就任1年目の佐々HCが感じた「どうしても埋まらなかった隔たり」
5月19日、20日、船橋アリーナで「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017−18」セミファイナルの千葉ジェッツvs琉球ゴールデンキングスが行われた。
激戦の東地区を1位で通過し、クォーターファイナルで前回準優勝の川崎ブレイブサンダースを破った千葉と、西地区1位でチャンピオンシップに進出した琉球の一戦は、破壊力抜群の速攻(1試合平均13.4得点/リーグ1位)を武器にリーグを席巻した千葉と、リーグ随一の堅守(レギュラーシーズン1試合平均67.7失点)を誇る琉球の“矛・盾”対決となったが、接戦の末、矛が盾を穿ち、千葉がファイナル進出への切符を手に入れた。
琉球にとっては第1戦は61-74、続く2戦目も64-72といずれもロースコアゲームとなり、自チームが描くゲームプランどおりの展開となったものの、結果は千葉の2連勝となった。セミファイナルに相応しい好ゲームとなったこの対戦の勝敗を分けたポイントはどこにあったのか、試合後の琉球佐々宜央ヘッドコーチの言葉から振り返ってみたい。
佐々HCはセミファイナル敗退後の記者会見にて「千葉のファウルも多かったが……」との記者の問いに対し「(琉球が目指す)ゲームプランとしてはうまくいっていた」と明らかにした。千葉最大の持ち味である堅守速攻の起点となるリバウンド争いにおいて、2試合目ではサイズに劣る琉球がわずかに上回ったのは、千葉のビッグマン2人(レオ・ライオンズ、ギャビン・エドワーズ)を早いタイミングでファウルトラブルに追いこんだことが要因だ。これにより琉球は千葉が得意とする速攻を封じ、自軍のペースで試合を運ぶ我慢比べに持ちこむことに成功したのだが、結果、千葉は勝利を納め、琉球は敗れることになった。
この結果について佐々HCは「リバウンドをがんばった中で、ターンオーバーが14……。そのまま直接レイアップに行かれてしまうようなターンオーバーが出てしまう“チームの質”という部分を上げきれなかった」と指揮を執る自身を責めつつ、シーズンをとおして苦慮したターンオーバーの数と、その質が勝敗を分けたと分析した。
佐々HCが挙げたもう1つの敗因は「プレーをシュートで終えられるのか、終えられないのか」の差だ。バスケットボールはリズムのスポーツと言われ、良いリズムでパスを受け、自分のリズムでシュートを打つことで気持ち良く攻撃を終えることができる。この積み重ねが生みだすゲームの流れが、勝敗を決する大きな要素となるわけだが、守備側にとっては、逆に、いかに相手に気持ち良くプレーをさせないような対策を取ることができるのか、相手の攻撃権を消化不良のまま自チームへと移すことができるかは重要な駆け引きであり、勝負の分水嶺となる。
佐々HCが「うちはショットで終えられないケースが出てしまい、(シュートで終えるという点において、千葉とは)天と地ほどの力の差がある」と語ったとおり、シュートが入らないまでも、シュートまで持って行くことができればその後の展開が違ってくる。その後は運や個人の技量によることも大きく、その意味で厳しいディフェンスをかいくぐるオフェンスのセットや個々の選手がフリーとなった状況を見つける視野の広さ、そしてその一瞬ですぐにシュートが打てる状況を作るパスの精度において、千葉のレベルが1つ上であったことは否めない。2試合を通じて好ゲームとなったセミファイナルだが、結果として、千葉の底力が上回ったという印象も、このあたりに起因するのだろう。
就任1年目でチームをセミファイナルまで導いた指揮官は、千葉との激戦を振り返り「重要な場面でフリースローを2本落としてしまうなど、そういう小さいところ。小さなことがどれだけデカいのか……。シュートを決めきるというよりは、そのプレーをやりきるということを、(セミファイナル2戦目の)今日は、1年目のチームとそうではないチームの違いを感じました」と率直に語った。
スコア以上の差を感じた西の王者は、この小さくも大きな隔たりをどのように埋めてくるのか。悔しい思いをした琉球のメンバーと、改めて課題を認識した佐々HCの手腕に期待しつつ、彼らのリベンジが、Bリーグ3年目の大きな楽しみの一つとなった。
千葉がファイナルを戦うA東京とは2勝4敗の対戦成績
かくして、西の王者を倒した千葉は、東地区で切磋琢磨してきたアルバルク東京とファイナルで激突することとなった。
千葉にとって、A東京はレギュラーシーズン2勝4敗と苦手にする相手だけに、栄冠を勝ち取るのは容易ではない。琉球との間に存在したサイズの優位は、竹内譲次という日本代表にも選出されるビッグマンを抱えるA東京との間では計算できず、チームケミストリーの構築という側面でも、同じメンバーで長くやっているという点において、A東京も遜色がない。レギュラーシーズンの相性だけで言えば、優位に立つのはA東京だと言ってもいいだろう。
勝負の分かれ目となるのは、A東京が繰りだす愚直なまでのピック&ロールに対し、どれだけ千葉のビッグマンがファウルを我慢して対応できるのかだろう。インサイドのサイズやスキルとしては互角と言ってもいい中で、審判と“ケンカ”をせずに、先にゲームの流れに適応した方に勝利の女神が微笑む可能性が高い。
Bリーグ2シーズン目の最後の試合、実力伯仲の両チームだが、栄冠を手にするのは一体どちらなのか。最後まで国内バスケットボールを楽しむことができるBリーグの誕生に改めて感謝を覚えつつ、もうすぐ終わってしまうことによる「Bリーグロス」を今から感じ得ないが、しばらくは余韻に浸ることができるような素晴らしいゲームを期待したい。
文=村上成