2020.05.29

超強力タッグを軸にプレーオフの舞台へ戻ってきたレイカーズ/2019-20NBA通信簿チーム編23

レイカーズをウェスト首位へと導いたレブロン(左)とデイビス(右)[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は7月下旬以降と現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編23 ロサンゼルス・レイカーズ

ウェスタン・カンファレンス(パシフィック・ディビジョン)
総合評価:S

■ここまでの戦績
今季戦績:49勝14敗(勝率77.8%/ウェスト1位)
ホーム戦績:23勝8敗(勝率74.2%)
アウェー戦績:26勝6敗(勝率81.3%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:114.3(7位)
平均失点:106.9(3位)
平均リバウンド:46.1本(8位)
平均アシスト:25.9本(7位)
平均スティール:8.6本(4位)
平均ブロック:6.8本(1位)
オフェンシブ・レーティング:112.6(4位)
ディフェンシブ・レーティング:105.5(3位)

ハワードはロールプレーヤーに見事転身し、レイカーズの躍進を陰で支えた[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:レブロン・ジェームズ(34.9分)
平均得点:アンソニー・デイビス(26.7得点)
平均リバウンド:アンソニー・デイビス(9.4本)
平均アシスト:レブロン・ジェームズ(10.6本)
平均スティール:アンソニー・デイビス(1.5本)
平均ブロック:アンソニー・デイビス(2.4本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:マーキーフ・モリス、ディオン・ウェイターズ
退団:デマーカス・カズンズ、トロイ・ダニエルズ

デイビスはビッグマンだけでなく、ガードの選手にもスイッチするなどディフェンス強化の立て役者に[写真]=Getty Images

経験豊富なベテラン集団となり、ウェスト首位を堅持

 昨夏にトレードでリーグ最高級のビッグマン(ADことアンソニー・デイビス)を獲得し、レブロン・ジェームズとの“超強力タッグ”を結成すると、その周囲にダニー・グリーンエイブリー・ブラッドリーといったディフェンス力に定評のあるガード陣を補強。契約後に左膝前十字靭帯を断裂したデマーカス・カズンズの代役にはドワイト・ハワードを加え、充実したロースターで開幕を迎えた。

 初戦でロサンゼルス・クリッパーズに102-112で敗れるも、続くユタ・ジャズ戦で86得点に抑え込んで今季初勝利を収めると、デイビスは「俺たちのディフェンスは本物。俺たちは今夜、ディフェンスで驚かせてやろうとトライしたんだ。俺は(レイカーズを)ディフェンス志向のチームにさせたいと思ってる。今日は皆がしつこいディフェンスを見せていたと思うよ」と自信をのぞかせた。

 その後レイカーズはレブロン、デイビスを中心に白星を量産。7連勝、10連勝、7連勝と勝ち続け、一時はリーグトップの戦績を残すなど絶好調。2月のオールスターブレイク後にはベテランフォワードのマーキーフ・モリス、スコアラーのディオン・ウェイターズをロースターに加え、さらなる戦力増強に成功。

今季から指揮官へ就任したボーゲル(左)を中心とするコーチングスタッフも見事な仕事を遂行[写真]=Getty Images

 昨季からロースターの半数近くが入れ替わり、コーチングスタッフもフランク・ボーゲルHC(ヘッドコーチ)を筆頭にジェイソン・キッドAC(アシスタントコーチ)、ライオネル・ホリンズACというHC経験のある人材を加え、大きく入れ替わった。

 だがレブロンは、マイアミ・ヒート時代にボーゲルHC率いるインディアナ・ペイサーズとプレーオフで何度も対戦した経験を交えて、こう語っている。

「フランクのことは前から尊敬していた。ペイサーズはいつだって準備ができているチームで、ゲームプランに忠実な戦いをしていたからね。ペイサーズと対戦したことを覚えているから、俺は最初から彼のことを尊敬していたんだ」。

 コーチングスタッフと選手たちが結束したレイカーズは、ウェスト首位に君臨し、2013年を最後に遠ざかっていたプレーオフ出場も確定。アウェー戦績はリーグトップで、平均得失点差(+7.4)はミルウォーキー・バックスに次いでリーグ2位。3月に入ってバックス、クリッパーズといった優勝候補との試合も制しており、さらにギアが上がっていたやさきに迎えたシーズン中断だった。

