11月に入り、オーバーカンファレンスによる強豪チーム同士の対戦が繰り広げられている。第7節、11月2日・3日に西地区1位の琉球ゴールデンキングスが昨シーズンのチャンピオン、アルバルク東京と対戦。琉球にとってはその前週に川崎ブレイブサンダース、さらに翌週には千葉ジェッツという強豪チームとの戦いが続く中、自らの実力を計る絶好の機会であり、ここをどう乗り切るかが、今シーズンの優勝争いに関係してくると言っても過言ではなかった。そして琉球はA東京に連勝を果たすのだが、これはA東京にとっては2シーズンぶりの同一カード連敗であり、琉球にとっては価値ある勝利となった。
今シーズン、地元の沖縄でのプレーを選んだ並里成。沖縄市立コザ中学出身の並里にとって、「(琉球のホームが)生まれ育ったところなので、過ごしやすいですし、やっぱり僕が頑張らないといけないなという気持ちでやっています。地元も地元ですし」と、水を得た魚のような躍動ぶりだ。
ここまでの戦いぶりを見れば、並里の加入が琉球に化学反応を確実にもたらせたと言えるだろう。琉球は本来の武器である固いディフェンスはそのままに、ファンタジスタと称される並里がボールをプッシュし、キラーパスからの速攻で相手チームを震え上がらせるようになった。その畳みかけるようなオフェンスは今年の琉球のスタイルでもある。
並里のパートナーとなる岸本隆一と、並里と同様に移籍してきた橋本竜馬の活躍も忘れられない。この3名のリーグを代表する司令塔が、時には2ガードとしてコートに立つこともあれば、ベンチからゲームを立て直すこともある。実際、A東京に連勝を果たした第2戦では、第4クォーターの終盤、並里はベンチに戻っていた。この試合では岸本が値千金の3ポイントを2本決めて勝利を呼び込むが、大事な場面で並里がコートにいなくてもチームが動揺することはない。つまりチーム力アップという化学反応が起きているのだ。
試合終了の瞬間、並里はベンチを飛び出し、割れんばかりの笑顔で岸本を迎えた。「とてもタフな試合でしたし、どうしても欲しかった連勝だったので、(岸本)隆一がビックショットを決めた時に勝てるかなと思って。夏から準備してきたチームディフェンスが勝てたから余計にうれしかったです」と、並里は笑顔でそのシーンを振り返った。
A東京戦を迎えるにあたり、チームとして周到な準備を行ってきたという。「アルバルクは昨シーズンの優勝チーム。自分たちが今シーズン優勝するには倒さなければいけない相手です。それもあり、プレーオフのような感じで試合に入りました。チームがまた1つレベルアップした2日間だったのかなと思います」。そして「連勝しないと優勝にはたどりつけません。こういう素晴らしいチームを倒すために僕も橋本(竜馬)も琉球に来たので、そこは長いシーズンですが大きな勝利だったと思います」と並里はこの勝利の意味を熱く語ってくれた。
佐々宜央ヘッドコーチの下で初めてのシーズンを送る並里だが、そのチーム作りは肌に合っているようだ。「佐々HCは他の選手も含め、僕にも色々と要求をしてくれます。それにこたえるように選手は一生懸命練習に取り組み、コートでそれを遂行する。僕にはそういうコーチ(のスタイル)が合っていると思います」。
悲願の初優勝の向けて着実にチームを強化してきた琉球。開幕して約1カ月、佐々HCのバスケが新戦力人浸透するにつれ、強さを増していると誰もが思うところだろう。それがレギュラーシーズンを終えた時、さらにどのように成長したチームになっているのか。非常に楽しみでならない。
文=入江美紀雄