2018.05.12

アルバルク東京の田中大貴、チャンピオンシップで見せたエースの自覚と責任感

A東京vs京都は、田中の浮き沈みがそのまま試合内容に出た形となった[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)

 5月12日、「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017−18」クォーターファイナルの第1戦がアリーナ立川立飛で行われ、東地区2位アルバルク東京は西地区2位の京都ハンナリーズと対戦した。

 得点(1試合平均16.8得点)とリバウンド(同9.4本)でチームトップでもあり、208センチ138キロの巨体でインサイドを支配するジョシュア・スミスを出場停止で欠く京都に対し、下馬評では優位と思われたA東京だったが、第1クォーターだけで岡田優介に3本中3本の3ポイントを献上するなど、相手に試合の主導権を握られて、前半を終えて34-45で試合を折り返す苦しい展開となった。

 この重苦しい展開を払拭したのは、A東京の絶対的エース田中大貴だ。前半は自身がゴールへ切りこんでは、チームメイトにボールを散らす役割を担っていた田中だったが、後半に入ると一気にギアを上げて、3ポイントと鋭いドライブで5点を縮める。田中の作った流れに安藤誓哉アレックス・カークも続き、第3クォーター途中で竹内譲次の得点でA東京はついに逆転。重要なチャンピオンシップの初戦を82-75の逆転勝利で飾る原動力となった。

 終わってみれば、チームトップタイとなる19得点に加え、4アシストを上げた田中は試合後の取材に応じると「これがレギュラーシーズンだったら、あまり良い勝ち方じゃなかったかもしれないけれど、よく持ち直しました」とほっとした表情を浮かべた。続けて、後半開始早々に積極的にオフェンスをしかけたのは、マークをしていた京都の岡田に連続得点を許した責任を感じたのかと問われ「(岡田は)距離に関係なくシュートを打ってくるのは、事前のスカウティングで分かっていたのに、自分が間を空けてやられてしまって、シュートを決められてしまった。そこがそのまま前半のビハインドにつながったと思っている」と前半の苦戦を招いた原因が自身にもあることを認めた。そのうえで「なんとか、(チームの)空気が重かったので、第3クォーターで同点まで持って行きたいと思っていましたし、後半の開始からギアを上げて、自分でオフェンスを仕掛けました」とやり返す気持ちの表れが、後半開始早々の逆転の序章につながっていたことを明らかにした。

 また、「若いメンバーは、自分のああいう姿を求めていると思いますし、自分に続いてくる選手がいてよかったと思います」と笑顔を見せた。チームの大黒柱を欠く中で、目の覚めるような長距離砲を沈めた京都の岡田も素晴らしかったが、岡田を抑えきれなったことでスイッチを入れて、チームを逆転に導いたエース田中のけん引力もまた見事の一言に尽きる。

チャンピオンシップながら客席は空席が目立ったアリーナ立川立飛[写真]=B.LEAGUE

 A東京と京都のチャンピオンシップ第1戦は、意地と意地がぶつかりあう好ゲームではあったものの、券売期間の短さなどもネックとなり、少し寂しい1629人の観衆となった。ただし、敵地へと駆け付けた京都ファンの声援も、重要な一戦に声を張りあげるアルバルクファンの歓声も迫力は十分。会場全体が震えるような興奮が味わえるのは、短期決戦の醍醐味だ。5月13日の第2戦、当日のチケットも入手可能だという。しびれるような興奮と、手に汗を握る体験をすることができる貴重な機会を逃す術はない。

 バスケットボール特有の激しい攻守の入れ替わりやスピーディーな展開を、ぜひこの真剣勝負の舞台で楽しんで欲しいものだ。

文=村上成

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