「責任は自分にあると思うし、なんとか勝たせてあげたかったんですけど……しょうがないです」
そう言葉を絞りだして口を真一文字に結んだ小林慎太郎の目は、すでに真っ赤になっていた。
来季の運命を握る「B1・B2入替戦 2017-18」、2年越しの夢を叶えるべく臨んだ熊本ヴォルターズの挑戦は、富山グラウジーズにあと3点届かずに幕を閉じた。小林はその責任を、キャプテンという立場と3得点に終わった自身のパフォーマンスの両面で一身に感じていた。それも、2週間前の「B2 PLAYOFFS 2017-18」1回戦、秋田ノーザンハピネッツとの試合で足を負傷していたにもかかわらずだ。
「注射を打って試合に出た先週の(Fイーグルス)名古屋戦でまた痛めてしまって、今週は思うように練習できなかったんですが、(保田尭之)ヘッドコーチと相談してしっかり調整してこの試合に臨みました。ケガしていなかったらいいパフォーマンスができたかというとそうではなくて、僕自身は今日100パーセントでした。相手のディフェンスに簡単にシュートを打たせてもらえなかった、それで負けてしまったというのが正直な感想です」
敗戦という結果に対する責任を1人で背負おうとする小林。「多くの支えに対して、プロ選手としては結果で恩返しするしかないんですが、この3点という大きな壁を乗り越えられなかったことが心から申し訳ない」と自らを責めるのは、その責任感の強さゆえだ。また、「来季またここまで来られる保証もないし、今回勝てなかったのは僕にとっては大きな痛手というか、惜しいでは済まされない大きな差がある」と危機感も感じている様子だった。
しかし、2年前に熊本地震を経験し、チーム消滅の危機からはい上がってきた小林は、敗戦の事実を受け止めながらも前を向くことを決して忘れない。この2年で培った強いメンタリティーを武器に、小林は前進し続ける。
「長いシーズン、テレビや雑誌などでも取りあげてもらいましたし、多くの方に声を掛けてもらって本当に励みになりました。それを励みにチーム一丸となってここまできましたし、負けてしまいましたけどここで歩みを止めるわけにはいかない。それは復興も同じで、すべては一歩ずつ前に足を出すしかない。これが復興への道であり、僕たちの成功への道。今日はつまずいてしまいましたけど、僕たちはこういう危機を何回も乗り越えて強くなってきたので、また楽しみに待っていてください。僕は必ずこのチームを強くして帰ってきます」
文=吉川哲彦