クリッパーズの大黒柱として自身3度目の優勝を狙うレナード/2019-20NBA通信簿選手編⑰

クリッパーズでも大黒柱として獅子奮迅の働きを見せるレナード[写真]=Getty Images

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿選手編⑰カワイ・レナード

所属:ロサンゼルス・クリッパーズ(ウェスタン・カンファレンス2位)
総合評価:A

■プロフィール
生年月日(年齢):1991年6月29日生まれ(29歳)
ポジション:フォワード
身長/体重:201センチ/104キロ
NBAキャリア:9年目
  
<今季ここまでの功績>
オールスター選出(2年連続4度目)
コービー・ブライアント・MVPアワード(オールスターMVP)
週間最優秀選手:1度

<2019-20シーズン 個人成績>
平均出場時間:32.2分
平均得点:26.9得点(リーグ8位)
平均リバウンド:7.3本
平均アシスト:5.0本
平均スティール:1.8本(リーグ5位)
平均ブロック:0.6本
フィールドゴール成功率:46.9%
3ポイント成功率:36.6%
フリースロー成功率:88.9%(リーグ10位)

■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:45分34秒(20年2月14日/対セルティックス)
得点:43得点(20年1月15日/対キャバリアーズ)
リバウンド:14本(2度)
アシスト:10本(2度)★(キャリアハイタイ)
スティール:5本(20年1月19日/対ペリカンズ)
ブロック:3本(19年10月29日/対ホーネッツ)
フィ―ルドゴール成功数:15本(2度)
3ポイント成功数:6本(20年1月15日/対キャバリアーズ)
フリースロー成功数:19本(19年12月14日/対ウルブズ)★
★=キャリアハイ

今年のオールスターでは抜群のシュートタッチでショットを放り込んだ[写真]=Getty Images

チーム史上初のウェスト決勝、優勝を見据える新天地で上々の活躍

 昨季トロント・ラプターズをフランチャイズ史上初優勝へと導いたレナードは、サンアントニオ・スパーズに所属していた2014年に続き、自身2度目のファイナルMVPを獲得。NBA史上初となる異なるカンファレンスに所属するチームでファイナルMVPを手にした選手となった。

 オフェンスとディフェンスの両面に秀でた2ウェイプレーヤーとしてリーグ最高級の選手という評価を確立したレナードは、プレーヤーオプションを破棄してフリーエージェント(FA)となり、故郷カリフォルニア州を本拠地に置くクリッパーズへ。

「俺は試合に勝つ手助けをするためにここにいる。勝利するカルチャーを構築しようとトライし、4月までプレーすること(プレーオフではなくまずはレギュラーシーズンに集中すること)にフォーカスしていることを皆に知らせたい。毎晩最もスマートなチームとしてプレーし、ここで何かを構築したいね」。

 今季開幕前にそう切り出したレナードは「皆が勝ちたがっていると感じている。このチームは皆が競争者なんだ。(優勝という)究極のゴールに対して揺るぎない考えを持ち続けることだね。そして不振に陥ったとしても落胆せず、物事が良く回りすぎてもいい気にならないこと」とくぎを刺していた。

 フランチャイズ史上最高と言っても過言ではない豪華戦力となったクリッパーズは、“静かなるリーダー”レナードを中心に節目となる創設50シーズン目を戦っており、ここまでウェスト2位と上々の成績を残していると言っていい。

 昨季と同様に、レナードは膝のメンテナンスのためトレーニングキャンプを欠場。さらには2連戦が組まれている時にはロード・マネジメント(選手の疲労管理)として2試合目を欠場し、長丁場のシーズンで健康体を保ち、ベストなパフォーマンスを維持している。

長い腕と大きな手を最大限に活かしたディフェンスも健在[写真]=Getty Images

 シーズン途中にはそのやり方に疑問や不満を投げかける者もいたが、選手の身体は人それぞれ。レナードは昨季のレギュラーシーズンで60試合の出場に抑えており、全試合に出場したプレーオフでは平均30.5得点9.1リバウンド3.9アシストを残して頂点に立ったのだから、レナードのロード・マネジメントを一方的に悪く言うことはできないだろう。

 クリッパーズのドック・リバースHC(ヘッドコーチ)は11月上旬にレナードについて「カワイ・レナード以上に、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)のような身体を持った選手はいない。それは彼の手の大きさとその長さにある」と『ESPN』へ話していた。

