B.LEAGUE2018-19シーズンを通じて実施してきた、ユーザーが対象ショットの中からナンバーワンタフショット『MONTHLY BEST of TOUGH SHOT』を決めるバスケットボールキングとカシオ計算機株式会社の共同企画。最終回(B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2018-19とB1 残留プレーオフ 2018-19が対象)は須田侑太郎(当時琉球ゴールデンキングス/現アルバルク東京)が受賞した。
そこで今回、須田に受賞記念品のG-SHOCK『GA-100BL-1AJF』を贈呈し、ビッグショットについて話してもらった。また、青野和人ヘッドコーチ(越谷アルファーズ)が、どのようにしてこの一発が生まれたのか、相手やチームメートとどのような駆け引きがあったのかなど、指揮官ならではの視点で解説してくれた。
――まずは今回のシュートを振り返ってください。
須田 これまでもあのようなシチュエーションでシュートを打つことが多く、雰囲気や流れなどからして入る感じがしたシュートでした。結果的にあのシュートが入って、チームに流れを引き寄せることができたと思います。僕のシュートだけにフォーカスされがちですが、田代(直希)選手が横にいたり、橋本(竜馬)選手が激しいディフェンスをしたり、いろいろな要素が組み合わさって生まれました。あの1本は本当に価値のあるシュートだったと思います。
――シュートが決まった時、会場は大盛り上がりでした。須田選手にとって、琉球のファンはどのような存在でしたか?
須田 間違いなくキングスのアドバンテージになっていて、ホームじゃなかったらあのような試合はできなかったと思います。バスケットは5対5ですけど、6対5で戦っているような心強い味方でした。また、バスケット好きという思いが伝わりましたし、応援しよう、試合に勝とうというファンの気持ちも感じていました。Bリーグの中でもいい意味で独特なファンだったかなと思います。
――2018-19シーズンの3ポイントシュート成功率は42.5パーセントとキャリアハイの数字でした。
須田 あまり数字にはこだわっていませんが、(琉球での)1年目を終えた時に、難しいシチュエーションでシュートを打っていたことが反省の一つとしてありました。シュートセレクションをよりシンプルにして、余裕を持って、思いきり打つことを意識した結果として数字が伸びたと思います。
――重要なシュートを打つ時はどのような気持ちですか?
須田 一瞬の出来事なので、あまり考えていないです。何か考えていたら入っていないと思いますし、何も考えない裏にはそれなりの練習や努力があると思っています。
――G-SHOCKについての印象も聞かせてください。
須田 ゴツゴツしているわりに軽いし、男らしいデザインが魅力だと思います。日頃からG-SHOCKを愛用していて、Bリーグ初年度の優勝記念品と、琉球時代に提供してもらったものを持っています。今回いただいたG-SHOCKの型は初めてですし、この色も初めてです。
――今回は約51パーセントが須田選手への投票でした。
須田 あのシュートは、キングス全員で入れたシュートだと思っています。僕だけの力ではなく、いろいろな人の力添えがあったからです。選手やスタッフ、ファンなど全員の気持ちが乗り移ったシュートだと思いますし、それが1位になって本当にうれしいです。
青野和人ヘッドコーチはこう見る!
第4クォーター残り3分、アイラ・ブラウン選手の3ポイントが外れ、それを拾った馬場雄大選手のリバウンドからボール運びの場面。橋本竜馬選手が安藤誓哉選手に持たせないようにプレッシャーを掛け、前にいた田中大貴選手にボールが渡る。そこに須田選手が激しいプレッシャーを仕掛け、馬場選手へのリターンパスを橋本選手がスティール。橋本選手がなんとかボールを保持し、後ろに走りこんで来た須田選手へパスが通る。躊躇なく放った3ポイントがネットを揺らした。ベンチは総立ちで、会場が割れんばかりの大歓声に包まれる中、A東京が堪らずタイムアウト。讃える佐々宜央ヘッドコーチは橋本選手と須田選手とハグを交わし、チームの目の色が変わった瞬間だった。会場も勢いに身を任せブースター主導のウェーブが起こり、琉球の真の底力を見た。その後一進一退のまま琉球が逃げきり、勝利をものにした。
このゲームは出だしからコートの場所に関係なく、すべてのポジションで激しいディフェンスが繰り広げられた。お互いにターンオーバーが少なくシュートで終わっているものの、ほぼすべてのシュートにディフェンスの手が上がっていて、各クォーター20点に届かない激しい試合となった。琉球も攻めに苦しみ第4クォーター序盤にはA東京に8点までリードを広げられ、オフェンスも遠くから逃げるようなシュートやタフショットが続いた。第4クォーター中盤には体力も限界に近い中、ディフェンスの温度が上がる。ポイントガードが起点となることの多い相手オフェンスに対して、橋本選手が気持ちのこもったディフェンスをやり続けた結果、この1つのビッグプレーが出た。チャンピオンシップは1つのプレーで流れが変わるという瞬間を見ることができた。
須田選手は限られたプレータイム(平均18分)で平均4.4得点とスコアラーではない。しかし、3ポイント成功率は42.5パーセントと高確率で決め、精度高くプレーできるのは、いつコートに送りこまれてもいい状態に日頃から自分自身を高めているからだ。前チームの栃木ブレックス時代から培われた努力とその身体能力を存分に活かし、相手エースを任されるディフェンス力は数字以上の貢献度である。遠藤祐亮選手のディフェンスの背中を見て、古川孝敏選手とともにシュートセレクションを学び、少ないアテンプトを高確率で決めることができる。本来ベテランに期待される活躍を、若手のうちに役割を整理してコートに立つことができる貴重な存在だ。
琉球同様に各ポジションの役割が徹底的に細分化されたA東京への加入は、スター集団の中で最も仕事をこなすことができる選手の一人となり、キャリアの中でも最大限の期待を受けることとなる。
インタビュー=酒井伸
写真=Bリーグ
取材協力=アルバルク東京