ザイオンは2年半前からヒーローの活躍を確信?「世代で最も過小評価されている選手」

プレーオフでも特筆すべき活躍を見せるヒーロー[写真]=Getty Images

 ワシントン・ウィザーズに所属する八村塁と同じく、NBAのオールルーキー2ndチームに選出されたマイアミ・ヒートのタイラー・ヒーロー。レギュラーシーズンでは、1試合平均13.5得点、4.1リバウンド、2.2アシストという及第点以上のスタッツをマークした。そして、プレーオフでは14.1得点、5.8リバウンド、4.0アシストとその成績をさらに伸ばし、プレー時間も5分以上増加している。

 ヒーローの活躍には、数字以上のインパクトがある。試合を左右する展開では、持ち前のハートの強さでクラッチショットをメイクし、インディアナ・ペイサーズのスイープ、優勝候補ミルウォーキー・バックスをわずか5試合で退け、カンファレンスファイナル進出に貢献した。

「あいつ(ヒーロー)は、すごく伸び伸びとプレーしていて、自信に満ち溢れている」、そう語るのは、ジミー・バトラーだ。ヒートのエースは、「まるで、俺と同じ31歳かと思わせるような落ち着きで、クールにプレーしている。俺たちは、あいつのそういうところが大好きで、何も変える必要がないと思っている」と続け、ルーキーの選手としての素質を高く評価している。

 一方、ベテランのゴラン・ドラギッチも「タイラーは、点取り屋だ。彼はとてつもないオフェンススキルを持っている」と付け加え、「僕たちは、チームのためにプレーしてくれる彼を信頼しているよ」と、安心してボールを預けられることを強調。さらに、『ESPN』のダン・ル・バタードは、「ヒートは、タイラーがデビン・ブッカー以上の存在になれると思っている」と伝え、若き才能がリーグ屈指のスコアラーに成長することを確信しているという。

バトラーやドラギッチからも信頼を寄せられている[写真]=Getty Images

ヒーローの活躍を予見していたのはザイオンだった

 多くのバスケットボールファンは、ヒーローがルーキーシーズンから、これほどまでに活躍することを予想できなかったはずだ。ケンタッキー大学のフレッシュマンシーズン、ヒーローは1試合平均14.0得点、4.5リバウンド、2.5アシストと、突出したスタッツを残したわけではない。『247Sports』の格付けでも全体37位と評価は平均的で、大学に残る見通しさえあったほど。それを踏まえたうえでの今の活躍には、専門家や目の肥えたカレッジバスケのフォロワーたちも驚きを隠せないに違いない。

 しかし、一人だけ学生時代からヒーローを高く評価している人物がいる。それが他でもない、同期の怪物、ザイオン・ウィリアムソン(ニューオーリンズ・ペリカンズ)だ。

 ザイオンとヒーローは2018年、高校のオールスターと称される「ジョーダン・ブランド・クラシック」で共にプレーした過去がある。このとき、NBAのスカウトや球団幹部、その他多くのセレブリティが鋭い眼差しをコートに向けるなか、ワイルドキャッツのジョーカーはベンチスタートで13得点(ショット成功率55.5パーセント)、5リバウンド、5アシストという素晴らしい活躍を披露した。

 ゲーム後のメディアセッション中、ザイオンはヒーローに言及。そこで「タイラーは、僕たちの世代で最も過小評価されている選手だよ。彼は非常に滑らかで、確かなスキルを持つスコアラーだ。時々、気がつかないうちに得点しているかのように感じるね」と語り、相手の驚異になる存在であることを力説。これには、29位でサンアントニオ・スパーズに入ったケルドン・ジョンソンも「多くの人が彼(ヒーロー)を見落としていますね。マクダナルズ・オール・アメリカンに出なかったからかな。彼は素晴らしい選手で、とても良いチームメートです」と同調している。

世代トップのザイオンは以前からヒーローを高く評価していた[写真]=Getty Images


 この際、ヒーローは世代屈指のプレーヤーからの賞賛を受けて、「ザイオンは今、この国で最も優れた選手です。その彼からの言葉なので、とてもうれしく思います」と感謝をしながらも、「でも、僕は毎日練習を続けて、毎日向上するだけです」と先を見据えていた。そして、「ジョーダン・ブランド・クラシック」から約2年半が経過した今、ヒーローはチャンピオンリング獲得まで、あと数試合のところまで登りつめた。
 
 現在のヒートのケミストリーを見れば、3連続のジャイアントキリングも夢ではない。そのためには、過小評価されてきた2000年生まれのヒーローの活躍が不可欠だ。

文=Meiji

モバイルバージョンを終了