2017.01.17

ソフトバンク株式会社にどうしてB.LEAGUEのパートナーになったのか聞いてみた

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2016年日本に新たに誕生したプロスポーツリーグであるB.LEAGUE。開幕戦はゴールデンタイムに地上波の生放送が行われるなど昨年のスポーツシーンの大きな話題となった。2つのリーグが統合し、新しいスタートを切ったことは日本のスポーツ界にとっても喜ばしい出来事だ。ただし、このスポーツ史に残る新リーグ誕生も関係各所の支えなくしては成り立たない。パートナー企業の支援が、今回の新しいエンターテインメント創出に一肌脱いだわけだが、素朴な疑問が沸きあがる。なぜバスケットボールを支援するのか――、トップパートナーとして、バスケットボール界を支えるために手を挙げた日本でも有数のインターネット企業、ソフトバンク株式会社のサービスコンテンツ本部本部長大島吾希洋氏に話を聞いた。

インタビュー=村上成
写真=新井賢一

――Bリーグのパートナーになられた理由を教えてください。
大島 弊社の孫正義(ソフトバンクグループ代表)は、常々スポーツで感動を与えたいと言っていますし、もともと川淵三郎(日本バスケットボール協会エグゼクティブアドバイザー Bリーグ名誉会員)さんと親しいので、以前から、「今後、新しくスポーツ団体を設立する時は声を掛けてください」という話をしていたそうで、今回、Bリーグ立ちあげの際に、お話をいただきました。

――もともと、孫さんと川淵さんの関係があったわけですね。
大島 そうですね。加えてまず、我々が考えるスポーツ市場について少しお話をさせていただきますと、世界大会やオリンピックに出場するトップ選手たちが、プロ野球選手並みの待遇を受けられているかと言われると、受けられていないスポーツビジネス環境が存在しています。では、プロスポーツ団体がその仕組みを解決できるようになっているかというと、なっていない現実があると考えています。逆に言えば、今の日本のスポーツ市場全体が、システム的にまだ成熟しているわけではないのです。この未成熟な市場の中で、インターネットを使って、より多くスポーツを露出し、いろいろな可能性を生みだすことができるのではないかと考えています。

――確かに、一部のスポーツを除き、まだまだ環境が整っていない競技がありますね。
大島 これからは、スポーツも企業支援から地域支援に変わって、その次が社会貢献のステップだと思っています。ソーシャルイシュー(社会的な問題や懸案事項)に対して、どのような貢献ができるのかというのが、次のスポーツの課題で、どんなに遠くにいても、SNSで交流することができる中で、スポーツも次のステップに行かなくてはならない状況になっていると思っています。例えば、テクノロジーが上がってきたから、利便性が増していくだけではなくて、もっとインターネットを介して、人に接していけるような、感動を生んでいくような仕組みをスポーツでも作れるのではないかと私たちは考えています。そういった中で、一つの競技として、バスケットボールというのがあって、川淵さんのご配慮により、バスケットボールで一緒にそういった世界を作っていこうということで、スポンサーをやらせていただいています。

――大島さんが思うBリーグ、バスケットボールのビジネス面での魅力を教えてください。
大島 バスケットボールは世界で最も“プレーする”スポーツの一つだと思いますし、日本だけでなく世界で親しまれているスポーツという点に、ビジネス的なポテンシャルがあると思います。アリーナのスポーツの中で、あれだけ展開が速くて、熱狂できるスポーツは今までに日本になかったですから、そういった意味では、飛躍的に伸びるスポーツだと考えています。それに、若い方たちが観戦に訪れるスポーツだと思っています。野球やサッカーを見る方たちの年齢層が上がっている中で、バスケットボールは若い方たちが子どもを連れて見に来ているんですよね。そういった意味では、若い方たちが担っていくスポーツだと感じます。

――Bリーグのパートナーとして、これから実現したいことは具体的にどういうものでしょうか?
大島 Bリーグとはいろいろとお話させていただいていますが、バスケットボールに携わって良かったなと思えるようなものをインターネットを使って作っていきたいということは話させていただいています。

――インターネットを使ってというのは、例えばどういうことですか?
大島 ウインターカップの選手名鑑を作りました。その選手名鑑は、Bリーグの選手紹介ページと同じようなインターフェイスにしています。これにより選手たちも、自分たちの将来が見えるし、トップまでつながっているように感じることができると思うんですよ。つながっているような世界観を描くことで、ソーシャルで拡散することができ、いろいろな人が見てくれるようになれば、高校生だけではなく、小学生や中学生もみんなで盛りあがれると思います。スコアボードみたいなスタッツデータは、細かいプレーまで実装するのは、まだまだ時間が掛かると思いますが、ある程度、誰もがわかるような仕組みを作ってあげて、バスケットボールに関わる人全員がわかるものが作れたら、すごく面白いと思っています。