 NBAはシーズン再開に向けて着実に前進しており、レイカーズも5月下旬になって練習施設が解禁。シーズン再開を誰よりも望むレブロンも、限られた条件の中でチームメートたちともトレーニングを行っていると先日『Stadium』が報道。

 キャリア17年目のレブロンを筆頭に、今季のレイカーズは10年以上のNBA経験を持つベテランが6人もいるベテランチーム。NBAファイナル出場経験を持つ選手も豊富で、優勝経験者も複数いるだけに、シーズン再開後に再びチームが結束できるかが今後に向けて最も期待したいところだ。

コービー他界という悲劇に見舞われるも、抜群のリーダーシップでレブロンがチームの結束をさらに強める

 レブロンとデイビスという両輪こそ平均34分以上プレーしているものの、そのほかの選手たちはいずれも平均26.0分未満の出場時間に抑えられている。平均2ケタ得点は2枚看板とカイル・クーズマ(平均12.5得点)の3選手のみだが、選手間のケミストリーは上々。

 今季は全4クォーターにおいて相手チームの平均得点を上回っており、第3クォーター終了時点でリードしていた試合では42戦無敗と抜群の強さを誇っている。2度の優勝経験を持つダニー・グリーンは、今季のチームについて『SB Nation』へこう話していた。

「個人的には、ベストシーズンを送れてはいなかった。でも仲間たちに囲まれて、チームとともに喜びを味わうことができたし、このグループで成功を経験した。皆はチームが掲げた目標を胸に、シーズンを楽しんでいたよ。誰一人として、自分たちの数字について気にすることはなかったし、個人として成し遂げたことにこだわるようなこともなかった。プレーする時間が10分から15分、あるいは20分から25分、または5分だけだったとしても、試合を楽しんで勝利してきた。僕らは本当に楽しいと感じていたから、自分の数字を気にしていなかったね」。

ロースター全員が役割を理解し、抜群のチームケミストリーで勝利を重ねた[写真]=Getty Images

 レイカーズが高位安定している要因の1つは、リーグトップレベルとなったディフェンスだろう。ディフェンシブ・レーティングは昨季の108.9(リーグ13位)から今季はリーグ3位の105.5へと上昇。2月22日のメンフィス・グリズリーズ戦後、レブロンは「彼はなんでもできるんだ」と切り出し、デイビスをこのように称えていた。

「リング下を守ることができて、ポストディフェンスも問題ない。ガードにスイッチすることもいとわないんだ。フローターなどもブロックするし、スティールもする。俺たちのディフェンスにおいて、彼はすべてをやってくれている。だから彼こそが最優秀守備選手なのさ」。

 1月末にコービー・ブライアント(元レイカーズ)がヘリコプター墜落事故により帰らぬ人となったことで、NBA全体、特にロサンゼルスはショックが大きく、試合が延期になるなど悲しいムードに包まれてしまった。

 だがそこでLA、レイカーズをさらに結束させたのがレブロンだった。コービーの他界から数日空けて行われた2月1日のポートランド・トレイルブレイザーズ戦の試合前。レブロンはコート中央に立ち「これから先、コービーの記念日を設ける日が来るでしょう。でも私は、今日という日を記念日だと思っています。20年もの間、血と汗と涙を流し、傷つき、それでも立ち上がって、休み、偉大な存在になろうとした男のすべてを称える記念日です。今夜は18歳でリーグ入りし、38歳で現役を引退、それから3年間は最高の父親だった人の功績を私たちは称えます」とスピーチをし、会場に集まったファン、チームメートたちを1つにした。

コービーの逝去という悲劇を乗り越え、レイカーズはさらにギアを上げていた[写真]=Getty Images

 自身のインスタグラムでは「あなたが残してくれたレガシー(遺産)を受け継いでいくことを約束する。あなたは俺たちにとって非常に大きな存在で、特に“レイカーネイション”は俺たちの心の中にあるんだ。だから自分にはそれを背負っていく責任がある。どうか天国から見守ってほしい。そして俺に力を与えてほしい」とコービーとの写真と共に綴っていたことも印象的だった。

 2月以降、レイカーズは13勝3敗(勝率81.3パーセント)を残していただけに、2か月以上の中断期間がどのように影響するかが気になるところだが、再開後にレブロンとデイビスを中心にプレーオフを戦い抜き、フランチャイズ史上17度目のチャンピオンとなり、コービーにとって6度目となる優勝として今季を締めくくりたい、というのがレブロンの思いではないだろうか。

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