2019.10.09

約16年ぶりに帰ってきたNBAジャパンゲームズ、極上のエンターテインメントここにあり!

リーグ屈指のオフェンシブプレーヤー、⑬ハーデンがスコアリングショーを演じた[写真]=伊藤 大允
フリーライター

ウェストブルックがロケッツデビュー、スターター紹介時に大歓声が鳴り響く

 2003年のジャパンゲームズから約16年、日本に再び本場アメリカのNBAが舞い戻ってきた。

 10月8日、さいたまスーパーアリーナで「NBA Japan Games 2019 Presented by Rakuten」(以降、ジャパンゲームズ)第1戦が行われ、ヒューストン・ロケッツトロント・ラプターズが対決。

 会場には多くのファンが詰めかけ、試合開始前から選手たちのウォームアップに興奮を隠せない様子が伺えた。中でも会場で最も大きな歓声が上がったのは、両チームのスターター紹介だった。

 というのも、ロケッツの選手紹介で、3シーズン連続で平均トリプルダブルを記録中のラッセル・ウェストブルックの名前がアナウンスされたからだ。今夏オクラホマシティ・サンダーからトレードで加入したウェストブルックは、今夏手術した右膝の回復途中のため、プレシーズン2試合を欠場。7日にメディアへ一部公開された練習時には、5対5のメニューでコートに立っていなかった。「ジャパンゲームズに出れるのか?」という不安があっただけに、大きな衝撃となったと言っていい。

 この日の両チームのスターターは、ロケッツがウェストブルック、ジェームズ・ハーデンエリック・ゴードンPJ・タッカークリント・カペラというレギュラーシーズン同様の豪華メンバー。対するラプターズは、今夏左手親指を手術したカイル・ラウリーに代わってフレッド・バンブリートが先発入り。さらにノーマン・パウエルOG・アヌノビーパスカル・シアカムサージ・イバカが先発に名を連ねた。

ウェストブルックは日本でロケッツデビューを飾った[写真]=伊藤 大允

ロケッツが前半だけで85得点を奪うも、ラプターズが4Qに逆転して勝利

 会場内からわれんばかりの声援が鳴り響く中、ジャパンゲームズ第1戦がスタート。プレシーズン3試合目だったロケッツに対して、ラプターズはプレシーズン初戦と、序盤はロケッツに勢いが傾くかと思われたが、両チームとも交互に得点を重ね、最初の12分間を終えてロケッツリードの44-40というハイスコア。

 続く第2クォーターも、ロケッツとラプターズは主力選手たちを中心にショットの雨を降らし、前半を終えてロケッツ12点リードの85-73。プレシーズンとはいえ、とてつもないハイスコアリングショーを両チームが演じた。

⑬ハーデンは変幻自在のドリブルとステップワークで得点を量産[写真]=伊藤 大允

 その中で、特筆すべきはハーデン。日本での自身初得点を3ポイントで決めると、第1クォーター中盤からマッチアップ相手をあざ笑うかのような動きで交わし、フローターやレイアップで加点。さらには第1クォーター、第2クォーター終盤に1オン1からシグネチャームーブの“ステップバックスリー”を突き刺し、会場の視線をくぎ付けにした。

 ロケッツはハーデンのほか、ウェストブルックやゴードン、カペラが得点を重ねる一方で、ベンチスタートの新加入組、ベン・マクレモアとタボ・セフォローシャも活躍。ハーデンまたはウェストブルックがドライブでラプターズのディフェンスを切り崩し、逆コーナーで待つチームメートへキックアウトすると、そこから45度付近に待機していた選手がノーマークで3ポイントをヒットさせるプレーがよく決まり、リードを広げていく。

 対するラプターズは、エースに就任したシアカムが積極果敢なボールプッシュからそのまま持ち込んでショットを決めたほか、1オン1から鮮やかなスピンムーブで交わしてイージーレイアップ、さらには3ポイントを放り込んでチームをけん引。

大きなストライド(歩幅)でコート上を駆け回ったシアカム[写真]=伊藤 大允

 先発入りしたバンブリートも屈強な肉体と絶妙な緩急をつけたドライブで強行突破し、リング下でフィニッシュまで持ち込む力強さを見せた。イバカ、パウエルも高確率にショットを成功させ、アヌノビーもコート狭しと暴れ回っていた。

 プレシーズンということもあり、主力選手たちは第3クォーターを終えてベンチに下がり、第4クォーターはリザーブの選手たちが躍動。最終クォーター中盤、新加入のロンデイ・ホリス・ジェファーソンのショットでラプターズが同点に追いつくも、ロケッツは在籍2年目のオースティン・リバースが4連続得点でリードを広げる。

 だが、そこからラプターズはクリス・ブーシェーやマルコム・ミラーを筆頭にロケッツへ猛攻を仕掛け、最終スコア134-129で勝利。

2万人超えの観客を沸かせたハーデン、極上のエンターテインメントは必見

 もっとも、コート上で最も強烈なインパクトを放っていたのは、やはりハーデンだろう。2シーズン連続の得点王は、いずれもゲームハイとなる34得点7アシストを残したのだが、レッグスルーパスやビハインド・ザ・バックパスなど多彩なパスでも会場を沸かせた。

 第2クォーターにはマッチアップ相手の股を通す“股抜きドリブル”を披露するなど、ハーデンが繰り出すクリエイティブなプレーの数々に観客は酔いしれた。

 この日の観客数は2万348人。03年のジャパンゲームズでは第1戦が1万9,323人、第2戦が1万9,664人(いずれもBaketball Referenceのデータ)だったため、前回の観客数を上回ったことはポジティブに受け取っていい。

2万人を超える大観衆がさいたまスーパーアリーナに駆け付けた[写真]=伊藤 大允

 試合中はタイムアウトやクォーター間のインターバル(2分)、ハーフタイム(15分)にさまざまなアトラクションが行われたのだが、会場全体の雰囲気は現地アメリカのNBAそのもの。試合の合間も十分楽しむことができ、最高のエンターテインメントを体験できるものだった。

 また、メディア席には小型のモニターが設置されていて、スタッツやプレーバイプレー、出場中の選手が一目で分かるなど、とても便利なものが用意されていた。そのお陰で、ゲームに熱中しつつ、同時にその詳細を追いかけることができた。

メディア席に設置されていた小型モニター[写真]=Basketball King

 今回のジャパンゲームズは、9日にNBAファンイベント『NBA Fan Night Presented by Rakuten』、10日に第2戦がさいたまスーパーアリーナで行われる。残り2日間も、会場へ行く方だけでなく、行くことができない方も、動画配信サービス「Rakuten TV」で無料ライブ配信されるため、映像を通して極上のエンターテインメントを存分に味わっていただきたい。

文=秋山裕之

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