2020.04.05

将来有望な若手を擁し、球宴後は勝率を急上昇させたホークス/2019-20NBA通信簿チーム編⑪

ホークスのけん引役を務めるヤング(右)とコリンズ(左)[写真]=Getty Images
フリーライター

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編⑪アトランタ・ホークス

イースタン・カンファレンス(サウスイースト・ディビジョン)
総合評価:D

■ここまでの戦績
今季戦績:20勝47敗(勝率29.9%/イースト14位)
ホーム戦績:14勝20敗(勝率41.2%)
アウェー戦績:6勝27敗(勝率18.2%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:111.8(16位)
平均失点:119.7(29位)
平均リバウンド:43.3本(21位)
平均アシスト:24.0本(18位)
平均スティール:7.8本(14位)
平均ブロック:5.1本(11位)
オフェンシブ・レーティング:107.0(25位)
ディフェンシブ・レーティング:114.4(28位)

今年1月のトレードで古巣ホークスへ復帰したティーグ[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:トレイ・ヤング(35.3分)
平均得点:トレイ・ヤング(29.6得点)
平均リバウンド:ジョン・コリンズ(10.1本)
平均アシスト:トレイ・ヤング(9.3本)
平均スティール:ディアンドレ・ベンブリー(1.3本)
平均ブロック:ジョン・コリンズ(1.6本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:ジェフ・ティーグクリント・カペラ、ドウェイン・デッドモン
退団:アレン・クラブ、エバン・ターナー、ジャバリ・パーカー、アレックス・レン

コリンズの出場停止時に4勝21敗と大きく負け越すも、球宴後は復調

 昨季オールルーキーファーストチームに満票で選ばれたトレイ・ヤング、平均ダブルダブルに迫る数字を残したジョン・コリンズの周囲に、シューターのケビン・ハーター、ウイングにディアンドレ・ハンターキャメロン・レディッシュのルーキーデュオらを擁して迎えた今季、ホークスは開幕2連勝という好スタートを切る。

 だがコリンズがNBAと選手会が定める反薬物プログラム規定に違反し、6戦目から25試合の出場停止。ハーターもケガで離脱するなど戦力ダウンという窮地に陥ると、先発に昇格したジャバリ・パーカー(現サクラメント・キングス)の踏ん張りも空しく、チームは4勝21敗と急降下。

 ヤングへの負担は増すばかりで、スコアリングとゲームメイクをこなすも白星をつかみ取ることはできず、昨年12月には「誰もが今勝ちたがっている。僕だって今勝ちたいんだ。僕は今よりも、もっともっと勝ちたい。ここに来るまで、僕はこれまで再建の過程にいたことがなかったんだ。だから最もつらいのは、この状況の中、ポジティブな姿勢を保とうとすること。僕はどうやってポジティブな姿勢を保っていくかを学ばなければいけない。リーダーとして、僕は自分だけじゃなくてチームメートたちにもポジティブな姿勢を維持させていく必要があるんだ」と『The Athletic』へもらしていた。

 12月24日にコリンズが復帰し、31日のオーランド・マジック戦を制して連敗を10でストップしたものの、黒星先行は変わらず。1月中旬以降は連敗を3までに抑えているとはいえ、今季もプレーオフ出場は非常に厳しい状況にある。

 そんな中、ホークスは1月にヤングの控えとしてベテラン司令塔のジェフ・ティーグをトレードで呼び戻し、2月には4チームが絡んだ大型トレードでリムプロテクターのクリント・カペラ、キングスとのトレードで昨季までの2シーズンを先発センターとしてプレーしたドウェイン・デッドモンを獲得するなどロースターにメスを入れており、オールスター後は5勝6敗と調子が上向いていた中でシーズン中断を迎えた。

ホークスへ加入したカペラには、特にディフェンス面のアンカーとして期待がかかる[写真]=Getty Images

伸びしろ十分の若手が豊富にいるものの、カーターのプレーは見納めか?

 オールスター後、カペラはかかとの痛みのためデビューできていないものの、マイアミ・ヒート、ダラス・マーベリックスという格上チームに勝利しており、シーズン序盤と比較すればチームとしての戦力が確実にアップしていることは事実。

 キャリア2年目でオールスターのスターター入りを果たしたヤング、ビッグマンのコリンズが得点源として活躍し、ハンターとレディッシュはディフェンスでコート上を動き回り、オフェンスではアウトサイドシュートの成功率が上昇。特にシックスマンとなったレディッシュはオールスター後に平均16.4得点と好調を維持しており、その周囲をハーター、デッドモン、ティーグらが支えている。

 もしこのままシーズン終了となった場合、カペラのデビューは来シーズン以降までお預けとなるのだが、このチームの主力はいずれも若く、伸びしろも十分あるだけにチームとしての成長にも大きな期待が持てる。

オールスター後、レディッシュ(写真)はヤング、コリンズに次ぐ得点を記録している[写真]=Getty Images

 その一方で、現役最年長(43歳)の大ベテラン、ビンス・カーターは今季終了後に引退することをほのめかしていたため、3月12日のニューヨーク・ニックス戦がラストゲームになる可能性が高い。新型コロナウイルスの影響により、試合中に翌日からシーズン中断を伝えられた後、カーターはヤングと共に延長残り19.5秒でコートに戻り、残り13.4秒でトップ・オブ・ザ・キーから鮮やかな3ポイントを放り込んだ。

「私のキャリアは、自分1人の力で成し遂げたものじゃない。周りにいる人たちに話を聞けば、私の想いを知ることができるはずだ。『とても感謝している』とね。でも引退して自分の時間を過ごすことにも、何の問題も感じてはいないんだ。それもそれでいいことだと思ってる。これまですばらしい試合をプレーすることができたからね。もしこの試合が最後だとしたら、私は最終戦でキャリア最後のショットを決めたことになる。(突然のシーズン中断は)奇妙な気がするけど、なかなか良い思い出でもある」と試合後に話していたカーター。

 シーズン中断から約3週間後の4月3日。『The Ringer』のポッドキャストに出演したカーターは「私は今だからこう言える。今シーズンがどんな形で終わるかなんて、誰も知りようがなかったってね。もしあの試合がラストゲームで、ラストショットになったとしても、私はラストショットを決めたんだし、問題なんてない。自分のキャリアとその終わり方についても良かったと感じてる」と語ったことから、このまま現役を終えることになりそうだ。

 1990、2000、2010、2020年代と、4つのディケイドでコートに立った史上初の選手カーターは、NBA史上最長となる22シーズン目をプレー。今季が再開するか不透明なだけに、屈託のない笑顔を見せてバスケットボールを楽しんでいた男へ多大な感謝と盛大な拍手を送りたい。

ホークスで現役最後の2シーズンをプレーしたカーター[写真]=Getty Images

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