バブル(隔離施設)のベストチーム、ポートランド・トレイルブレイザーズを下し、カンファレンスセミファイナルへと駒を進めたロサンゼルス・レイカーズ。危ぶまれていたオフェンスも復活の兆しを見せ、一度は優勝へ暗雲がかかったが、今では晴れ間が覗いている。
さらに、レイカーズには「ラジョン・ロンドの復帰」というジョーカーが残されている。圧倒的なバスケットボールIQで戦況を的確に把握するベテラン司令塔は、22歳にしてボストン・セルティックスの黄金期を支え、リーグ優勝に貢献。セルティックスからの移籍後は、ジャーニーマンのようにチームを転々としてきたが、行く先々で与えてきた彼の経験と知識は、優勝を目指すレイカーズにとっても大きな支えとなるだろう。
現在、ロンドは右手親指のケガで戦列を離脱。しかし、同選手はこの期間中、アシスタントコーチのような役割を担い、チームをサポートしていたという。
絶対的リーダーであるレブロン・ジェームズは、これまで幾度となく、ロンドの頭脳とリーダーシップを賞賛してきた。また、ダニー・グリーンもロンドの離脱を打撃と捉える一方で、「そこまでの痛手ではないよ。なぜなら、彼はサイドラインからもチームを助け、的確にコーチングしてくれるからね」とコメントし、34歳のPGに絶大な信頼を置いている。
この影響力の大きさはチーム規模で浸透しており、レイカーズを指揮するフランク・ボーゲルHCは7月中旬、離脱中のロンドにコーチングスタッフのサポートをお願いする意向を明かしていた。そして、ロンドは健康上の都合などでバブル入りを断念したコーチたちと同様、ビデオ会議アプリ「Zoom」を介して遠隔から練習を見守り、テレビ会議などにも参加していたそうだ。
■“影の指揮官”の復帰が王座奪還の鍵?
アレックス・カルーソも、そんな献身的なロンドに助けられた選手の1人である。Gリーグから成り上がったレイカーズの人気者は、ロンドが不在の間も彼に教えを乞うていた。
「彼がチームを離れていた間、何度かメッセージを送りました。数試合を消化してから、彼の考えを聞き、僕がどのようにプレーすべきか、また、チームとしてどのようにプレーすべきかを話し合いました」
また、カルーソもレブロンやグリーンと同様、3度のアシスト王に尊敬の念を抱いている。
「本当に、彼の復帰が待ち遠しいです。彼は、チームに他の選手にはないさまざまな要素、例えば、経験値やプレイオフで戦う術などを持ち込んでくれます」
「彼は、戦況を把握し、自分たちがどのようなゲームプランで戦うべきかを計画して、それを試合に適応させます。彼は僕がプレーした中で、最も発言に影響力のある選手です。彼は、チームを別の次元でプレーさせます。そんな選手はどこにも存在しないのではないでしょうか」
レイカーズは、非常に若いチームであり、士気を高めるという意味では未だにレブロンの負担は大きい。また、慢性的なガード不足も課題のひとつで、そこでもレブロンがゲームメイクの大部分を担わざるをえない現状だ。しかし、影の指揮官の復帰は、これらの問題を一度に解決してしまう。
ラジョン・ロンドこそ、10年ぶりの王座奪還の鍵を握る選手なのかもしれない。
文=Meiji