2018.11.05

真のビッグクラブへの道を歩むアルバルク東京②「将来のプロを見据えた育成の現場。ユースチームの基礎作りを任された塩野HCインタビュー」

アルバルク東京U15チームのヘッドコーチを務める塩野竜太氏 [写真]=山口剛生
バスケットボールキング編集部。取材歴は20年を数え、これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、今年も氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

アルバルク東京の恋塚唯GMがチームを成長させる要素の1つとして重要性を語った育成。今シーズンからU15のユースチームがスタートしたが、その現場を任されたのが塩野竜太ヘッドコーチだ。まだ20代でありながら、学生時代より様々な環境でコーチングを行ってきた経歴を持つ。その塩野HCに、塩野HCならではの育成方針をうかがった。

取材=入江美紀雄
写真=山口剛生

第1期生はチームの文化を築いていく選手をセレクト

練習はトップチームと同じトヨタ府中スポーツセンターで行われる [写真]=山口剛生


――コーチを始めたのはいつから?
塩野
 高校2年生の時です。もちろん高校はプレーで頑張るつもりでしたが、ケガをして一度長期的に練習ができなくなり、マネージャーになってトレーナーのようなことを始めました。そのうちBチームのコーチのようなことをするようになって。今振り返れば、その時がコーチを始めた時だと思います。

――大学では?
塩野
 大阪体育大学に進んで、1年生の時にはそれまでケガのことから色々学んだことを活かして、トレーニングを頑張って選手として復帰しました。しかし、2年生になる時に誰かマネージャーを選ばないといけなくなって。真面目にトレーニングはしていましたが、でも実力はもちろんブランクもあって全然高くなかったので、不本意ながらマネージャーに選ばれてしまったという感じですね。でも、今から思うと貴重な経験をさせてもらいました。

 大体大卒業後、大阪教育大の大学院に進みましたが、その時にはプロのコーチになろうと決めていました。大学院に通いながら、大阪商業大学のアシスタントコーチとして、勉強させていただいていました。その後、大阪エヴェッサの仕事をお手伝いするようになり、そこでプロのバスケの世界に足を踏み入れました。その後は大学院を中退し、千葉ジェッツ、そしてWリーグのアイシンAWにお世話になりました。そして、アルバルクにはNBLの最終年と、Bリーグの初年度に伊藤拓摩ヘッドコーチの下でアシスタントコーチをさせていただきました。

――経歴をうかがっていると、当初は部活動の顧問を目指そうと思っていたのですか?
塩野
 最初はそうです。でも、教育実習などを経験して、ちょっと学校の現場ではどうやら自分がやりたいようなことは、制限があって難しいのではないかと思うようになって。そしてプロのコーチになっていくわけですが、スポーツを通して子ども達に力を与えたいという思いを常に持っていました。

――アルバルク東京のユースチーム、U15はどのような構成になっていますか?
塩野
 中学1年生のみの12名です。今後U18のユースチームも設立予定ですが、1、2年で環境を整備するのは難しいと考えました。そのため、15歳を入れてしまうと、実際に指導できるのが1年間のみになってしまう。少なくても3年は育成できる状態にしたいということもあり、中学1年生だけにしました。

A東京のU15チームは中学1年生12名が所属している [写真]=山口剛生


――練習は週何回ですか?
塩野
 現在は、メンバーが中学1年生ということから、火・金・土の週3回練習が基本で、日曜日にたまに練習や練習試合が入ることもあります。練習時間は平日が1時間45分で、土日が2時間15分程度です。

――メンバー選考の方法はトライアウトですか?
塩野
 3次までセレクションを行いました。選考基準は、まずはしっかりアスリートとしての基本ができているか。次に僕らが考えるファンダメンタルがある程度満たしているか。それらをクリアした中で、プレーにおけるチームワークの部分で適応できる可能性があると感じる子ども達を選びました。

――端的に言えば個人技がうまい子ばかりを集めたわけではないということですね。
塩野
 そのとおりです。私たちの考えは彼らが第1期生ということもあって、チームの文化づくりというものもすごく重要になると思っていました。チームワークを大切にするという価値観を体現してくれそうな選手を選んだつもりです。

