NBAの2020-21年シーズンが開幕した。チーム再編により、コート上の景色は昨季から一変。ブルックリン・ネッツの破壊力、ゴールデンステイト・ウォリアーズの苦戦など、しばらくは各球団の仕上がりと戦闘力を確認する作業が続きそうだ。
その一方で、バブルでのタフな経験や新天地への移籍を経て、今季もニューヒーロー誕生の予感が漂っている。米カルチャー誌『Complex』は、新シーズンの開幕にともない、2020-21年シーズンにブレイクが期待される選手7名をピックアップ。果たして、この中から今季のMIP(最優秀躍進選手賞)にノミネートされる選手は現れるのだろうか。
モントレズ・ハレル(ロサンゼルス・レイカーズ)
昨季のシックスマン賞を受賞したハレルは、禁断の移籍を経て、さらなる躍進が期待されている。ヒューストン・ロケッツ在籍当初はGリーグでプレーする時間もあり、ロサンゼルス・クリッパーズ時代はこのままチームの主力を担うと思われたが、カワイ・レナード、ポール・ジョージの二枚看板の加入で居心地が悪くなりかけていた。
ローポストでのスコアリング性能、ピックアンドロールからリングへと向かうダイナミズム、ゴール下でのパワフルなリバウンドは、チームに莫大なエネルギーをもたらす。その一方で、ハレルは大型センターと対峙した際のディフェンスが弱点とされているが、そこはフランク・ボーゲルが手を打つはず。アンソニー・デイビス、マルク・ガソルとのフロントコートトリオが輝けば、2年連続のシックスマン賞も夢ではない。
ケリー・ウーブレイJr.(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
クレイ・トンプソンを再びケガで欠いたウォリアーズにとって、ウーブレイJr.はスティーブ・カーヘッドコーチ(HC)の頼みの綱である。得点力は年々増し、古巣フェニックス・サンズでもデビン・ブッカーに次ぐ得点源を担ってきた同選手は、エースのステフィン・カリーにマークが集中する今、チームのスコアラーとして活躍が期待されている。しかし、開幕3試合の平均スタッツは5.7得点、1.0アシスト、フィールドゴール成功率17.5パーセント(スリーポイントは0パーセント)と低調で、1日でも早いコンディションの向上が要求されている。
それでも、要所でのハッスルには目を見張るものがある。221cmのウイングスパンを活かしたアグレッシブなディフェンスは、エース用の守備兵器として重宝できる。新天地への適応は骨を折る作業だが、ポテンシャルはあるだけに、ウォリアーズでの開花の可能性は十分にあるだろう。
ギャリー・トレントJr.(ポートランド・トレイルブレイザーズ)
絶対的エースのデイミアン・リラードとCJ・マッカラムのバックアッパーを務めるトレントJr.は昨シーズン、ロドニー・フッドやトレヴァー・アリーザを欠いたブレイザーズにおいて、ベンチから最も輝きを放った。スリーポイントの確率が高く、安定感ではムラの目立つカーメロ・アンソニー以上だった。
また、献身的なディフェンスも同選手が高く評価されているポイントのひとつ。メンフィス・グリズリーズと対戦した昨シーズンのプレーインでは、35分の出場時間で5回のスティールと2度のブロックを記録し、勝ち上がりに大きく貢献した。バブルの活躍を見れば、テリー・ストッツHCは今季、トレントJr.をセカンドユニットのファーストオプションとして計算しているはず。2年目のジンクスを乗り越えた新シーズンは、真価が問われる1年になるだろう。
ジャマール・マレー(デンバー・ナゲッツ)
「バブルで覚醒した選手」と言えば、誰しもがナゲッツの背番号27を思い浮かべるに違いない。オーランドではゾーンに入り続け、40得点オーバーを何度もやってのけた。あの場において、本質的にマレーを止めることができた選手は1人もいなかったと言える。
スタッツは、昨季のプレーオフに限定すると平均26.5得点、フィールドゴール成功率50.5パーセントにまで飛躍。今シーズンはまだ本調子にはほど遠いが、早い段階でコンディションが上向けば、MVP候補に名前が挙がっても不思議ではない。本当の意味でスター選手の仲間入りすることができるか否かは、今季の活躍にかかっている。
シェイ・ギルジアス・アレクサンダー(オクラホマシティ・サンダー)
クリス・ポール、スティーブン・アダムス、デニス・シュルーダーらを失った今、サンダーはSGAのチームになった。昨季の1試合平均19.0得点は、チームトップの成績。今季はチームの主役としてプレーすることになるため、選手としての成長は必至だろう。
その一方で、昨シーズンはフィールドゴールおよびスリーポイント成功率でルーキーイヤーの成績を下回ってしまったため、今シーズンは精度の向上にも期待。また、サンダーは同選手の弱点とされるフィジカルとディフェンス面でも成長を促しているとされている。
優れた成績の残しているのもかかわらず、SGAには伸び代ばかりを感じてしまう。2020-21年シーズン、サンダーにとっては我慢の1年になるが、その中でとんでもない才能が花開くかもしれない。
キャメロン・レディッシュ(アトランタ・ホークス)
2年目を迎えたレディッシュには、明らかに向上の兆しが見えて始めている。デビュー直後はNBAの適応に苦戦を強いられていたが、ホークスのシーズン終了直前21試合に限定とすると、スタッツは1試合平均14.6得点、スリーポイント成功率41.7パーセントと及第点以上のものだった。
フットワークとジャンプショットを重点的に強化している様子のレディッシュは、今季も好調な滑り出しを見せている。開幕2試合は先発に抜擢されており、プレータイムの増加はホークスからの期待と信頼の表れ。ボグダン・ボグダノビッチやラジョン・ロンドの加入で一気に選手層の厚みが増したホークスのロスターのなかでも、一昨年デューク大学の三銃士の一角を担ったレディッシュの飛躍には大きな注目が集まっている。
キャリス・ルバート(ブルックリン・ネッツ)
ルバートもマレーと同じく、バブルで存在感を放った選手の1人だ。バブルではスコアラーとゲームメイカーを任され、1試合平均23.1得点、6.8アシストという優秀なスタッツをマークした。
ケビン・デュラントとカイリー・アービングがロスターに復帰した今、ルバートにはシックスマンという新たな任務が与えられている。両者を休ませる時間帯や彼らの不調時にルバートを送り込むオプションがある心強さは、新人のスティーブ・ナッシュHCのストレスを和らげるに違いない。
昨シーズンのシュート分布では、ペイントエリアの占有率が55パーセントを超えており、突破力も折り紙つき。ネッツが放つ第三の矢は毎試合、対戦相手の驚異となるだろう。
文=Meiji