「あの日、エージェントから電話で『君はポートランドへ行くことになる』と言われて、すぐさま電話を切ったんだ。で、彼らと対戦する日を見つけて、カレンダーにマークしたよ」
2017年2月14日(現地時間13日、日付は以下同)。デンバー・ナゲッツはユスフ・ヌルキッチと同年のドラフト1巡目指名権をポートランド・トレイルブレイザーズへ放出し、メイソン・プラムリーと現金、2018年のドラフト2巡目指名権を獲得するというトレードを成立させた。
当時のナゲッツは“ボスニアンビースト”の異名を持つヌルキッチと、キャリア2年目のニコラ・ヨキッチという外国籍出身のビッグマンを2人抱えていたのだが、ナゲッツはヨキッチ中心のチームを構築していくことを決断し、ヌルキッチを手放したのである。
あれから約3年。ヨキッチは2年連続でオールスターに選出される万能型ビッグマンへと成長。ナゲッツを2シーズン連続でウェスタン・カンファレンス上位へと導く立て役者となっている。
一方のヌルキッチも、ブレイザーズ加入後に平均29.2分15.2得点10.4リバウンド3.2アシスト1.3スティール1.9ブロックをマーク。ナゲッツ在籍時の成績(平均17.9分8.0得点5.8リバウンド1.3アシスト)を飛躍的に上回り、自身の存在感を見せつけた。
ヌルキッチが昨年3月下旬に負った左足の大ケガから復帰を目前に控えたやさき、NBAは新型コロナウイルスの影響により、レギュラーシーズンを中断。直近1年間はコートに立てていないものの、ヌルキッチは昨季平均27.4分15.6得点10.4リバウンド3.2アシスト1.0スティール1.4ブロックと、軒並みキャリアハイの成績を残し、デイミアン・リラード、CJ・マッカラムに次ぐ好選手としての地位を確立していた。
トレードされた当時について、ヌルキッチは『NBC Sports Northwest』のインタビューでこう明かしている。
「あの日、エージェントから電話をもらって『君はポートランドへ行くことになる』と言われて、俺はすぐさま電話を切ったんだ。で、俺が最初にしたことは、カレンダーで彼ら(ナゲッツ)と対戦する日を見ていた。その日を見つけて、カレンダーにマークしたよ。何が何でも、その日を待っていようとね」。
そのシーズン、ブレイザーズがナゲッツと戦うのはホームゲームの3月29日だった。「人生にはいろんなことが起こるから、それらを受け止めなければならない。チームが変われば、メンタル面とフィジカル面でフォーカスしなきゃいけないんだ。最高だったよ。『これが俺にとってまた一つ新たな日になる。さぁ、やってやろうじゃないか』って感じだったね」とヌルキッチは続けた。
ヌルキッチとヨキッチによる初のマッチアップとなったこの試合。ブレイザーズはマッカラムがゲームハイの39得点、リラードが19得点6リバウンド7アシスト3スティールを奪って122-113で勝利したのだが、ヌルキッチの活躍も見事だった。
第1クォーターだけで両チーム最多の13得点を挙げるなど、フィールドゴール15投中12本、フリースロー11投中9本成功という見事な集中力を発揮して33得点に15リバウンド2ブロックの大暴れで勝利に貢献。
一方のヨキッチも17得点8リバウンド8アシスト2ブロックと持ち前のオールラウンドなプレーで応戦したものの、この日はトレードされたことをモチベーションへと変え、入念な準備をしてきたヌルキッチに軍配が上がった。
ヌルキッチとヨキッチという、重量級かつ万能型のビッグマンによるマッチアップは、今季中に再び見られるかどうかは分からない。だがキャリア初期にナゲッツでチームメートだった両選手が、コート上で多彩なスキルを駆使し、激しくぶつかり合うシーンは見ごたえ十分と言っていいはずだ。