャンスがなくて(笑)、それが今回の旅のこれまでの経験です」。
ジャパンゲームズ初戦。選手としてプレーしていたシアカムは「ファンが今回の試合に没頭してくれていてびっくりしました。本当にエキサイティングで、次の試合が待ちきれないです」とコメント。
.@pskills43 got jokes 😂
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— Toronto Raptors (@Raptors) October 9, 2019
シアカムはルーキーシーズンに55試合(うち先発は38試合)に出場したものの、平均出場時間はわずか15.6分で4.2得点3.4リバウンドしか残すことができず、シーズン中はNBAとラプターズ905(Gリーグ)を行き来していた。
すると2年目にはローテーション入りし、81試合(うち先発は5試合)に出場。平均20.7分7.3得点4.5リバウンド2.0アシストと数字を伸ばし、昨季は先発パワーフォワードに定着。
カワイ・レナード(現ロサンゼルス・クリッパーズ)に次ぐチーム第2の男として平均31.9分16.9得点6.9リバウンド3.1アシストをたたき出し、MIP(最優秀躍進選手賞)に輝いた。
「若者には『努力を続けて、自分を信じろ』と提言したいです」とシアカム
これまでのキャリアで、シアカムは右肩上がりの成長曲線を描いてきた。メディアから「将来NBAでプレーすることを目指す日本人にメッセージはありますか?」と聞かれると、シアカムは力強い言葉を発していた。
「努力を続けることです。難しいのは知っています。僕もアフリカ出身(カメルーン)なので、目標を達成できないと感じてしまう気持ちも分かります。さらにバスケは多くの国ではメジャーではないので。今朝の機会もそうですが、若者には『努力を続けて、自分を信じろ』と提言したいです。そうしたら、ジャパンゲームズももっと増えると思います」。
現在、NBAではプレシーズンゲームが行われており、日本人としては八村塁(ワシントン・ウィザーズ)、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)、馬場雄大(ダラス・マーベリックス)がそれぞれ世界最高峰の舞台で戦っている。
渡邊と馬場がウェスタン・カンファレンスに所属するチームなのに対して、八村が所属するウィザーズは同じイースタン・カンファレンスであり、フォワードとしてプレーする八村とは試合中にマッチアップする機会もあるだろう。
そこで「ルーキーシーズンを迎える八村塁にアドバイスはありますか?」という質問に。するとシアカムは、「大学時代のプレーをちょっと見たかもしれませんが、彼のプレーを見るチャンスがまだあまりないんです」と口にし、このように助言していた。
「ルーキーなので多くのことを学ぶと思いますが、能力はあるので努力を続けることです。もちろん皆さんは彼のことを誇りに思っているはずです。とにかくコートに出て楽しむこと。バスケをするためにサラリーをもらうことは本当に最高なことなので、楽しんで努力してもらいたいです」。
10日に行われるジャパンゲームズ第2戦は、初戦を欠場したマルク・ガソルが出場することが濃厚なため、ラプターズは昨季NBAを制したシアカム、ガソル、サージ・イバカというローテーションを組むことが期待できる。中でもシアカムが見せる、躍動感あふれるプレーは必見だ。
文=秋山裕之