――なぜその文化にこだわったのですか?
塩野
 バスケットボールという競技がチームスポーツであり、僕はそこがすごく丁寧に扱わないといけない観点だなと思っています。だから個人も当然重要ではあるのですが、例えば長いシーズンを戦うプロチームで、12名で構成されたロースターがいた時に、普段の練習からプレータイムが12番目の選手のプレーも高めようという意識を持てるか。これがプロバスケ選手としての能力としてもすごく重要だと考えています。長いシーズンを戦っていくうえには、個だけでは勝てません。もちろん個人の技能を高めることは欠かせませんが、チームとしてどのように戦っていくかの意識を育てていく。純粋にプロバスケ選手の卵として重要な能力だと思っています。

将来のプロを育成するため選手自ら気付いていく指導を

――中学1年と言えば、成長期でありながら、個人差も大きいと思います。
塩野
 そのとおりです。現段階では他のスポーツなどにも通ずるようなアスリートとしての素養をまずしっかり身につけてもらいたいという考えの下、実際に体を動かして練習している1時間45分のうち、45分はバスケットボールを使わない、アスリートとしての基本を身につけてもらうトレーニングをしています。

トップチームでもトレーナーを務める荒尾裕文氏に直接指導してもらえるのも大きな特徴だ [写真]=山口剛生


――残りの時間がバスケの練習ですか?
塩野
 はい。ただほとんどがゲーム形式です。ここではとにかく細かく指示をしないように心がけています。自分たちが考えてプレーすることを大切にしています。時には思うようにプレーできずに互いに不満を持ち、怒ったり、ケンカが始まることもありますが、それも経験の1つだと思っています。そこからどのように学んでいくか。相手やチームメイトがどう考えるかも、一度経験をしなければわからないですから。包丁を使うにしても丁寧に使わないと指などを切って痛い思いをする。そういうことは経験をしなければ本当には分からないですよね。

――ただ、その中からプロを目指す、プロになる子が出てくるわけです。
塩野
 もちろん目的はそうです。日々起こっていることにとらわれすぎてしまうと、子ども達も僕たちも不安になってしまいます。しかし、1カ月、2カ月前のことを考えると劇的に変化している。なので、今できてないことではなく、何ができるようになったかというとこに目を向けようとスタッフの中で言ってやっています。

塩野HC(写真中央)をサポートする島ノ江耕平(写真左)と中村領介(写真右)の両アシスタントコーチ [写真]=山口剛生


――スクールも見られていると聞きました。こちらは小学生が対象ですか?
塩野
 小学生です。2学年ずつ、3カテゴリー(U8、U10、U12)で行っています。

――指導方針はどのようなものですか?
塩野
 基本的にはユースと違いはありません。やっぱり楽しく、適切な環境や状況設定のゲームにしっかり取り組んでいればバスケはうまくなると考えています。年代に応じて練習内容を設定しているだけであって、競技力のレベルに応じて変える必要性はあまり感じません。

――将来はどのような青写真を描いていますか?
塩野
 多くの子どもに力を与える、子どもの成長に貢献するという、僕が思うプロバスケクラブのあり方を体現したり、発信する立場になるという意味で、まずしっかりこのクラブの育成環境の土台を作り、その後にはヘッドコーチや、クラブの経営にも関わっていくような立場になっていきたいと思っています。というのも、子どものスポーツ環境に関しては、まだまだ改善するべきことがあると考えています。それを実現するためには、プロバスケのチームのスタッフとしての経験、育成の現場のスタッフとしての経験を持った人がビジネス面のこともしっかり学んでその3点の能力や力を持った人がクラブの経営に関わるというはすごく理にかなっていると思うからです。中でも特に育成というものは、スポーツと密接に関わる教育の性質を持っていますので、そういうところにも特に想いを持つ人間が、クラブの経営に関わって、より子どもを大切にするというスポーツ文化の発展に貢献するということをやってみたいです。

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