――なるほど、その面白みというのは具体的にどういうことでしょうか?
大島 例えば、自分が小学生の頃はこういう選手だったけれど、高校生になったら、違うプレースタイルになっていた。でも、その傾向は憧れのNBAの選手と同じだったみたいな感じで、データで見ることができたら、モチベーションが上がるし、面白いと思います。田臥勇太選手(栃木ブレックス)がどのように成長していったのかがわかれば、自分も田臥選手みたいになれるのではないかという一種の指標ができるし、それによって未来の選手強化にもつながっていくと思います。今、『スポナビライブ』で放送していますが、試合を見ながら、自分の角度でデータを見るのは良いと思うんですよ。スマートフォンを持ってデータを見ながら選手のコンディションを見て、プレーを予想したりすることができるスポーツは日本にまだないと思いますし、日本で初めてICTを利活用したスポーツにしたいというのが我々とBリーグの目標です。

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――これまでの競技スポーツにはないエンターテインメント性を出していくのですね。
大島 そうですね。今でもTwitterなどのSNSでBリーグの各チームも自分たちの情報を拡散していますけれど、それは結果であって、リアルタイムの“臨場感”は拡散されていない。そういったものをインターネットを媒介して拡散して、Bリーグにもバスケットボールファンの方にも、バスケットボールのパートナーがソフトバンクで良かったなと思われるようなことを、このトップパートナー契約期間4年のうちに成し遂げたいですね。

――ブースターと呼ばれるBリーグファンに伝えていきたいと思うところはそのあたりですか?
大島 そうですね。どうしても私たちソフトバンクは通信会社、モバイル会社というイメージが強いんですけれど、私たちはもともとインターネットの会社ですから、子会社を含めて、スポーツに貢献するというのが孫正義の意思です。ソフトバンクがスポーツに貢献したいという熱量を、ブースターやこれからブースターになる方に、いかに伝えていくかが我々のチャレンジだと思います。

――9月22日にBリーグが開幕して、これから折り返しになりますが、パートナーとして、現在感じていること、これから期待することはありますか?
大島 私たちは、バスケットボール自体が思っていた以上に皆様に受け入れられているなと感じました。正直、リーグが開幕する前は大丈夫か、と言われていましたが、現在のところ、バスケットボール自体が受け入れられているし、Bリーグも両足を地に着けて、着々と進んでいるように感じます。そういった中でいろいろ課題もあるとは思いますが、ただ、日本のバスケットボール界もBリーグを含めて一枚岩になって、課題に対し、乗り越えていこうという体勢にはなっていますので、そんなに心配はしていません。

――これまでのところで、まず改善しなければならないなと感じている点はどこでしょうか?
大島 やはりバスケットボールがプロスポーツとして始まったということを知らない人が、まだまだたくさんいると思うので、そこをしっかり、日本バスケットボール協会を含め、努力したいですね。我々が価値を上げる活動が重要です。

――確かに、スポーツニュースなどでバスケットボールの結果を目にする機会はまだまだ少ないですね。
大島 そうなんです。そのためにはスター選手がもっと必要で、この前、田臥選手が沖縄初上陸でしたけれど、空港には出待ちがいて、試合でも他の選手よりも声援が多かった。少なくともそれぐらいの、田臥選手クラスの選手があと数人必要ですね。ただしバスケだけでの露出ではなく、人間性などいろいろなところを露出しなくてはならないと思いますし、地元のヒーローで終わってはいけないと感じています。そのためには、結果を出さないといけないですし、日本と世界の差はまだまだあるので、日本代表にはがんばってほしいですね。現在は、日本代表の試合がいつやっているのかもわからない状態ですし、渡邊雄太選手(ジョージ・ワシントン大学)や八村塁選手(ゴンザガ大学)みたいな優秀な選手は出始めていて、彼らはNBAのドラフトにもかかるくらい期待されているのにメディアにほとんど露出していない状況です。そういう選手たちが露出できるのではないかと思いますし、そういうことをやらなければならないと思っています。

――確かに、もう少し未来のスターにも目を向けていかないといけませんね。
大島 少し話は変わりますが、限られたスペースで、限られた集客力で、限られた広告価値でスポーツ興行を成立させるのは限界が来ると思うんですよね。野球ほど大きな箱で1試合あたり5、6万人収容でき、毎日開催していれば何とかなりますが、週2回で数千人しか収容できず、支援するのも地元の有力企業で、ファンも地元の方々だけだと限界があります。Jリーグはそこで困っているのだと思います。イングランドのプレミアリーグが違うのは、リーグ自体の価値を上げていて、海外の人が見たいと思う組織規模にしているところだと思います。ですので、リーグの価値が上がり、その配信権や興行権、グッズなどの複利収入が出ますが、日本は逆で、企業があって、配信権があって、ここに頼るリーグ運営があるので、なかなか文化としてスポーツが根付かないんだと思うんです。サッカーのプレミアリーグのような成功を収めるには、まだまだこれからですが、ステークホルダーみんなの協力があって、Bリーグの成功が早まるのだと考えています。

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