2018.11.04

万全な対策を練り、それを遂行した琉球ゴールデンキングスが収穫の多い連勝を果たす

昨季王者のA東京から2勝を手にした琉球[写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部

岸本隆一が値千金の3ポイント2本でA東京に連勝

岸本は、3ポイントラインから多少離れた位置でも容赦なく3ポイントを射抜く[写真]=B.LEAGUE

 アルバルク東京琉球ゴールデンキングスとの第2戦は11月3日、チケット完売のアリーナ立川立飛で行われた。前日の第1戦では、第1クォーターにスタートダッシュに成功した琉球がA東京の得点を50点台に抑え先勝。連敗の許されないA東京が第2戦にどのように臨んでくるかに注目が集まった。しかし、A東京の馬場雄大が体調不良で欠場することが試合前に発表される。その日の馬場は会場には赴いたが、試合前には帰宅。暗雲が立ち込めた。

 琉球はスタートラインナップを代え、A東京のオフェンスに対する準備を行ってきた。この日もA東京が得意とするピック&ロールからの合わせのパスを何度もカット。ゴール下へのパスも組織的に守り、第1クォーターは琉球がリードを奪う。それでもA東京は田中大貴がアシストとシュートでチームをけん引。第2クォーターを終え、34-31と3点リードで前半を折り返すことに成功した。

 第3クォーターに入ると、琉球がディフェンスのプレッシャーを高める。A東京はハードなショットを強いられ得点が伸びていかない中、残り6分42秒に菊地祥平がテクニカルファウルを宣告されると、流れは琉球に傾いていく。A東京は我慢の時間帯が続くが、琉球はゾーンディフェンスを繰り出して主導権を渡さない。A東京にとって不運だったのは、小島元基が第2クォーター、ディフェンスの際にスクリーナーに激しくぶつかりコートに倒れて交代。後半はベンチに座っているものの、大事を取って欠場。代わりに齋藤拓実がコートに立ったが、すかさず琉球は揺さぶりをかけた。

 第3クォーターの得点は24-13と琉球が11点もリード。勝負を決める第4クォーターに入り、琉球はジェフ・エアーズが2ポイント2本も含む8得点をあげると、この試合最大となる10点ものリードを奪っていた。ただ、試合はまだまだ終わらない。エアーズのシュートを決めた直後、A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコートは後半最初のタイムアウトを請求。追い込みのために一呼吸を入れた。ここからA東京はザック・バランスキー竹内譲次の3ポイントで追い上げを見せ、残り2分42秒にはアレックス・カークのフリースローでついに同点に追いついた。

 勢いに乗るA東京はこのままスパートを続けるかと思われた。しかし、次の攻撃で田中がまさかのターンオーバー。その直後、琉球の岸本隆一が3ポイントをたたき込むと、ルカHCは2度目のタイムアウトでゲームを止める。A東京は齋藤のレイアップで入れ返すも、岸本が残り39秒、3ポイントを再び突き刺し4点リードを奪う。その後、琉球はA東京のファウルゲームをいなしゲームセット。昨シーズンのチャンピオンから2連勝を果たした。

A東京はホームで勝利できず3連敗[写真]=B.LEAGUE

チームの成長を感じる琉球の佐々HC

 A東京がホームで同一カード連敗を喫したのは優勝した昨シーズンになかっただけに、会見に現れたルカHCもショックに色を隠せなかった。「とてもフィジカルで厳しい試合だった。我々も集中力を切らさずについていったが、試合を決める終盤、岸本選手に3ポイントを2本決められた。それが敗因だ」。

 A東京対策を準備し、それを選手たちが遂行したことに佐々宜央HCは、対照的に満足気な表情を見せた。「昨日とは違う展開になり、(田中)大貴と(アレックス)カークの2メンゲームにやられる場面もあったが、大貴に調子よくバスケをさせなかったと思う」。ただ、佐々HCも手放しで喜んでいるわけではない。「馬場がいないしA東京さんはケガ人もいて決していい状況とは言えない。次回の対戦もすぐに待っているので、慢心しないようにしないと」と、2週間後、ホームの沖縄市体育館で行われる次戦に心を引き締めていた。

 前節は川崎に1勝1敗、そして今節はA東京に連勝と、琉球が強豪チームに互角以上の戦いを見せている。両チームとも万全な状態ではなかったと言えるが、琉球も攻防の要である須田侑太郎を欠いての勝利だけに、その評価を下げる必要はないだろう。A東京得意のピック&ロールに対する対応、ゾーンディフェンスを交えたプレッシャーの強いディフェンス、さらには並里成を軸とした多彩な攻めが昨シーズンのチャンピオンを打ち砕いた。

佐々HCは開幕直前に獲得したエアーズの存在が大きいとも話す[写真]=B.LEAGUE

 それを支えているのが開幕前に獲得した新戦力だと佐々HCは語る。「心の強さを持った橋本(竜馬)やジェフ(エアーズ)が大きい。最後の場面でも並里を出さなくても乗り越えることができた。その選手の調子が悪くても出し続けなければいけないチームもあると思うが、うちは交代しても力が落ちない。誰が出ても勝ちたい意欲は変わらない。今日の試合でも最後の競った場面で岸本に打たせるという意志の統一ができていた。これは確実にチームの成長と言える」。

 A東京に連勝という大きな財産を得て、琉球は11月7日のライジングゼファー福岡戦を経て、来週は千葉ジェッツと対戦する。琉球の強さを計るまさにまたとないカードだ。佐々HCが千葉対策でどのような準備をしてくるのか、それも楽しみだと言える。


文=入江美紀雄

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