「俺はコービーのワークアウトを観察した」とグリーン
1996年にNBA入りを果たし、以後20年間ロサンゼルス・レイカーズ一筋で数え切れないほどの功績を残したNBAレジェンド、コービー・ブライアント。彼を語ろうとすれば、数多くの印象的なエピソードが浮かび上がるに違いない。その中でも、高校時代からストイックに練習に打ち込んでいたという話は非常に有名だ。
『NBC Sports』のダルトン・ジョンソン記者によれば、ゴールデンステイト・ウォリアーズのドレイモンド・グリーンがこのコービーのワークアウトについて言及したそうだ。グリーンは2012-13シーズンからプロキャリアをスタートしており、その新人時代に目にしたコービーの姿が極めて印象的だったという。
「コービーとの初試合で、もっとも際立ったエピソードは試合前の彼のウォームアップだったと思う」と語り始めるグリーン。「俺は一足早くウォームアップを終えていた。当時はルーキーだったから、(午後)7時30分の試合のために(午後)3時30分か45分には会場入りをしていたんだ。俺が早くウォームアップを終えると彼がコートへやってきたのだけれど、何よりも俺を驚かせたことがある。試合は夜の7時30分からなのに、何故彼は(午後)4時からワークアウトをしているのかとね」とコメント。そうして以下のように話の本題へと入っていった。
「そこで俺は座りながら彼のワークアウトの様子を観察した。どうしてそんなにも長くやるのか、理由を見つけるためにも。彼の40分くらいの練習を見終えた時、(試合前の)気持ちの高め方や肉体の調整といったものを見落としていたことに気が付いた。まだ新人だから早めに準備を切り上げていたけれど、それらを見落としてしまえばすべてお終いだ。俺はすべての事柄を見落としてしまっていたんだ」
対戦相手に容赦ない選手だったコービーには、狙った獲物を逃がさない有毒なヘビである“ブラック・マンバ”という異名があった。彼は試合前に闘争心を高めることをルーチンとしており、またケガの多かった肉体の調整も念入りに行って常に対処していた。「個人的にあの出来事は、まさしく腰を据えてコービーの姿を目に焼き付けた瞬間だった。それ以外の何でもない、ただそういう感覚だった」と締めくくったグリーン。偉大な選手になるため、最高のパフォーマンスを披露するために細部までこだわっていたコービーの姿を、ルーキー時代のグリーンはまざまざと見せつけられたことがうかがえるエピソードだ。
常に鬼気迫るかのような競争心の裏で、偉大な選手たちと同じ領域へとたどり着きたい、屈辱的なプレーや敗北などを糧にして練習に打ち込んだコービー。その姿に大きな影響を受けたのはグリーンだけでなく、ほかの選手たちや世界中のファンも同様だろう。彼がこの世界に遺した“マンバ・メンタリティ”は、概念として今もなお多くの人々の心で強烈に生き続けている。