 するとレナードも「彼(ジョーダン)は俺がよく見てきた選手なのは間違いないね。もちろん、彼は競争するうえで毎試合どのようにアプローチしてきたかという点で皆が見上げてきた選手の1人。俺は彼のプレーを見ては自分のモノにしようとトライして、自分のゲームの一部として取り込んでいるんだ」と語っている。

 今季レナードはここまで51試合の出場で平均32.2分26.9得点7.3リバウンド5.0アシスト1.8スティールという好成績を残しており、得点とアシスト、3ポイント成功数(平均2.1本)でキャリアハイをマーク。

 2年連続4度目の選出となったオールスターゲームでは、8本の3ポイント成功を含むゲームハイの30得点に7リバウンド4アシスト2スティールをたたき出し、初代コービー・ブライアント・MVPアワードを受賞。

 今季クリッパーズはレナードが出場した試合で38勝13敗と大きく勝ち越しているものの、不在時は6勝7敗と勝率5割を下回っている。そしてレナードが30得点以上した試合では17勝3敗と、試合の勝敗に大きく影響を及ぼしていることが分かる。

 レナードを筆頭にポール・ジョージルー・ウィリアムズモントレズ・ハレルなど、豊富なタレントを擁するクリッパーズだが、昨季までの49シーズンでNBAファイナル進出はおろか、カンファレンス・ファイナル進出も皆無なだけに、今季に対する期待が高いのは当然だろう。

レナード(左)がプレーオフを順当に勝ち上がればレブロン(右)擁するレイカーズとウェスト決勝で激突となる[写真]=Getty Images

「いつも以上にフォーカスするだけさ。俺としては、どんな状況であろうと優勝を勝ち取りにいく」

 スコアリングからプレーメイク、ディフェンスでもリーグ屈指の実力を誇るレナードだが、昨季のプレーオフで際立っていたのがミドルレンジゲーム。特に強靭な肉体と一際長い腕から繰り出すミドルレンジジャンパーは抜群の決定力を誇っていた。

 今年4月下旬。トレーナーを務めるクリント・パークスは、レナードのリーサルウェポンとも言えるミドルレンジジャンパーについて『ClutchPoints』へこう話している。

「ミドルレンジジャンパーは、カワイにとってレイアップなんだ。初めて会ったのは彼が14歳の時だったけど、すでに練習熱心な選手だったね。それは今でも変わっちゃいない。これまでにどれだけ成功を収めていようと、彼は毎年レギュラーを奪うつもりで取り組む。決して(現状に)満足する選手じゃないのさ」。

レナードの真骨頂とも言える中距離ジャンパーはプレーオフでも威力を発揮するはずだ[写真]=Getty Images

 クリッパーズの選手やコーチ、スタッフたちは第二幕の舞台となるフロリダ州オーランドへ7月9日に乗り込んだものの、レナードは家族の事情で少し遅れて11日夜にオーランド入り。その後ホテルの部屋で隔離期間を終えたレナードは、14日にチーム練習へと合流した。

 自粛期間について聞かれたレナードは「俺としてはいい感じだね。ワークアウトもできたから、より強靭になったと思ってる。この瞬間のために準備しているんだ。今日は俺にとって最初の練習だから楽しみだ」とコメント。チームメートたちと再会し、練習に取り組むレナードはときおり笑顔も見せており、ニックネームの“Fun Guy”とデザインされたサンダルを履いてリラックス。

 今月末から始まる8試合のシーディングゲーム(順位決定戦)について「3か月もオフがあって、トレーニングキャンプをして何度か練習するんだから、プレシーズンゲームのようなもの」と表現。「それが俺の考えだ。でも皆が知ってるように、ポストシーズンへ臨む過程で、8試合しかない。といっても、準備していくうえでは同じスケジュールという感覚だろうね」と自身の考えを口にしていた。

 今季は新型コロナウイルスの影響で前代未聞のシーズン中断となったNBA。通常であればこの時期はオフシーズンであり、プレーするとしても国際大会かワークアウト中のピックアップゲームくらいだろう。

 だがレナードが見据えているのはもちろん、自身3度目のチャンピオンシップ獲得だ。

「いつも以上にフォーカスするだけさ。いつものNBAシーズンじゃないからね。(新型コロナの)パンデミックの影響で、予定通りの生活ができてる人なんていない。でも俺としては、どんな状況であろうと優勝を勝ち取りにいく」。

 自身初の2連覇をかけて、覇権争いに臨むレナード。昨季ラプターズを束ねてリーグの頂点に立った男が魅せるパフォーマンスは必見だ。

プレーオフでは終盤にかけて自らがボールコントロールし、プレーメイクしていくだろう[写真]=Getty Images

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