激化するプレーオフ。特に、イースタン・カンファレンスはレギュラーシーズンの1位、2位が苦戦を強いられており、カンファレンスセミファイナルではアップセットもありそうな予感が漂っている。
しかし、リーグの裏側ではフロント陣の人事異動をはじめ、来季の準備が着々と進行中。もちろん、ドラフトは毎年大きな目玉であり、チームの行末を左右する重要な決定事項の一つとなる。
先日、モックドラフト(ドラフト予想表)から、1〜5位の上位指名権を所有する各球団の指名予想選手をご紹介した。それに引き続き、本稿では6〜10位の指名権を持つ各球団の指名予想選手をフォローしていきたい。
毎年、上位指名であればあるほど実績やポテンシャルが評価されているのは確かだが、指名順位はブレイクを保証するものではない。不作と言われる本年も、八村塁のように、下馬評を覆す才能が隠れているはずだ。
■6位指名:アトランタ・ホークス
予想指名選手:タイリース・ハリバートン(アイオワ州立大学、PG)
FIBA U19 バスケットボールワールドカップで、アメリカ代表を金メダルに導いた司令塔は、本大会のベスト5に選出され、モックドラフトでの評価が急騰。トレイ・ヤングに負担が偏るホークスに、ハリバートンはうれしい補強となる。
196センチを有するこの大型ポイントガードの魅力は、ゴールデンステイト・ウォリアーズも関心を示すほどのバスケットIQの高さ、そして抜群のパスセンスにある。1試合平均15.2得点、5.9リバウンド、6.5アシストというバランスの取れたスタッツもさることながら、フィールドゴール成功率は50.4パーセント、3ポイント成功率も40パーセント超えと、シュートタッチも安定しており、完成度だけで言えば上位指名選手たちをも上回る。
クイックネスやフィジカルに課題が残るが、ハリバートンのパスレンジの広さ、速攻時における推進力、そしてポイントガードらしからぬコーナースリーの精度は、ホークスのオフェンスオプションを大幅に拡張する可能性を秘めている。
■7位指名:デトロイト・ピストンズ
予想指名選手:オニエカ・オコング(南カリフォルニア大学、PF)
オコングは、インサイドで圧倒的な存在感を誇る。ピックアンドロールからの豪快なダンクはもちろん、ポストプレーからもロール、フックショットなど多様なパターンでアタックすることができ、ゴール下でのオフェンススキルには類稀な才能を感じる。
こういう選手は、得てしてディフェンスに難があるが、オコングの場合、そこを不安視する必要はない。彼はエネルギッシュなハードワーカーであり、相手選手にとって、オコングの運動能力と豪快なフットワークの攻略は、容易な仕事とはいかない。1試合平均2.7ブロックがその守備力の高さの証明であり、それでいてスイッチによるミスマッチも苦にせず対応してくれるのだ。
オコングは高校時代、ロンゾ・ボール(ニューオーリンズ・ペリカンズ)やラメロ・ボールとチームメートだった。そう、彼は、チノ・ヒルズ高校による伝説のシーズン35勝無敗をインサイドから支えた張本人なのである。ポテンシャルは申し分ないだけに、蓋を開けた結果、ウォリアーズはジェームズ・ワイズマンではなく、オコングを指名するべきだったと騒がれても何も驚くことはない。
■8位指名:ニューヨーク・ニックス
予想指名選手:デビン・ヴァッセル(フロリダ州立大学、SF)
ニックス陣営は、もっと高順位の指名権獲得を熱望していたことだろう。しかし、ヴァッセルが獲得できるのであれば、大きく悲観しなくてもいいはずだ。
ヴァッセルは、現代バスケで需要が高まる3&D(3ポイントとディフェンスに優れた選手)として、どのようなロスターにも定着することができる。3ポイント成功率は、大学2年間平均で41.7パーセントと高確率で、ディフェンスのみに着目すれば確実にエリートクラスの存在と言える。
新監督のトム・シボドーは、ジュリアス・ランドルとRJ・バレットを中心にチームを組み立てていくことになる。プルアップジャンパーを得意とし、シューターとしてコートを広げるヴァッセルであれば、課題とされている得点力の向上を後押してくれるに違いない
■9位指名:ワシントン・ウィザーズ
予想指名選手:アイザック・オコロ(オーバーン大学、SF)
八村塁にも来季、遂に後輩ができる。チームメートの食事の用意など、今年こなしてきたルーキーの恒例行事を任せるのは誰になるのか。もしかすると、それはサウスイースタン・カンファレンス(SEC)のオールディフェンシブに選出されたオコロになるかもしれない。
オコロは、リクルーターたちにアンドレ・イグダーラやジミー・バトラー(ともにマイアミ・ヒート)と比較される、ハイレベルな守備職人である。瞬発力と洞察力を武器に、コート上では最大4つのポジションをガードすることができ、その隙のないディフェンスで対戦相手のスコアラーたちを苦しめてきた。
また、強靭なフィジカルはすでにNBAでも通用するレベルに到達しており、ゴール下のフィジカルコンタクトでも当たり負けしないため、タフショットも高確率でリングインさせる。課題のスリーポイントが向上すれば、ウィザーズにとっても替えの効かないオプションとなることだろう。
■10位指名:フェニックス・サンズ
予想指名選手:キリアン・ヘイズ(ラツィオファーム・ウルム、PG)
近年、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)を筆頭に、ヨーロッパでのプロ経験のある選手が安定した活躍を披露している。若干16歳にして、ルディ・ゴベア(ユタ・ジャズ)らを輩出したフランスの名門ショレでデビューを果たしたヘイズは、ディアンジェロ・ラッセル(ミネソタ・ティンバーウルブズ)やゴラン・ドラギッチ(ヒート)、そして時にはジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)までもが比較対象に挙がる、期待のポイントガードだ。
ヘイズのフロアを俯瞰する視野の広さとゲーム感覚は、リッキー・ルビオ(サンズ)顔負けのものがある。また、チームメートを活かすアシスト能力と、自ら得点を加算するショットメイキングスキルを使い分けて巧みにゲームをコントロールし、相手ディフェンスに的を絞らせない。デビン・ブッカー、ケリー・ウーブレ、ディアンドレ・エイトンは、彼の恩恵を受けることになるだろう。
バブル(隔離施設)の主役となったサンズ。来季、さらなる飛躍を遂げるためには、エースの脇を固めるジョーカーを手札に加えたいところだ。 モンティ・ウィリアムズはすでに、リクルート担当にヘイズをリクエスト済みかもしれない。
文=Meiji