「22年間も最高のレベルでプレーしていたなんて、もう本当にびっくりするようなこと。でもあなたはそれをやり遂げた」とヤングがツイッターに投稿
6月5日(現地時間4日、日付は以下同)。NBAは22チームによるシーズン再開プランがオーナー会議で承認されたことで、翌6日にNBA選手会(NBPA)と話し合いのうえで承認となれば、22チームのみで今季を再開することが確実となった。
これにより、3月12日終了時点でイースタン・カンファレンス14位のアトランタ・ホークス(20勝47敗)の今シーズンは一足早く終了。そして今季限りで現役を引退することを表明していたビンス・カーターのNBAキャリアは、予想外の形で幕を下ろしてしまう可能性が高い。
新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、NBAが3月13日からレギュラーシーズンを中断することが発表された時、ホークスはホームのステイトファーム・アリーナでニューヨーク・ニックスと戦っていた最中だった。
シーズン中断の知らせを聞いたホークスは、7点ビハインドで迎えた延長残り19.5秒にカーターを投入。残り13.4秒にトレイ・ヤングのパスを受けて、トップ・オブ・ザ・キー付近から3ポイントを放り込み、会場に集まったファンへ感謝の気持ちを示し、ヤングらと抱き合ってコートを後にした。
シーズン中断から3週間が経過した4月3日、カーターは『The Ringer』のポッドキャストに出演し、「私は今だからこう言える。今シーズンがどんな形で終わるかなんて、誰も知りようがなかったってね」と口にし、「もしあの試合がラストゲームで、ラストショットになったとしても、私はラストショットを決めたんだし、問題なんてない。自分のキャリアとその終わり方についても良かったと感じてるよ」という言葉を残している。
5日の時点でカーターは正式に現役を引退すると表明していないものの、公式戦ではプレーしないことが予想されている。NBA史上最長の22年のキャリア、そして1990、2000、2010、2020と、4つの年代でプレーした史上初の選手として、シーズン再開後にNBAから表彰されるなどコートに立つかもしれないが、NBA選手としてプレーすることはないだろう。
するとヤングは4日に自身のツイッターへカーターとハンドシェイクする写真と共に、43歳の大ベテランへの感謝をこのように綴っていた。
「この日が来ないことを願っていた…。22年間も最高のレベルでプレーしていたなんて、もう本当にびっくりするようなこと。でもあなたはそれをやり遂げた。あなたとの全ての思い出と、ロッカールームで話したことは、僕の中でずっと残っていくだろう。ありがとう」。
最後までコートで戦い続けたカーター「誰かが自分のプレーを見てくれるんだから、ベンチに座って試合をただ眺めるなんてできないのさ」
トロント・ラプターズでキャリアをスタートさせたカーターは、ロックアウトによって50試合の短縮となった98-99シーズンにNBAデビュー。新人王を皮切りに、オールスターに8度、オールNBAチームに2度選ばれた実績を持ち、2000年のシドニーオリンピックでは“人間超えダンク”で世界中の話題をさらい、強烈なインパクトを残した。
これまでのキャリアで、カーターはラプターズ、ニュージャージー・ネッツ、オーランド・マジック、フェニックス・サンズ、ダラス・マーベリックス、メンフィス・グリズリーズ、サクラメント・キングスでプレー。現役最後となった2シーズンは、若手ぞろいのホークスでローテーション入りしてみせた。だがNBAチャンピオンに輝くこともなければ、NBAファイナルという頂上決戦にも進出することができなかった。
それでも、キャリア終盤になってチャンピオンリングをなんとしてでも手に入れようと優勝候補のチームに加入するベテラン選手がいる中、カーターは自身の考える役割を果たしてきたと言っていい。
「私は単純にプレーがしたかった。それでどうなったかって? 自分が持つ知恵を与えることができたかもしれないし、彼ら(チームメートたち)にとって最高のメンター(助言者)になれたんじゃないかと思ってる。時には伝えるだけじゃなく、実際に見せることが大切になってくるんだ。ゲーム中の状況やポジショニングといったことがね。私は選手として、哀れな存在になるのかもしれない。でもそれは、私が競い合うことが大好きだからなんだ。私としては、誰かが自分のプレーを見てくれるんだから、ベンチに座って試合をただ眺めるなんてできないのさ」。
カーターは4月29日に『Sports Illustrated』へ掲載されたインタビューでそう話していることから、最後まで若手たちと共に過ごし、20年以上にも渡るキャリアの中で得てきたものを伝授できたと感じていることだろう。
43歳になってもコート上を駆け抜けたカーターが、正式に引退を発表する日が近いうちに訪れてしまうのかもしれない。それは残念かつ悲しいことではあるのだが、そこでネガティブになるのではなく、最後まで戦い続けた男として、22シーズンにも渡ったすばらしいキャリアを祝福したい。