その瞬間は意外なほどあっさりと訪れた。川村卓也が先制点を取った直後、鹿野洵生から田渡修人へのパスが手の届く位置に飛んできたのを見逃さず、スティールからワンマン速攻でレイアップ。通算3000得点というマイルストーンにあと1点と迫っていた竹田謙の記録達成は、試合開始からわずか36秒の出来事だった。
Bリーグ第25節、横浜ビー・コルセアーズは三遠ネオフェニックスを87-84で撃破。中地区2位争いの真っただ中にいる三遠に手痛い一撃を浴びせた。今季初めてスターターで出場した竹田は、得点こそ第1クォーターに挙げた5点のみだったが、持ち味のディフェンスで勝利に大きく貢献した。
「ディフェンスで間合いを詰めて、マークする相手にできるだけボールを持たせないこと。オフェンスでもなるべくアップテンポになるように走ること。それだけを意識して試合に入りました。(最初の得点について)あれはたまたま相手がミスしたラッキーレイアップですが、相手に『良い入り方ではない』とは思わせたかな」
タイトなディフェンスから走る姿こそが竹田の真骨頂と感じている人は多いに違いない。しかし、「自分らしさを表現できた?」と問われたのに対し「そんなことは何にも考えてない。自分はディフェンスが目的で使われたので、それを意識しただけです」と、自分のスタイルではなくチーム内で求められた役割に全力を傾けたことを強調した。
このところ出場時間も伸びている竹田は、昨季もシーズン終盤はスターターを務めてB1残留に貢献。当然今季も同様の働きが期待されるところだが、本人はあくまでも自身のことは二の次だ。
「自分がどうこうよりも、チーム全体で良いディフェンスができることが一番。20分出るならもちろんその準備はしますが、他の選手もやってくれないと勝てないし、チームを引っ張る意識もない。チームとして戦う中で、自分もその1人」
とはいえ、通算3000得点という節目の記録は、アスリートの勲章としてやはり無視することはできない。最後に、試合前に記録を意識していたかどうかを尋ねた際に漏らした39歳の本音を紹介しておきたい。
「話題にするのをやめてほしいです。記事にもしないでほしい(笑)。これだけ長くやって3000だからむしろ恥ずかしいくらい。達成したからまた気持ちも新たにと思ったりすることも全然なく、『やっと明日からみんな静かになるなぁ』と、それだけです」
文=吉川哲彦