2018.05.14

『刀折れ矢尽き』た京都ハンナリーズを危なげなく打ち破ったアルバルク東京

2連勝でセミファイナルに進出したアルバルク東京[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

 5月13日、「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」クォーターファイナルの第2戦がアリーナ立川立飛で行われ、東地区2位アルバルク東京は西地区2位の京都ハンナリーズと対戦した。

 チャンピオンシップ進出の立役者となったジョシュア・スミスの出場停止を受けて、チーム一丸となった京都に苦しみながらも、後半の逆転劇で初戦を82-75と制したA東京。前日の試合での退場を受けて、出場停止処分となった攻守の要ジュリアン・マブンガを欠く京都の粘りに手を焼くも、続く第2戦も78-69と連勝し、セミファイナルへと駒を進めた。

 A東京と京都によって争われたクォーターファイナルは他会場と違い、一方のチーム、つまり京都の主力が長期出場停止を受けたことにより、戦前から明らかな戦力差が生じており、A東京にとっては”勝って当然”と思われるような状況にあった。京都はまさかのマブンガを欠いての2戦目に臨むこととなり、コーチ、選手の中にはやりにくさがあったことも想像にかたくない。実際に昨季まで京都に所属していた小島元基は「正直、少しやりにくかったです」とその心情を吐露している。

古巣との対戦に挑んだ小島[写真]=B.LEAGUE

 また、第2戦終了後の記者会見では、A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチが「中心選手がいない状況だと、他の選手がステップアップする傾向がある」と語ったとおり、過去にも様々なスポーツシーンで、戦力に勝る者がその慢心から敗れた例も1つや2つではない。その意味で、下馬評どおりに勝ちきって、危なげなくセミファイナルへと駒を進めたA東京のチームマネジメントは高く評価されるべきものだろう。

 ルカHCが警戒したとおり、クォーターファイナル2試合目でも、チーム構成として圧倒的に不利な状況にあった京都だったが、マーカス・ダブ永吉佑也、そしてルーキーながら司令塔を務める伊藤達哉らが最後まで意地を見せて、最大20点差を9点まで詰める驚異の粘りを見せ、会場に詰めかけた観客を最後まで試合に引きこんだ。京都の出場選手全員が、ほとんど足が動かない状態でも最後までマークマンに食らいつく雄姿に、遠路はるばる応援に駆け付けた京都のファンのみならず、A東京のファンからも試合後に温かな拍手が送られた。

ルーキーながら司令塔としてチームを引っ張った伊藤[写真]=B.LEAGUE

 しかし、試合をとおしてみると、きっちりと出場時間のタイムシェアをしながら、危険な場面をほとんど作らなかったA東京の圧勝と言ってもいいだろう。試合後に京都の浜口炎HCが「選手はよくボールを追いかけてましたし、最後までしっかり出しつくせたんじゃないかと思う」と自チームの奮起をねぎらいつつも、「あれで勝てるという簡単な世界ではない」と語ったのは非常に客観的な分析だと言える。

 ある意味で危なげなく次のステージへと駒を進めたA東京を待ち受けるのは、シーホース三河。ディフェンディングチャンピオンの栃木ブレックスを打ち破りセミファイナルの舞台へと駒を進めた難敵に、A東京が挑むことになる。

 クォーターファイナルにおいて、A東京は京都が本来強みであるはずのインサイドの軸を欠いてゲームに臨まざるを得なかったことにより、反対にそのインサイドに圧倒的な優位を持って試合を運ぶこととなった。しかし、想定よりも負荷が少ない状況で次のステップへと進んだA東京のインサイド陣だが、次に待ち受けるのは三河の桜木ジェイアールアイザック・バッツコートニー・シムズらサイズも経験も十分な強敵になる。特に4番ポジション(パワーフォワード)でプレーをする桜木は今季好調を維持しており、この桜木を竹内譲次とジャワッド・ウイリアムズのペアがしっかりと押さえることができるのかは大きなカギとなりそうだ。竹内は京都との2戦でシュートタッチがいいとは言えなかっただけに、ディフェンスでの貢献に加え、攻撃面での奮起も期待される。また、京都との第1戦、岡田優介に連続3ポイントを許したように三河の金丸晃輔に長距離砲を浴びるようだと、セミファイナルの勝ち抜けは厳しくなる。2戦目に菊地祥平馬場雄大をきっちりとマークさせて、岡田を無得点に押さえこんだように、リーグ有数のシューターである金丸のアウトサイドを抑えるかがファイナル進出のために不可欠な作業となるだろう。

第1戦19得点9リバウンドとインサイドで存在感が目立ったアレックス・カーク[写真]=B.LEAGUE

 泣いても笑っても2017-18シーズンで楽しむことができるのはセミファイナルとファイナルの2つのステージだけとなった。クォーターファイナルで散ったライバルの分だけ、次のステージを戦うチームには素晴らしいゲームを期待したい。

文=村上成

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