2019.06.03
ユーザーが対象ショットの中からナンバーワンタフショット『MONTHLY BEST of TOUGH SHOT』を決めるバスケットボールキングとカシオ計算機株式会社の共同企画。2018-19レギュラーシーズン最後(第32節~第36節)は富樫勇樹(千葉ジェッツ)が最多票を獲得した。
そこで今回、富樫に受賞記念品のG-SHOCK『DW-6900SK-1JF』を贈呈し、ビッグショットについて話してもらった。また、青野和人ヘッドコーチ(越谷アルファーズ)が、どのようにしてこの一発が生まれたのか、相手やチームメートとどのような駆け引きがあったのかなど、指揮官ならではの視点で解説してくれた。
――4月の『MONTHLY BEST of TOUGH SHOT』に選出された秋田ノーザンハピネッツ戦での3ポイントシュートを振り返ってください。
富樫 前半はチームの出来が悪く、後半に持ち返した試合でした。あの場面はスイッチしてついてきた野本(建吾)選手とミスマッチになったので、3ポイントを打つ気でいました。ただ、誰であろうと同じムーブで打っていたと思います。
自分はショットクロックが少なくなっている時など、シュートを打たなきゃいけない場面が好きで。外していいわけではありませんが、打つしかないじゃないですか。そういう状況はよりプレッシャーがなくなるというか。頭の中がシュートだけになり周りを見えなくなってしまうので、映像を見直すと「横にパスを出せば開いいてたのに」と思うこともあります。ただ、それだけ集中しているからこそ、シュートを決めきれている部分も大きいのかなと。
――Bリーグ初年度は292本だった3ポイントシュート数が、今シーズンは374本と大幅に増えています。
富樫 最近のNBAでもそうですが、3ポイントの重要性、効率性を感じていて。2点と3点では大きな違いがあるので、空いたら打つという意識を持っています。
――今回のようなクラッチシュートを打つことは好きですか?
富樫 シュートを外して何か言われることに対する恐怖心はなく、任せていただけるのはすごくうれしいです。自分が打つ、打たないは状況にもよると思います。相手が2人来たらパスを出すこともありますし。
――自分のラストショットが外れて負けてもしょうがないという思いですか?
富樫 シュートを託されるのはチームに信頼してもらえている証でもありますし、自分の中でベストシュートだと思って打っていますので。そのような場面でも常に自信を持っています。
ドワイト・コールビー選手のファウルアウトによって野本建吾選手とギャビン・エドワーズ選手がミスマッチになっているところを、富樫選手は冷静にアイソレーションを作りだす。パスを入れるが高い位置に押しだされ、エドワーズ選手が中に押しこめずパスを富樫選手に戻してボールスクリーンとなった。
ここで秋田はスイッチディフェンスで野本選手がスイッチアップして富樫選手との1on1。富樫選手は左に浮くようなステップを見せながら素早く右にチェンジをして3ポイントを放った。サイズのある野本選手が手を伸ばすが、クイックモーションでブロックできずボールはゴールに吸いこまれた。
ここでは一見強気なプレーにだけ見えるが、富樫選手の非常に冷静な判断があった。サイズのミスマッチを利用して足の力で押しだしていた野本選手がスイッチしたことで、今度はスピードのミスマッチとなり、足がついていかないところを突く。成田正弘選手がエドワーズ選手につくことでさらにミスマッチになっているが、他の選手の寄ってきてショットクロックも頭に入っている素晴らしい判断となった。
激しいディフェンスに定評のある両チームは40分とおしてプレッシャーの掛け合いで、球際のプレッシャーはレフリーも線引きが苦しいものであった。秋田はボールスクリーンから始まるプレーが多く、千葉のディフェンスも上がっているために手薄になるインサイドに野本選手のドライブや、ボールスクリーン後にポップしてもらい計44得点を叩きだしたジャスティン・キーナン選手の強気な3ポイントで終始10点以上リードする展開となった。
千葉のオフェンスが良かっただけに、それを上回る秋田のオフェンスで会場のボルテージは上がりっぱなし。千葉は第3クォーター残り50秒の間に相手外国籍選手が休んだタイミングで6点に詰め、コールビー選手のファウルアウト後に冷静にポストミスマッチをアタックし続けた冷静なバスケットにムダがなく、素晴らしいゲーム運びだった。この冷静なポジションが少なければ勢いに飲まれ、富樫選手のタフショットすら生まれなかったかもしれない。
冷静かつ積極的な司令塔の1on1は、レギュラーシーズンMVPに相応しい最高のパフォーマンスであった。
インタビュー=酒井伸
解説=青野和人
写真=兼子愼一郎、Bリーグ
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