2016年日本に新たに誕生したプロスポーツリーグであるB.LEAGUE。開幕戦はゴールデンタイムに地上波の生放送が行われるなど昨年のスポーツシーンの大きな話題となった。2つのリーグが統合し、新しいスタートを切ったことは日本のスポーツ界にとっても喜ばしい出来事だ。ただし、このスポーツ史に残る新リーグ誕生も関係各所の支えなくしては成り立たない。パートナー企業の支援が、今回の新しいエンターテインメント創出に一肌脱いだわけだが、素朴な疑問が沸きあがる。なぜバスケットボールを支援するのか――、B.LEAGUEオフィシャルタイムキーパーとしてバスケットボール界を支えるために手を挙げたカシオ計算機株式会社戦略統括部時計戦略部プロモーション室長の上間卓氏に話を聞いた。
インタビュー=村上成
写真=新井賢一、Bリーグ
――Bリーグのパートナーになられた理由を教えてください。
上間 バスケットボールの競技人口の多さ、市場、マーケットの大きさということが最初のきっかけでした。日本において、バスケットボールのマーケットはまだまだこれから。そこに入りこめていないというのが端緒になります。あとは、バスケットボール自体が世界的にはメジャースポーツにも関わらず、日本においての価値や地位が低すぎるなと感じる部分がありました。
――市場の魅力と、バスケットボール自体を盛りあげていきたいというこの2つがきっかけですね。
上間 そうですね。やはり我々もビジネスですから、最初は市場の魅力から行ったんですけれど(笑)。バスケットボールに関して言うと、女子はリオデジャネイロ・オリンピックでかなりいい成績を残しましたが、男子はオリンピック出場の確約が取れていない。せっかく一生懸命に競技に打ちこんできた選手たちが、次に行く道がなかなかないというのはどうなのか。Bリーグができることによって新しい道ができるのであれば前進していこうと思えるのではないだろうか、もっと応援していけば、バスケットボール全体の盛りあがりにつながるという気持ちもありました。
――新しい道を切り開いていきたいと思われたわけですね。
上間 はい。弊社の『G-SHOCK』はスポーツマーケティングを重視しています。そことの整合性が大前提ですが、G-SHOCKとの親和性という意味でもバスケットボールの市場は魅力的です。加えて、競技自体をもっと盛りあげていきたいという考えもありました。ですから、スポンサーとしての露出も『CASIO』でなくて、あえてG-SHOCKとしています。
――ショットクロックがG-SHOCKの形であったり、一工夫されていて伝わり方が違うのかなと感じました。
上間 バスケットボールは、ブザービーター(試合の終了直前に放たれ、ボールが空中にある間に残り時間が0となり、ゴールに入るシュートのこと)があったり、24秒以内にシュートを打たなければならないというルールがあり、“時間と戦う競技”という競技特性があります。G-SHOCKの持つ、“タフでスピーディ”というブランドコンセプトとの親和性も高いと感じています。
――ショットクロックに使うアイデアはカシオ側からの提案でしょうか?
上間 はい。パートナーのお話をいただいた時から、こういうのをやりたいと。普通に看板を出すだけではやっぱり、お互いにメリットがないですし、せっかく競技の親和性も高いのですから、G-SHOCKの持つコンセプトを出したかったので。
――24秒タイマーは目につきますし、コンセプトを打ちだすには良い掲出方法ですね。
上間 BリーグにもG-SHOCKの発信力を使っていただきたいので、ショットクロックのところにG-SHOCKを掲げているというのもあります。これからBリーグのファンを増やすために、G-SHOCKファンを取りこみやすいと考えているので。G-SHOCKは、世界中で年間800万個売れていますし、日本国内においても高い売上高を誇っています。
――年間800万個がすごい数字ですね。
上間 売上だけではありません。グローバルで言うとFacebookは500万くらいのファンがいますし、国内だけでも13万を抱えています。Instagramにも10万以上いますし、その発信力をうまく使っていただけるといいなと考えています。G-SHOCKの持つ発信力を使ってもらいG-SHOCK好きにバスケットボール、Bリーグを知ってもらえるとうれしいですね。
――G-SHOCKのブランド力がバスケットボール界に貢献できるということですね。
上間 そうですね。G-SHOCK好きでスポーツ好きの方は多いですし、バスケットボールはやはり見ていてカッコいいスポーツなので好きになってもらえると思います。そこでG-SHOCKをうまく使ってもらえると、今までのファン層の域を出て、新しい層がバスケットボール観戦にも来てくれるのではないかと。バスケットボールは競技人口は多いのですが、これまでは競技者層だけのスポーツで終わっていました。Bリーグができてこれからだと思います。バスケットボールはわかりやすいですし、ルールも複雑ではなく、初めて見る人も楽しめます。会場にいかに足を運んでもらって、実際に見てもらうかが本当に大事だと思います。
――Bリーグのパートナーになったことで、これから実現したいことはありますか?
上間 リーグに対してはG-SHOCKのブランドをうまく使ってくださいというのが一番です。G-SHOCKは国内だけでも年間に100万人近く購入する商品です。そういう人たちにBリーグを知ってもらいたいと考えています。ですので我々も店頭で、BリーグのPOPを作ったり、Facebookを全部Bリーグに合わせたデザインに変更したりしています。
――バスケットボールとの相互協力というのを意識して取り組まれているんですね。
上間 あとはBリーグの中でも、地方の活性化を図っていきたい。やはりチームが18チーム、18エリアあるというところが大きなメリットになっています。Bリーグとともにチームを盛りあげながら、地方を活性化していく。そういうところは、ビジネス的にもブランド的にも狙いどころです。Bリーグクラブのスポンサーというのは、地方の有名企業だと思いますし、それら地場の企業とのタイアップなど、いろいろ活性化しやすいと考えています。
――カシオとして、G-SHOCKとしてブースターやファンに伝えたいことはありますか?
上間 純粋に我々も、バスケットボールが好きなんです。本当に盛りあげていきたいんだというのを一番知っていただきたいですね。純粋にチームや選手を多くの方に知っていただきたい、広めていきたいという活動をしています。でもそれでは、あまりビジネスにはなりませんけれど(笑)。
――お話をうかがうと、スポンサードの考え方が独特ですね。
上間 そうですね。スポンサーというかパートナーになりましょうという形で対話し、今もパートナーと思って一緒にやっています。だからBリーグには結構無理を言っていると思います(笑)。
――ここまでのBリーグや日本のバスケットを見て、パートナーとして感じることはありますか?
上間 Bリーグの方々と話をしましたが、彼らが参考にする成功事例としてJリーグの開幕があります。結果としてJリーグがその後成功しているからなのですが、ただしJリーグも、開幕前からジーコ(元鹿島アントラーズ)が試合に出ていたり、そういうプロローグがあった中で開幕を迎えていますよね。この間のBリーグの開幕はまさにそのプロローグなんだと思います。
――Jリーグはプロローグなどがあっての成功だから、Bリーグもこれからさらなる成功が待っているはずということですね。
上間 そうですね。Jリーグは開幕時のスーパースターがものすごかったじゃないですか。それと比較すると、Bリーグにはスーパースターがいないかもしれません。助走期間もあまりなかった中で見ると、すごくいいスタートを切っていると思います。
――パートナーとしての2017年の抱負を教えてください。
上間 いよいよ今年からオリンピックが見えてくるので、2020年という一つのゴールに向かって、しっかりと地に足を着けた活動でサポートをしていきたいと思います。